World > Africa > Democratic Republic of the Congo | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
FRANCO ET LE TOUT PUISSANT O.K.JAZZ |
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Title | ||||||||||||||||
LE GRAND MAITRE FRANCO ET LE TOUT PUISSANT O.K.JAZZ |
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Review |
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86年に結成30周年を記念してリリースされたLP"SPECIAL 30 ANS PAR LE POETE SIMARO ET LE GRAND MAITRE FRANCO" の完全復刻。タイトルにあるとおり、拠点をヨーロッパに移していた貸元(親分)に代わって、キンシャサで留守を預かっていた代貸シマロの作品集。ジャケットは、船から下りて帰省したばかりの親分とそれを出迎えるシマロの図(のように見える)。背景は駿河湾(清水港)ではなく、たぶんザイール川です。 代貸 親分、お帰りなさい。 親分 おれの留守中、変わったところはなかったか。 代貸 はい、とくになにも‥‥。 じつはあったのだ。 本盤にさかのぼること2年、シマロは親分に内緒でキンシャサ組(当時、TPOKジャズはヨーロッパ組と2つあった)を使って自分名義のアルバムを発表していた。レコーディングは川向こうのブラザヴィルに誕生したばかりの、最新の録音機材を備えたスタジオIADでおこなわれた。このアルバムで、シマロはTPOKジャズのメンバーではない23歳の若手シンガー、カルリート 'Carlito' Lassa Ndombasi を起用。ビロードにたとえられる柔らかなセクシー・ヴォイスで、魔性の女マヤへの未練を切々と歌い上げた'MAYA' は、ザイールはもとより東アフリカでも大ヒット。 代貸に続けとばかりに、シマロの懐刀であるギタリスト、パパ・ノエルも自分名義のアルバムをIADでレコーディング。ここからシングル・カットされた'BON SAMARITAN' もスマッシュ・ヒットとなった。これは現在、英国のレーベル、スターンズからリリースされた"BEL AMI" に収録されている。 この2枚はフランコのレーベルからの発売でなかったことと、リリースの時期がフランコのシングル'TU VOIS? (MAMOU)' と重なってしまったことから、親分の不興をこうむったが、どこでどう折り合いをつけたのか最終的に不問に付されることになった。 想像するに、これらはその年のベスト・ソングの1位と2位を独占し、シマロはベスト・コンポーザー、カルリートは新人賞に選ばれたことから、強硬な態度に出るのは得策ではないとのフランコの判断があったのではないか。じっさい、その年に30周年を祝して大々的におこなわれたケニア・ツアーでTPOKジャズはマラージュをカルリートの代役に仕立ててちゃっかり'MAYA' を演奏しているのだ。 'MAYA' のヒットで味をしめたシマロは、翌年、カルリートとアンピル・バクバのペペ・カレをゲストにむかえて新作を発表。ブリュッセルで再録された'MAYA' セカンド・ヴァージョン(カルリートとカレのデュエット)を含むこのアルバムで、ペペ・カレとジョスキーがデュエットした'VERRE CASSE'「割れたグラス」もヒットした。 この2枚のLPをカップリングして復刻したのが、グラン・サムライから国内配給された『シマーロ&カルリート/魔性の女、マヤ』(GRAND SAMURAI PGS-12D)。原盤は、FLASH DIFFUSION BUSINESS というレーベルから92年に"PEPE KALLE / SIMARO / CARLITO" というそっけないタイトルでリリースされている(その後、NGOYARTO からジャケットを代えて再発)。 ゴージャスなTPOKジャズにくらべるとサウンドはタイトでハギレよく、それでいてシマロらしいたおやかさがあって、ことによると同時期のTPOKジャズをもしのぐ充実した演奏内容といえる。 いうまでもなくカルリートのヴォーカルがこれまたすばらしい。ゲスト参加のペペ・カレ、ジョスキー、シェケンのヴォーカルがかすんで聞こえるほど。 シマロの、これら一連のソロ・プロジェクトの延長線上にあるのが、本盤だと思う。このとき、カルリートはまだTPOKジャズのメンバーではなかったため(かれがメンバーに加わるのはフランコ最晩年の89年)、全4曲中、2曲で85年にTPOKジャズ入りしたばかりのマラージュがリード・ヴォーカルをとっている。ちょっと聴いたぐらいでは区別がつかないぐらい2人の声質はよく似ている。 なかでもフランコ作の'MARIO' 、ジョスキー作の'KITA-MATA-BLOQUE' と並んで、後期TPOKジャズの代表作となった'TESTAMENT YA BOWULE' では、マラージュが軽快でスピーディなビートにのせて、TPOKジャズにはめずらしくコーラスなく思う存分にソロを披露。そのつややかで伸びのある歌声でバックをグイグイと引っぱっていく、まさに“リード”ヴォーカルのお手本のような名唱を聴かせてくれる。 一転してミディアム・テンポで演奏される、つづく'VACCINATION' でもマラージュがフィーチャーされる。ただし、ここではあの鉄壁のコーラス・ラインによる印象的なリフレインがくり返しあらわれ、これに旋回的なギター・アンサンブルとグルーヴィなホーン・セクションがからんで、さわやかさの相乗効果を生んでいる。 'TALA MERCI BAPESAKA NA MBUA' では、若頭マディル・システムをフィーチャー。マラージュとはまったくタイプのことなるアーシーで迫力あるヴォーカルが印象的。マディルは顔もこわいが、声もホント「男」という感じ。しかし、追い討ちをかけるようなコーラスとの掛けあいといい、効果的なホーン・セクションの使い方といい、ファンキー度ではTPOKジャズでは屈指のチューンといえよう。曲の後半、セベン・パートでのランブリングするベースとからむギター・リフは心の底からかっこいいと感じた。 本盤ラストをかざる'AMINATA NA LANGI VISA' でリード・ヴォーカルをとるのは、たぶんジョスキー。ジョスキーのアカペラではじまり、曲の半分近くまでコーラスがつづく。ようやくジョスキーのリード・ヴォーカルがあらわれてからも、これに終始コーラスがついてまわる感じ。そのせいか、シマロの作品というより、ジョスキーの作風に近いように感じてしまう。曲後半のセベンでのノリのよさもこれまた最高。クライマックスに到達する前の“寸止め”のような終わり方が残念。 本盤は、わたしにとって、フランコが大好きになるきっかけを与えてくれた思い出のアルバムである。晩年のフランコ作品は歌詞に重きを置いていたため、わたしたちのようなリンガラ語を解さないリスナーにはすこしとっつきにくいところがあったが、本盤は歌詞の意味はわからずとも、またリンガラ音楽のなんたるかをふかく知らずとも、じゅうぶんに楽しめるごきげんなダンス・ミュージックに仕上がっている。入門者には、まず自信をもっておすすめしたいアルバムだ。 |
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(3.24.04) |
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