12月に入ったあるジンの曜日、瑠璃はレディパールにデートに誘われた。
レディパール「たまには私とつきあわないか?」
2月のバレンタインデーからレディパールの瑠璃に対するまなざしは変わった。あくまでも珠魅としての騎士ではなく、愛しい男性へ向けるまなざしへと変わり、瑠璃はジンの曜日になるたびにどことなく落ち着かないでいた。
瑠璃(レディパール…彼女も『女』として生きようとし始めたのだろうか…)
その相手が自分だと思うと、瑠璃は顔が火照るのを隠せなかった。しかし、周りの珠魅達は気づいていない。
「瑠璃君はいつも真珠姫とラヴラブね!」
などと言って去っていく。確かに真珠姫との関係は以前より増して深くなったが、しかしレディパールとは…
そして今、瑠璃とレディパールは魔法都市ジオのフルーツパーラーにいる。それぞれ注文したものを食べながら、雑談を続ける。
しかし、瑠璃の方はひどく緊張していた。しかしそんな彼の様子にレディパールは気づかない。
レディパール「たまにはこういうのも悪くないものだな」
そう言って、注文したフルーツパフェを口にする。瑠璃はガチガチに緊張していて、ほとんどパフェに口をつけていない。
レディパール「瑠璃」
ふと、レディパールは瑠璃に話しかけた。瑠璃はびくっとする。
瑠璃「な、何だ?」
レディパール「今度のクリスマス・イヴはジンの曜日だな」
瑠璃「あっ!」
瑠璃は完全に失念していた。
レディパール「瑠璃、真珠姫ではなく、私とクリスマスを過ごすのは嫌か?」
その後、しどろもどろになった瑠璃はレディパールの誘いを受けたのだった。
クリスマス・イヴの当日、レディパールは瑠璃を港町ポルポタに誘った。
レディパール「あそこにはショッピングマリーナがある。2人で見てまわらないか?」
瑠璃「あ、ああ」
レディパールは主に守護魔法のかかった装飾品を見ていた。その隣で瑠璃は緊張のあまり硬直したままである。
レディパール「瑠璃」
瑠璃「なっ…何だ?」
レディパール「このシルバーリング、なかなかいいと思わないか?」
見ると、センスの良い装飾がなされた指輪がある。
瑠璃「あ、ああ、いいな」
瑠璃がそう答えるとレディパールは店員に話しかけた。
レディパール「この指輪を2つ買いたいのだが。1つは私、もう1つは彼の指のサイズに合ったものをくれ」
瑠璃「レ、レディパール!?」
レディパール「安心しろ。真珠姫の時も片時も離さず身につけてやるから」
瑠璃「あ!金は俺が!」
レディパール「いや、これは私が言いだしたことだ。私が払う」
長いこと珠魅の一族を率いていた為、レディパールの雰囲気には有無を言わさぬものがある。それに瑠璃はすごすごと引き下がってしまった。
レディパール「さっそくはめよう。さあ、瑠璃、指を出して」
レディパールは自分の指に先程買った指輪をはめると、瑠璃の手を取り、指輪をはめた。
左の薬指に。
瑠璃「レ、レディパール!」
レディパール「瑠璃、これは私達の『絆』を象徴するものだ。私と真珠姫、そしておまえのな」
瑠璃(……………お、俺から指輪をはめたかった…のに…)
レディパール「さて、そろそろ時間だ。実はシーサイドホテルのレストランに予約を入れているのだ。早く行こう」
瑠璃(お…俺が…エスコート…)
男女間のデートとしては完全に立場が逆である。しかしレディパールには一切逆らえないままでいる瑠璃であった。
レディパールはシーサイドホテルの水上レストラン「海の幸」に来ると受付へ向かう。
受付「レディパール様ですね?ご予約は承っております。どうぞこちらへ」
そして、波の音と美しい夜景の元、2人は食事を共にしたのだった。
食後、2人は浜辺を歩いた。周りはクリスマス・イヴを過ごすカップルでいっぱいである。レディパールはなんとか人気のないところを見つけ、瑠璃をつれていった。
レディパール「瑠璃、今日は本当に楽しかったぞ。おまえとクリスマスを過ごすことができてな」
瑠璃「レディパール…いや…しかし…俺はまだあんたにクリスマスプレゼントをやっていない」
レディパール「そうだな。それではここでもらおうか」
瑠璃「あ…これ…ペンダント…き、気に入ってくれるといいんだが…」
レディパール「守護の魔法がかかったペンダントだな。これはいい」
瑠璃「あ…気に入ってくれて…あ、ありが…とう…」
レディパール「瑠璃」
瑠璃「なっ、何だ?」
レディパール「もう1つプレゼントが欲しいのだが」
瑠璃「何!?そうなのか?なら今すぐにでもショッピングマリーナへ行こう!そして今度は俺があんたの好きなもの何でも買ってやる!」
レディパール「そうではないのだよ、私の騎士瑠璃よ」
『私の騎士』と呼ばれ、瑠璃は全身に電撃が走ったような感じがした。
レディパール「瑠璃……………私のファーストキスの相手になってはくれぬか…?」
瑠璃「え…?」
レディパール「嫌か?やはり真珠姫の時でないと駄目か…?」
瑠璃「いや…」
瑠璃は真っ赤になった。そして――
2人の唇は、静かに重なった。
あるクリスマス・イヴの夜のことである。
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