Squirt Boat

スクォートボーティングとは、川の水面だけでなく水中の流れを使い、川と一体となるコアなスポーツです。

ボートの種類・黎明期編

 スクォートボートは色々な種類があります。

 ジムさんがスクォートボートを一般の人が乗れるように製品としてデザインした最初のボートはプロジェットという名前のボートで、バルカンといったボートも市販されました。

 当時のプレイボートはプラスチック製でパーセプションのダンサーが主流となっていましたので、スクォートボートはその時代には随分とボリュームのないボートで非常に不安だった記憶があります。
 技としてはスターンスクリュー、カートウィール、ミステリームーヴでしたが、長くボリュームのあるボートをねじ伏せるには、大変な体力が必要でした。

 これらのボートで行う技で最高の技は、「スクリューアップ」で、最初のスターンスクリューで75°直立させ、Y軸に180°回転させた後、115°に直立させて元の状態に戻るのが最も美しいとされました。
 その後、マエストロという名前の短くボリュームのないボートが発表されて、メンバーはすぐにこのボートに乗り換えました。

 マエストロはカートウィールが非常に行いやすく、ハンドパドルでもカートウィールが可能なぐらい高性能となりました。
 しかし一方では、デッキのコンケーブがなくハルがラウンドしていないためスクリュー系の技が非常に難しくなりました。
 また、バウとスターンの先端が丸く仕上げられていたため、スクリュー系の技を行う際に水に軸を作ることができずボートの先端が逃げてしまうようになりました。
 ボートの形状によって、ボートがY軸回転しにくくなってしまったのです。

 その後、スクォート界の名機「シュレッド」が開発されました。
 このボートはプロジェットとマエストロの良いところを合わせたようなボートで、現在も愛好者がいるほどの人気です。
 私も何艇か乗り換え、最新ボートが出てきてもまた乗ってしまう程、良くできたボートです。
 そのシルエット、スクリュー系の技の安定感、ミステリームーヴのダウンタイムの長さ、どれもが高水準です。

 スクォートを始めるなら、まずはシュレッドに乗ることをお勧めします。
 この時代のスクォート乗りは多くいましたので、中古のタマも豊富で程度の良い出物もあると思います。
 ただし、コーミングのつなぎ目が割れやすいので、中古の場合はここの確認が絶対必要で、強化されているコーミングなら特に問題ありません。
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 このような変遷の中、スクォートボートはハルの形状は当然のことデッキの形状、ボートの長さ、前後のバランスが非常に重要なボートだと感じてきました。
 現在市販されているボートのラインナップは多く、選択に悩まれる方が多いと思いますが、プレイボートにありがちな1級の川に最新のエアリアル系プレイボートを持ち込んでも全く楽しくないのと同様、スクォートも自分のスタイル、ゲレンデにあわせたボート選びが重要だと考えます。
 簡単に言うと、スクリュー系、ミステリームーヴをマッタリとしたいなら長く幅のあるボートを、コンペ等で早く多く技を行う必要があるならショートボートを選択することになりますが、私的には短いボートは水にからまず楽しくないので好きではありません。

 スクォートボートの本来の楽しみ方は、
「水の流れを受け、受け流す。不規則な流れをとらえてその動きの中で水と一体となる。このための動きが「ムーヴ」である。」と考えています。
 ムーヴは本来美しいものでなければならず、水と喧嘩しているような動きは見ていて見苦しいものとなります。
 多くのスポーツがそうであるように、このスクォートも基本が非常に重要になります。

 次回は、スクォートの基本の動きについて解説したいと思います。

 

ミステリームーヴのために その1 エッジコントロール

 あなたはスクォートボートのバウを沈めるのに、どのような方法で行っていますか?

