World > Africa > Democratic Republic of the Congo

Artist

MPONGO LOVE / THU-ZAINA / ZAIKO LANGA LANGA

Title

COMPILATION MUSIQUE CONGOLO-ZAIROISE (1972/1973)


congolo72/73
Japanese Title

国内未発売

Date 1972 / 1973
Label SONODISC CD 36531(FR)
CD Release 1993
Rating ★★★★☆
Availability ◆◆


Review

 世に知られざる傑作とされるアルバムは多いが、本盤もそのなかの1枚といえよう。フランスのソノディスクから発売された本盤は、ムポンゴ・ロヴ、トゥー・ザイナ、ザイコ・ランガ・ランガというコンゴを代表するアーティストとグループによる72年と73年の録音(それぞれ約25分)からなるコンピレーション。タイトルが安直なうえ、ジャケットが安っぽいトロピカル・ミュージックのそれを想像させるので、警戒心が生まれてしまうのはやむをえないと思うが、クオリティはおそろしく高い。ちなみに写真は海に見えるがザイール川(コンゴ川)なのだろう。
 
 コンゴを代表する女性歌手ムポンゴ・ロヴとソン・アンサンブルMPONGO LOVE & SON ENSEMBLEの4曲は想像以上によかった。ピアノ、サックスも加わって、華やかでウキウキするような極上のリンガラ・ポップスに仕上がっている。ちょっと鼻にかかったようなキュートでおキャンなヴォイスは、どっか聴き覚えがあると思っていたら、雪村いづみにそっくりだ。80年代はパリ・リンガラ風になり魅力を失ってしまったが、このころは素朴ながらも生き生きと輝いていた。伴奏陣ではよく歌うサックスとバウンスするベースが印象に残る。90年没。
 
 トゥ・ザイナTHU-ZAINAは、ザイコ・ランガ・ランガ、ネグロ・シュクセらとともに、この時代に頭角をあらわしたヤング・ジェネレーションを代表するバンド。学生バンドの出身でザイコ誕生にひと役買ったことでも知られている。単独アルバムとしては"BA PATRON NA BA MBONGO(1970/1971) "(SONODISC CD 3657)と、"COUP DE CHAPEAU"(RETROAFRIC RETRO14CD)の2枚がリリースされている。
 第3世代の特徴とされるギター・バンド・スタイルをとっているとはいっても、カチッとして鋭角的で耳に心地よいギターといい、ミディアム・テンポ中心の曲構成といい、ザイコよりもフランコのO.K.ジャズに感覚が近い。ザイコ同様、前半のヴォーカル・パートと後半のダンス・パートの2部構成になっている曲もあるが、後半部で極端にテンポ・アップすることはない。ヴォーカルやコーラスもリリシズムがあふれ、この世代のバンドのなかではかなり好きなほうだ。本盤の5曲は、前のソノディスク盤にすべて収録。

 アフリカ音楽一般のファンとリンガラ音楽ファンとは重なっているようでいてビミョーにずれている。もちろんわたしは前者なのだが、わたしにはとるに足らないような音楽が“傑作”といわれているケースがあまりに多く、やはりかれらとは住んでいる世界がちがうんだと思う(これはフェラ・クティのファンについても感じることだけど‥‥)。
 その分かれ目にあるのがザイコ・ランガ・ランガではないか。わたしはザイコがもたらしたスピード感や荒々しさを評価するいっぽうで、多くのエピゴーネンを生んだスタイルの、あいも変わらぬワン・パターンにイヤ気さえさしているのだ。
 
 それをいうなら、旧世代のフランコだってワン・パターンじゃないかっていわれるかもしれない。だが、わたしがフランコに求めるのは保守の王道にふさわしい安定感であるのに対し、わたしがザイコに魅了されるのはその「型破り」にこそあるのであって、その意味では「型破り」という「型」にはまってしまった後年のザイコにはあまり興味が湧いてこない。
 そんなわけで、わたしがもっぱら聴くは、パパ・ウェンバ、エヴォロコ・ジョッケー、マヴエラ・ソモが在籍していた75年までである。ところがこの時期のザイコの音源はあまり復刻されていなくて、本盤収録の3曲はダンス“カヴァシャ”を大ヒットさせた前後の日の出の勢いにあったかれらの歌と演奏を記録した貴重な音源といえよう。
 
 ときにシャウトをまじえアニマシオン(掛け声)を連発するスタイル、マヌワク・アクのシンコペートするギター、スネアを連打するドラムスと、あのザイコ・スタイルが完成された間際の演奏がここにはある。「受けさえすればいい」といわんばかりに聴衆を煽りに煽るアマチュアくさい単純さが、いきおいにつながっていてかえって好感をいだいてしまうのだ。フランコはそうではないがザイコはつくづくロックだと実感した次第。全3曲。


(4.15.03)



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by Tatsushi Tsukahara