2005年9月10日、滋賀県野洲市立銅鐸博物館で開かれる講演会を聞きに行く途中、
同県竜王町にある苗村神社を訪れた。鎌倉時代に再建されたという西宮の本殿が国宝に指定されている。ちょうど
神事があった後で、氏子ら10人ほどが集まっていた。目印となる大きな楼門に正一位とある。西宮の境内は、
よく手入れされている。
神官の奥さんに話を聞いた。神主は小野篁の系統という。4月20日に例祭があり、馬が10頭出る。5月
5日には流鏑馬があり、馬7頭がそろう、そうだ。33年ごとに式年大祭があり、前回は昭和57年10月
10日から3日間にわたって行われた。そのときに奉納された大ちょうちんが休憩所にかかる。今年から数えると、
次の大祭は10年後になる。
楼門は、国の重文で、明治37年の指定。町教委の説明板によると、建立年代は
明らかでないが、蟇股などの技法から、応永(1394−1427)ごろの造営と考えられる。三間社一戸楼門
入母屋造の茅葺。軒尾垂木の先端を斜めに造り、強い反りをつけるなど禅宗様の手法が取り入れられている。
この地方では和様を貴重とした最大規模の遺構、という。
「元は長寸神社、つまり長村(ながむら)神社だったのが、苗村(なむら)神社となった」とは奥さんの話。
東宮入り口に「式内長寸神社」の石碑が立つ。国宝の西本殿は、町教委の説明板によると、棟札から徳治3
(1308)年に再建されたようだ。三間社流造、屋根は桧皮葺。左右相称の透かし彫りを施した正面2個の
蟇股が美しい。明治35年の指定。
道路を隔ててある東宮は、杉などの木立に囲まれ、古色蒼然としたた佇まいを見せる。東本殿も室町時代の
建立といわれ、国の重文に指定されている。
2006年4月20日、例祭に訪れ、地元の人に聞くと、東宮野長寸神社は郷社で、西宮は綾戸の村社だった
のが、統合され苗村神社になった、とのこと。元々は東宮の方が格が高かったようだ。
【写真は道路を走っていると忽然と現れる大きな苗村神社の楼門=滋賀県竜王町で】