 パドルを使う人がほとんどだと思います。実際に多くの日本人スクォートパドラーを見ますと、リバーススィープストロークでバウを沈める方がほとんどです。
 例えば、右バウのエッジから沈めようとした場合、左フォワードスイープ、右リバーススィープの2種類の選択肢になります。

 左フォワードスイープを使用した場合、ボートの軸を作れている人は良いのですが、多くの人はフォワードスイープを行うことによりボートの推進力を与えていることになります。
 右リバーススィープはその逆で、ボートの推進力を止めていることになります。

 ミステリームーヴを行おうとする場所は川の合流するシームラインですが、本流に乗って合流するのか、エディから合流するのか、シームラインでボートのスピードを抑えたいのか、ボートのスピードを上げる必要があるのか、それらによってスイープストロークをフォワードかリバースにするか、選択する必要があります。

 私はスクォートボートしか乗りませんが、普通の人はプレイボートも乗ると思います。
 プレイボートでバウを水中に沈める時、リバーススィープでパドルの裏面を使う人がほとんどで、フォワードスイープで、つまりパドルの表面でバウを沈めるにはボートボリュームがありすぎて通常はムリです。
 これらのことが、多くの人がリバーススィープでスクォートボートのバウを沈めようとしている要因であると感じています。

 また、スクォートボートのバウを沈めるにはフォワードスイープ、リバーススィープと、もう1つ、体重移動による方法があります。
 スクォート乗りならばバウを沈めるための体重移動をしっかりと練習する必要があります。
 欲を言えば、パドルを用いず、体重移動でバウ、スターンを沈めることができるようにすることです。
 そのためにボートに乗る位置、重心を収めておく位置を決める必要があり、力をボートに伝えるためのフィッティングも重要です。
 
 バウを水中に沈めた後は、バウデッキを面としてとらえ、鳥の翼のように水中の流れを受ける、いなす、といった練習を行ってください。
 静水で練習をする場合は、バウを水中に入れた状態、すなわちバウステーションの状態からゆっくりと水面に浮上するよう水を受けて上がる、次にエッジを少しきかせてボートを回転させながらゆっくりと水面に浮上する、この2つを左右の回転でできるよう練習してください。
 次に、スターンでも同様のムーヴができるようにしてください。

 これらの4つのムーヴを静水は当然のこと、流水でもできるよう、完全にマスターしてください。

 完全にマスターできれば、流水で逆エッジをきかせても安定した状態でボートをコントロールできるようになります。

            

 

ミステリームーヴのために その2 流れを読む力

 川の流れはいつも一定ではありません。

 おいしそうなシームラインであっても、単に左右の流れが合わさっているだけの時、流れがボイルしながら合わさっている時、水中へ引き込みながら合わさっている時など、その流れは様々です。

 プレイボーターであれば、ホールやウェーブでプレイする時に、上流のちょっとした流れの動きによって、次にどのような波が来るか想像ができるはずです。
 ホールから出やすい流れになったり、スタンディングウェーブになりボートをウェーブのトップから走らせることができる、その川の流れを読み、川と一体となることによって、美しいムーヴが生まれます。

 スクォートは、さらに水中の流れをも予測し、川と一体となる必要があります。
 すなわち、シームラインの水の動きによって、表層、中層、下層がどのような流れになっているか予測し、実際にトライすることによって修正していく作業が必要になります。

 「ミステリームーヴのために その1」でマスターしたエッジコントロールを駆使して水中へ引き込まれる流れをボートのデッキに受ける体勢を作ります。
 バウとスターンに受ける水圧も違いますし、水中の流れは複雑ですので、その中でボートをコントロールするにはボートをフラットに保つことができる体幹とパドルコントロールによる重心の保持が要求されます。
 また、自分のボートの特性も知っておく必要があり、バウにボリュームのあるボートか、スターン面積が広く水を受けやすい構造になっているか、ボートの特徴を知っていれば乗り子のほうでボートの姿勢の修正が可能です。

