2005年9月18日、愛知県犬山市にある国の史跡「東之宮古墳」の1次調査現地説明会に
出かけた。午前10時からと午後1時半からの2回開かれ、午後の部に出席した。この日は朝から晴れ上がり、
雲一つない快晴に恵まれた。成田山の駐車場からツクツクホウシが鳴く山道を汗を拭きながら15分ほど登る。
岐阜県の象鼻山ほどではないが、結構きつい。説明会には7、80人が集まった。
東之宮古墳は、3世紀終りの東海地方でも最古級の前方後方墳という。前方部を西に向けて築かれ、全長約
78メートル。後方部の幅約47メートル、前方部の最大幅約43メートルである。標高143メートルの白山平
山頂に立地する。西方眼下に木曽川、犬山城、岐阜県各務原市鵜沼方面、南方眼下には濃尾平野が見渡せる。
昭和48年3月に後方部の墳頂で盗掘があったため、同年8月から9月にかけて状況を確認する発掘調査が
行われた。この結果、竪穴式石槨が確認され、内部から11面の銅鏡をはじめとする副葬品が多数見つかった。
銅鏡のうち1面(人物禽獣紋鏡)は、木棺内部の被葬者の上部に置かれていたという。発掘調査の成果を受け、
昭和50年に国の史跡に指定された。昭和53年には、出土品の全部が国の重要文化財に指定された。
今回の1次調査は、犬山市教委が将来的な整備を目的に平成17、18年度にかけて始めた範囲
確認調査の平成17年度分。@墳丘規模の確定A北東・南西側にある平坦面の性格の解明B葺き石の残存状況の
確認―が目的。7月末から8月初めにかけてのレーザー測量を基に、主軸線上の前方部1個所、後方部3個
所、くびれ部1個所の計5個所に調査区を設定して、8月29日から9月末までの予定で発掘している。
これまでの調査によると、平坦面は岩盤を削っただけでなく、くぼんだ個所に土を入れて平らな面を造ってい
る。さらに、主軸部のトレンチ調査によって、標高134メートル付近で厚さ約20−30センチの黄褐色の
粘土層が検出されたことから、墳丘は地山を削りだしたものではなく、全て盛り土で築造された可能性がでて
きた、という。なお、くびれ部からは葺き石が検出されないない墓道の一部が見つかった。
また、葺き石は、かなり良好な状態で残存。白山平山で採取された赤褐色のチャートが最も多いが、丸い川原
石、板状の砂岩が含まれている。川原石や砂岩は山麓の木曽川原などから運んできたと考えられる。墳丘は、
葺き石の検出状況から段築はなく、斜面は急勾配であることも分かった、としている。
市教委は「築造過程で、岩山を削って平坦な面を造り、その上に平地で造るのと同じように盛り土で墳丘を
築き、葺き石に使う石材を山麓から運ぶという大規模な土木工事が行われた可能性が浮かび上がってきた。
木曽川の根元を押さえる大王の墓であろう」と説明した。
【写真は前方部のトレンチから良好な状態で検出された葺き石には丸い大きな川原石が混じる
=愛知県犬山市の東之宮古墳で】