夏の花木・草花

「みたけの森」のササユリ自生地

 2003年6月5日、岐阜県可児郡御嵩町にある「みたけの森」のササユリ自生地を訪れた。 木曜日だったが、午前11時近くに着くと、周辺は車が列を作っていた。管理する人の誘導で、 入り口付近の路上に止めた。車を降りると、園内には大勢の人がいる。前日の新聞に「見ごろ」と 掲載されたためのようだ。

 新聞によると、自生地には約1万株のササユリがあるという。散策路を歩くと、いたるところにササユリが 咲いている。すごい広さである。これだけの規模の自生地は、ほかにないように感じる。数えてはいないが、 1万株あるといわれれば、確かにそれぐらいあると実感できる。

 池のそば、樹木のまばらな山の斜面に咲く。ここでも、色は白から全体が薄いピンク色をするものまであるが、 花弁の外側がうっすらピンク色を帯びるのが多い。花は一つだけ付けるのが、ほとんど。二つつける のも結構あったが、三つ付けるのは一株しか見つけられなかった。

 『四季花ごよみ』(講談社)によると、ササユリは最初の年には一つ、二年目には二つ、三年目からは 毎年、三つの花を咲かせる。ということは、あまり古い株はないのだろうか。だが、花が咲くまでに8年 かかるというから、少なくとも8年以上前から自生しているのであろう。

 「みたけの森」は、人里に近いところだから、昔、ササユリは、そこらじゅうに咲いていたのだろう。 それが絶滅に瀕しているといわれるのは、環境破壊もあるが、美味といわれる鱗茎が人に食べられる “食害”と、観賞用としての乱掘が大きな原因と考えられる。

 もう一つ考えたことがある。ササユリが生えている所には、ササが生えている。葉がササの葉に似て いるからササユリと呼ばれると言わているが、本当に、そうなのか。ササの生えている所に生える からササユリというのではないだろうか。新説かもしれないが、案外正しいかも。

 ササユリは万葉時代からある花といわれる。その根拠は、万葉集十巻にある「春去れば 先づ三枝 (さきくさ)の 幸(さき)くあらば 後にも相はむ な恋ひそ吾妹(わぎも)」の三枝が、ササユリである、 という説があるからだ。

 奈良市の率川(いさかわ)神社に伝わる三枝祭(さいぐさまつり)は、毎年6月17日に催されるが、 酒樽に三枝を飾って供えることから名付けられた、と奈良時代初期の書物にあり、今日、酒樽を飾るのは ササユリという。(2003年6月5日作成)
■ピンクのササユリ■白いササユリ


©2002−2003 Yuusuke Niinomi

■ササユリ
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