 水中の姿勢を維持するために、パドル(スティック)を使う人がいますが、水中の動きを追及するならば、ハンドパドルのほうが圧倒的に有利です。
 スティックの場合、パドルの片側しか使用することができず、ボートも人もパドルも全部沈んだ状態ではコントロールパドル以外の側のパドルが水中で邪魔になり、繊細なパドルコントロールができません。
 水中に完全に潜りたい、潜ってからのムーヴを楽しみたい、のであれば、今すぐハンドパドルに替えることをお勧めします。
 プロカヤッカーでない限り、ボートに乗れる時間は限られていますので、いつまでもスティックにこだわっている行為は、上達を遅らせます。

 ハンドパドルにした場合、水中においてボートデッキの横に両手で水平に構え、水を受けて潜らせるために使用することができますし、下から上に漕いでさらに深く潜る、移動するために前に泳ぐ、止まるために後ろに泳ぐ、さらに水中で水面と同じようにバウを下げてから潜らせるように漕ぐ(マグナム)など、スティックとは違った動きを行うことが可能になります。
 片方のハンドパドルで姿勢づくりを、もう片方のハンドパドルでボートを回転させることもできます。
 さらに、アンダーウォーターループを行う際にもパドルが邪魔にならず、ループを行った後の姿勢づくりも両方のハンドパドルが使用できることによって、前後左右からくる強い流れや弱い流れに対し、対応が安易になります。

 と、良いことずくめのハンドパドルですが、流れを読む力がないと、せっかくの良い道具も使いこなせないってことになります。
 川の流れを陸から見ること、潜って川底の形を観察すること、表層、中層、下層の流れを身体で感じること等、様々な情報、テクニックを駆使して深く長く潜るラインにボートを乗せてみましょう。

 何度潜っても、1つとして同じ軌跡とならない。

 自分のイメージと近くなったとき、最高の気分になる。

 だから私たちはスクォートがやめられない、最大の理由なんじゃないでしょうか。

 

ミステリームーヴのために その3 水中での移動方法

 みなさん、潜ってますか。
 最近、あかべこのロコとセッションしていて気づくことがありました。
 このホームページをご覧になっている皆さんは、当然ハンドパドルを使用していますよね?
 ハンドパドルの利点は前述のとおりですが、最近さらに深く、長く潜る術を見つけたので、説明します。
 その方法とは、ハンドパドルの向きです。

 最近のあかべこのロコはハンドパドルを下から上に漕ぎます。
 漕ぐといっても、ハンドパドルの面を作り水流を当てながらボートを深く潜らせることを行っています。
 ハンドパドルの面と、ボートの面を、潜らせる方向、角度にするということです。
 あかべこの場合、これで力をセーブし酸素消費量を抑えて深く潜ることができますが、下流へ行くとボイルがボートを浮上させようとしてきます。
 この時、ボイルを抱え込むように、その下をかいくぐるように両手で下から上に漕ぎます。
 ここにくるまでに十分に深く長く潜っていますので、酸素残量が少なく不安になりますが、潜り始める際に十分なプランを練っておけば、慌てることはありません。
 ここで頑張れるかどうかで、ダウンタイムが違ってきますので、やみくもに水中で漕ぐのではなく、ボートのエッジコントロールとパドルコントロールで潜れるところは潜る、漕ぐ時は漕ぐ、メリハリを付けて安定した精神状態でダウンタイムを楽しんでください。

 水中での動きの練習は静水ではできません。
 最低でも1mは潜らないと、下から上に漕ぐ、この感覚は得られません。
 静水でミステリームーヴの逆エッジの練習は可能ですが、これができたら次は水中での動きをマスターしましょう。
 左右どちらからでもミステリームーヴができるのは当然として、突然来た流れに対しても対応できる柔軟さ、フトコロの深さが、あなたのミステリームーヴをさらなる深みへと導いてくれるでしょう。

 

ミステリームーヴのために その4 水流に乗る

 皆さんから、水中の動きがわからない、文章が難解だ、といったコメントが多く寄せられています。
 このため、その4では動画で解説をすることにします。

           

