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天台宗の古刹・密蔵院

 春日井市熊野町にある。一見、何の変哲もない寺だが、歴史資産は豊富であ る。禅宗様式を残す多宝塔と本尊の薬師如来立像が国の重要文化財に指定されている。このほか、末寺だった熱田如法院から伝わった十一面観音立像(県文化財)、十六羅漢像の掛け軸など、見るべきものは多い。天台宗の中本寺格としての時期が長く、多くの古文書が密蔵院文書として伝わる。

 古文書などの収蔵品は、毎年10月の第一日曜日に開かれる寺宝展で公開される。寺宝展に合わせて薬師如来立像、十一面観音立像も一般拝観に供せられる。また、収蔵品の一部は常時、テーマを決めて展示室に飾られ、1、2ヵ月ごとに展示替えされる。名古屋城にあったといわれる時計や、庫裏の太いヤマツツジの梁材も見もの。庫裏を背景にした3月下旬に咲くエドヒガンも風情がある。

 嘉暦3(1328)年、慈妙上人の創建と伝えられ、往時は、東の比叡山と呼ばれ、塔頭36坊を数え、 修行僧は3000人に上ったという。戦国時代に衰微するが、江戸時代、30代・珍祐権僧正が名古屋東照宮の別当となり、名古屋東照宮の神宮寺住職を兼帯。以後、尾張藩の庇護の下、代々住職は勢力を振るう。尾張名所図会にも描かれ、馬の頭(塔)篠木合宿の集合地でもあった。

 現在は、濃尾地震で本堂が倒壊したため、庫裏に玄関が設けられ、書院が本堂に転用されている。日本の臨済宗開祖・栄西が編み出した葉上流の灌頂寺としても知られ、西教寺(大津市)を開いた真盛上人も3年間にわたって修行している。瀬戸内寂聴の名付け親・今東光(春聴)も54代住職を務めた。庫裏に東光筆の額が掲げられている。現住職は59代・田村圓心。

▼JR中央線春日井駅、神領駅から歩いて約25分。春日井駅からタクシーで約10分。


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