World > Africa > Guinea

Artist

ORCHESTRE DE LA PAILLOTE / KELETIGUI TRAORE

Title

VOLUME 1


paillote
Japanese Title

国内未発売

Date 1960
Label SYLLART 38216-2(FR)
CD Release 2000
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆


Review

 ベンベヤ・ジャズと並ぶギニア音楽の大御所的な存在といわれるケレチギ・トラオレだが、わたしは最近リリースされたオルケストル・デ・ラ・パヨート名義のこのCDを手に入れるまで聴いたことがなかった。
 1960年録音とあるから、ギニア独立時、初代大統領にセク・トゥーレが就任して2年後ということになる。セク・トゥーレは、旧宗主国フランスに頼らない完全独立の道を急進的に推し進めたことで知られ、その一環として自国の文化を育てるために音楽家保護政策を打ち出し、ベンベヤ・ジャズ・ナショナルをはじめ多くの国立バンドを輩出した。ちなみに、サリフ・ケイタがアンバサドゥール時代につくった名曲「マンジュ」は、セク・トゥーレを讃えた曲である。

 オルケストル・デ・ラ・パヨートは、首都コナクリにある国営のクラブ、パヨートにちなんで編成されたオール・スター・バンドなのだろうか。のちにケレチギが結成するタンブリーニは、このバンドが母体になったのかもしれない。サウンドの基本には、当時のアフリカのポピュラー音楽の大多数がそうであったように、キューバ音楽がある。しかし、同時期に活躍したコンゴのグラン・カレ率いるアフリカン・ジャズのサウンドと比べると、キューバ音楽のリズム・パターンであるシンキージョ(クラベスによる5つ打ち)は使わず、伝統的なハチロク(8分の6拍子)を取り入れるなど、アフロ色はかなり濃厚だ。

 これにはわけがある。セク・トゥーレは、ラテンなどの外来音楽をそのまま演奏するのを禁止し、ギニアらしい要素を加えることを義務づけたのだ。このような背景のもとで、ラテン音楽とギニアの伝統音楽が融合した独特の“ギニアン・ルンバ”が生まれた。
 エレキ・ギター、ベース、パーカッション(スネア・ドラム、コンガ、マラカス、グィロなど)、ホーン・セクションの楽器編成で、コラやバラフォンなどの伝統楽器の音色や旋律からヒントを得た流れるようなギターを中心に、チームワークのとれた密度の濃い演奏を披露。グリオ・スタイルのヴォーカルは、お世辞にもうまいとはいえないが、土臭い朴訥さがかえって味になっている。アップ・テンポの曲では、明るいなかにもズシリとくる独特のタメがあって聴き応え十分。

 しかし、個人的に好きなのは、スロー・テンポの'LA GUINEE MOUSSOLOU''N'DJIGUINIRA'。前者のイントロは、「別れても好きな人」にメロディがそっくり。ここでも例のタメが1音1音のなかにじっくりと醸造され、アフリカン・ラテン・ブルースとでもいうべき、むせ返らんばかりの濃厚なグルーヴを生んでいる。渋いけど、しっかりと中味が詰まった傑作です。
 ちなみに、サリフ・ケイタの傑作"SORO"のプロデュースをしたイブラヒマ・シラの初プロデュース作品だそう。


(5.6.02)



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by Tatsushi Tsukahara