 場所はあかべこ、ボーターはマーシー。川が合流した上流側の頂点(トライアングル)で潜らせた後、右岸の底流をつかみ川底へ向かう様子が明らかになっています。
 水中でボートが上流に向いた時に両手で右岸の流れをつかみ、ボートが180°回転した後、左手で川底へ行く流れをつかんでいます。

 

ミステリームーヴのために その5 水中の動きを真似てみよう

 潜っている人の水中の動きを真似てみましょう。
 場所は三重県大内山川ツヅラト ボーターはマーシー。

           

 とにかく下から上に漕ぐ。底流をハンドパドルでつかみ、その流れとともに川底へ行く。このためのパドリングをしなければ深く、長く潜ることはできません。
 どんなボートの姿勢であっても川底に行く流れをつかむ。流れを身体で感じ流れに乗る、これが大切です。

 

 別の人の水中の動きを見てみましょう。水をつかむ動きは人によって違いますがしていることは同じです。

           

 ノリノリですねー。

 

ミステリームーヴのために その6 河床へ行く流れをボートに受ける

 ゆったりとしたシンクスポットでボートのデッキに流れを受ける練習をしてみましょう。
 場所は三重県大内山川ツヅラト。

           

 その5のパート練習になります。その5ではパドルで底流をつかんでいますが、その6ではパドルを使わずボートのデッキで底流をつかみます。
 ボートがぐらつくとせっかくつかんだ底流が逃げてしまいますので、腹斜筋でボートを安定させます 。ボートのデッキに底流を受けるテクニックはスティックでもできますが、ハンドパドルで底流をつかむ+ボートのデッキで底流をつかむ=ビックダウンタイムとなりますので、ハンドパドルは必須です。何度も言いますがミステリームーヴにスティックは不要です。

 

ミステリームーヴのために その7 最近のスクォートボートの選び方

 最近のスクォートボートは、体重の軽い人には合わなくなりました。

 最近流行りのボートを体重の軽い人のサイズにフロートチョップした場合、ボリュームを落とすためボートが小さくなります。コクピットからバウまでのボートの幅が狭くなり、水を受ける面積が少なくなってしまいます。さらにフットバンプから横の、エッジに向かって通常は緩やかなラインとなるところですが、ボートの幅が狭くなることによってフットバンプがエッジから急激に立ち上がるラインとなってしまいます。この形状ではデッキに水を受けるのに不利な形状となります。

静止画

(ボートは3艇ともカゼです。写真左が幅の狭いボート、中央はデザイナーが意図した幅のあるボートです。バウ側の幅、フットバンプから横のエッジまでの形状が左と中央のボートで異なっています。)

 最近のボートのデザインは、幅は細身で水中に沈みやすい形状となっており、水中でボートをフラットに回転させるためのフットバンプの形状、デッキの形状に工夫が見られます。ゲレンデの状態が良好で、明確なシームラインがありボートを水中に引き込むことができる水のパワーと流れがあれば、細身で全長の短いボートは性能を発揮でき、誰でもが安易にミステリームーヴを楽しむことができます。

静止画

 エキスパートレベルになると、ただ単に潜るだけではもの足らず、水中に深く、長い時間いることを追求します。このために水中でボートを走らせたり、流心や底流に乗せるためにありとあらゆる動きを行います。水中でボートを動かすには細身で短いボートのほうが安易に行うことができますが、水中で底流へ行く流れを利用する際にボートが押さえ込まれる力を利用するため、ボートは長く幅があり、受圧面積が大きいボートのほうが水を受けて深い場所に到達することができます。

 お風呂で実験してみましょう。プラスチックの下敷きを水面に浮かべて上から垂直に下へ押してみますと、大きな力が必要ですが、その下敷きを縦に半分に切って同様のことをしてみますと、小さな力で沈ませることができます。逆に水中にある下敷きを水面と平行にしたまま上に引き上げようとすると大きな力が必要ですが、縦に半分に切った下敷きでは小さな力で引き上げることができます。

