World > Africa > Guinea

Artist

CAMAYENNE SOFA

Title

VOLUME1: LA PERCEE


camayenne 1
Japanese Title

国内未発売

Date the mid 1970s?
Label SYLLART 38215-2(FR)
CD Release 2000
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 60年代にセク・トゥーレ大統領は自国の文化を保護育成する目的で、国主催の音楽コンテストで優秀な成績を収めたバンドを公務員待遇で保護してきた。ギニア政府が運営するシリフォン・レーベルもそうした流れのなかで設立された。ベンベヤ・ジャズ・ナショナルを筆頭にその成果は確実に花開いたが、70年代前半になると、政治や経済の悪化と歩調を合わせるかのように、ギニアのポップスは完全に煮詰まり停滞してしまった。
 音楽的にはギニアの影響下にあった隣国マリでは、レイル・バンドにいたサリフ・ケイタやモリ・カンテら新しい世代がマンディングの伝統とロック、R&B、ソウルなどの外来音楽の要素を融合させた独自の“マンデ・ポップ”をつくりあげた。また、ポピュラー音楽先進国コンゴ(旧ザイール)では、パパ・ウェンバ、ニョカ・ロンゴ、エヴォロコ・ジョッケーらが結成したザイコ・ランガ・ランガを中心に、ロック・バンド・スタイルをとった第3世代が台頭していた。そうした潮流を受けてギニアン・ポップの新世代として登場したカマイェンヌ・ソファが、ギニアの若者たちに熱狂的に受け入れられたであろうことは想像にかたくない。

 かれらはまず、ギニアン・ポップにつきものであったサックスやトランペットなどのホーン・セクションを当初から用いなかった。あわせて西洋の打楽器であるとして敬遠されがちであったドラム・キットを採用。これによってベンベヤ・ジャズにはまだあったラテン色が完全に払拭され、ギニアン・ロックというべきギター中心の激しくソリッドなサウンドが完成した。

 先輩のベンベヤ・ジャズが完成させたマリンケの伝統と現代性を融合させたサウンドを継承しながらも、俗にリンガラ音楽あるいはスークースといわれるコンゴのルンバ・ロックからの影響がつよくみられる。
 とくに、シャープでメロウなトーンを用いた複数のギターが延々とリフを重ねていくスタイルにはリンガラ音楽の影響が顕著にあらわれている。しかし、そのいっぽうでファズを多用したスペーシーなリード・ギターは、ベンベヤ・ジャズで“ダイアモンド・フィンガー”とうたわれたセク・ジャバテやセネガルのンバラ・ポップの影響が感じられる。曲によってリンガラ的であったり、ギニア的であったり、その複合であったりするのだが、いずれにおいてもギターの存在感は圧倒的。とくに2曲目'BOMARO'でのサイケにギンギン突っ走るリード・ギターがすばらしい。

 リンガラを聴いていて、いつももの足りなく感じるのは、華麗なギターの影に隠れてパーカッションが奏でるリズムが比較的シンプルで地味なことである。その点、カマイェンヌのドラムスとコンガは変幻自在にして迫力満点。ひたすらリズム・キープに徹するのではなく、すばらしくキレがありメリハリの効いたビートを叩き出してギターと対等に渡り合っている。マリのバンバラ系のバンド、シュペール・ビトゥン・ドゥ・セグーの力強く生々しいビートを想像してしまった。

 ヴォーカリストは、ジャケットから推察するにコーラスも含めてすくなくとも4、5人はいたのではあるまいか。ヴォーカル・スタイルは、サリフ・ケイタのようなグリオ的な唱法が根底にあるが、コーラスの部分ではそれまでのギニアン・ポップに多くみられたぶっきらぼうでザワザワした印象は薄れ、ソフトになってまとまりが感じられるようになった。ここにもリンガラの影響があらわれている。ただし、リンガラ独特のシルクのようなハーモニーを期待すると当てが外れる。

 本盤は、76年にシリフォンからリリースされたオリジナル・アルバム"LE PERCEE"(SLP 52)に、ほぼ同時期と思われる演奏を追加した全11曲構成。ギター・サウンドを中心としながら、一部でハーモニカを使ってみたり、ハモンド・オルガンを加えてみたりと新しい試みもおこなっている。これによってブルースっぽいレイジーなムードを帯びさせることに成功した。
 このようにカマイェンヌの音楽には、従来のギニアン・ポップの流れに加えて、ロック、リンガラ、マンデ・ポップなど、多種多様な音楽要素が玉石混淆しているため、曲によってかなり表情がことなる。この混沌、この雑種性こそがカマイェンヌの最大の魅力なのだと思う。

 "LE PERCEE"に続くオリジナル・アルバム"ATTAQUE"(SLP 60)収録曲を中心に編集されたCD"VOLUME2: ATTAQUE…"(SYLLART 38219-2)においても、この混沌は健在だ。リンガラへの接近がいっそう顕著になった反面、ベンベヤ・ジャズの正統な後継者といえそうなドラム・キットが入っていないラテンぽい曲まで含まれている。まったくつかみどころがなく、聴けば聴くほどにこのバンドへの興味がますます湧いてくる。しかし残念ながら、わたしはカマイェンヌ・ソファにかんする情報をまったく持ち合わせていない。どなたか存知おりのかたがいらっしゃったら、ぜひともご教授ください。


(9.29.02)



back_ibdex

前の画面に戻る

by Tatsushi Tsukahara