植物雑感                     猷々自的

御衣黄と鬱金

 もう15年ほど前になろうか。テレビのローカルニュースで、珍しい“緑のサクラ”が咲いたと 放映していた。「植木屋で買ってきたのが、家にもある」と思っていたら、そのニュースは1回で消えた。 それほど珍しくないことが、放映直後に分かったのだろう。

 里桜(サトザクラ)は、私は園芸種と理解しているが、その中に一般に“緑のサクラ”といわれる 品種が二つあることまでは、すぐに分かった。御衣黄(ギョイコウ)と鬱金(ウコン)である。わが家のは、 いったい、どっちなんだろう。

 気になったが、分からず放置。最近になって、本格的に調べ始めたが、この2種類のサクラの区別が、 私にはなかなかできない。サクラ関係の本を読んでも、よく分からなかったが、最近になって、漠然だけど 分かりかけてきた。

 なぜ分からなかったかというと、図鑑の説明によると、二つがよく似ているためである。ウコン色というと、 ふつう思い浮かべるのは黄色である。だから、鬱金も花が黄色のサクラだと思った。『花と木の文化史』 (中尾佐助)にも、ネパールで新種の黄色い花のサクラを発見したことに関連して、「日本のサトザクラの中には 黄花の品種がいくつかある」と書いてある。

 ところが、関係の本を見ると、鬱金の花の色が黄色と書いてあるのは『桜(サクラ)入門』(日本さくらの会編) の1冊しか見つからない。後のは淡黄緑色、とか淡緑黄色とかと書いてある。これでは、ギョイコウも同じである。 迷路にはまり込んだ。

 開花から散るまでを観察した。岐阜県七宗町の高山線「上麻生駅」の御衣黄、名古屋市守山区「東谷山フルーツ パーク」のウコンも見に行った。この結果、わが家のサクラは御衣香と見て間違いないという結論に達した。

 図鑑などと、私の観察結果によると、御衣黄の方がウコンよりやや緑色が強い。花はウコンのほうが御衣黄より 一回り大きい。がく筒の色が違う。御衣黄のほうが開花時期がやや早く岐阜・愛知で4月中旬、ウコンは下旬。 散るときの花の色は、御衣黄はほとんどピンクで、花柄つきで落ちる。(2003年4月24日作成)


©2002−2003 Yuusuke Niinomi

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