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Artist

ADEWALE AYUBA

Title

FUJI TIME


ayuba fuji time
Japanese Title フジ・タイム
Date 1996
Label AGOGO AG9501(US) / オルター・ポップ AFPCD-6241(JP)
CD Release 1996
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 90年代はじめ、東京の賃貸マンションに独り暮らしをしていたわたしは、住宅事情から、所有していたすべてのアナログ・レコードとターンテーブルを思いきって実家へ送ってしまった。もはやCDが当たり前の時代になったからこその判断だった。ところが、ひとりフジ・ミュージックのみは依然としてLPでの発売が普通だったため、ずいぶんと歯がゆい思いをしたものである。

 そんなとき、大手レコード店のCDコーナーで見かけ購入したのが、アデレ・アユバの"MR JOHNSON PLAYS FOR ME"(TIMBUKTU FLTRCD504(UK))だった。アユバなんて名まえは聞いたこともなかったし、本音をいえばワシウ・アインデ・バリスター(現キング・ワシウ・アインデ・マーシャル1)が欲しかったのだが、「このさいフジならなんでもいいや」って気持ちだった。で、感想はというと、別にどうということもないただのフジだった。フジは、迫力あるパーカッションに負けないだけの歌唱力が要求されるのだけれども、アユバのヴォーカルはいささか心細いのである。
 これでやめておけばいいのに、しばらくして出た"BUBBLE"(TIMBUKTU FLTRCD518(UK))も買ってしまった。感想は前作のときとまったく同じ。悪いというわけではないけれども、展開が単調でとても最後まで聴きとおすことはできないシロモノだ。

 のちに知ったことだが、これら2枚は、ソニー・ナイジェリアからリリースされた91年、92年の大ヒット・アルバムをCD化したものだった。アユバはこのとき弱冠25、6歳。シキル・アインデ・バリスターが北島三郎、ワシウ・アインデ・マーシャル1が山本穣二とすれば、アユバはさしずめ氷川きよしといったところか。格がちがうが、時代の勢いにのっているって感じはする。

 96年に、本盤がオルター・ポップの配給で国内リリースされたのを音楽雑誌で知って、あのアユバとは気づかず買った。とても日本で配給するほどのアーティストだとは思っていなかったからだ。でも、実際はさきの2枚とは比較にならないほど、タイトに洗練されたアルバムに仕上がっていた。
 本盤は、AGOGOというアメリカのレーベルから発売されたアメリカ録音盤。なんでも、アユバは、93年に全米ツアーをおこない、ついには活動拠点をニューヨークへ移してしまったらしい。だから、本盤はニューヨーク移住後の録音なのだろう。

 レゴス時代は、リード・ヴォーカルとサカラ(フレーム・ドラム)を受け持つアユバをはじめとする、コーラス隊とパーカッション隊の総勢20名ほどの大所帯だったが、ここではレゴス時代の約半分になっている。だが、シナ・サンデーのドラムスを中心とするパーカッションの迫力は変わらない。むしろ、ぜい肉をそぎ落としたぶんだけ、音に締まりが出てきてスピード感が増した印象を受ける。アユバのヴォーカルにもツヤと伸びやかさが増してきて、格段に表現力が高まったことがみてとれる。
 さらに、レゲエDJのレッド・フォックスをゲストにむかえ、フジとラガマフィンを融合させるなどの意欲的なとりくみをみせている。だが、先輩のワシウ・アインデ・マーシャル1がギター、キーボードやホーン・セクションなどを導入して、フジのジャズ化、ファンク化を大胆に推し進めているのに比べれば、ヴォーカルとパーカッションからなるダンス・ミュージックとしてのフジへのこだわりが感じられる。いかにアメリカナイズされようとも、根底に流れているのはヨルバのコアなリズムである。


(5.03.02)



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by Tatsushi Tsukahara

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