 幅があり、デッキに水を受けやすい形状のボートは沈ませるのに苦労しますが、一旦沈んでしまえば水面に浮上しにくいボートとなり、ロングダウンタイムが期待できます。ダウンタイムコンテストではとても有利なボートです。

 幅が狭く、ボートをフラットに回転させた場合に対応できるようフットバンプがデザインされたボートは動きが早く、アラウンドとミステリームーヴで競い合うコンペ向きのボートとなります。

 現在私が目指しているスクォートは、ディープでロングなダウンタイムなので、前者のボートを選択することになります。しかし、私の体重では最新のボートをフロートチョップしてもデザイナーの意図したボートになりません。フロートチョップでボートが細身にならないようにするためには、最初からボートに幅があること、これを満足するため、あえてオールドスクールなボートを選択しています。マエストロの大樹カットモデルです。

 マエストロはインシームが61センチから71センチ、全長は267センチ、幅は61センチです。デッキのフットバンプの形状は緩やかに丸く、デッキに乗る水流の力を逃がす形状ではありません。

静止画

(右がマエストロ大樹カットモデル。限界まで薄いため足を入れるのが非常に困難ですが、これでもボートは浮いているため、河原の石を2個ボートに入れて使用しています。)

 このようなことから、現在マエストロを使用していますが、ニンジャが非常に気になります。全長297cm、幅56cm、シームラインはフラット。フロートチョップをしてバウ側が細身になったとしても、受圧面積は相当残ると考えられます。

静止画

(写真はコア。コアの形状で全長を+8センチにしたのがニンジャ。日本ではニンジャは誰も乗っていないと思いますが…。)

 ボート選びはどんな時代でも悩みます。コンペに全く興味がない今、深く長く水中にいることができるボートは、現在市販されている中で最も全長が長く、幅の細身なボート、アラウンドなんて知ったこっちゃありません的な、ニンジャなんでしょうか。

 

ミステリームーヴのために その8 川底へ行こう

 「どうしてそんなに長く潜ることができるんですか。」以前、このような質問には「ガマンすることです。」と回答していましたが、正確には「心技体を駆使して水中でガマンすること」です。深く潜るために下から上に漕ぐ、これは非常に大切なことですが、絶えずこのように漕ぐと酸素を非常に消費してしまいます。川底へ向かっていく流れを感じ、その流れに合わせるように漕いで、体力の消耗、酸素の消費を極力少なくします。

 ミステリームーヴの動きを4つのステージに分けて考えてみましょう。ステージ1は「水面から水中へ潜るために」、ステージ2は「表層で底流をつかむ」、ステージ3は「川底での在り方」、ステージ4は「浮上の際にすべきこと」、になります。

ステージ1

 スクォートがダウンリバーカヤックと違うのは逆エッジを多用することです。最近、人口コースのカヤックスラローマーがピボットターンを積極的に行っている場面を見ますが、スクォートはスターンの逆エッジとバウの逆エッジを使用します。

 オールドスクールなミステリームーヴの場合、最初にバウの逆エッジを使用しバウを水中に入れてから、スターンの逆エッジを使用してスターンを沈め、ボート全体を水中に移動させます。ボートはプレイボートでエンダーを行うような動きとなり、ボート立ち角度は45度程度で、深く潜らせようとすればするほどその角度は垂直に近づきます。バウが沈んでいる深さに到達するようスターンを水中に入れるため、バウを深く沈めるためにはボートを垂直にしなければならないからです。そんな角度でスターンが沈むわけないと思いがちですが、それを使いこなす達人がおり、そのテクニックは「マグナム」と呼ばれています。

 最新のボートは静水で10センチ程度沈んでいますので、バウとスターンの逆エッジを同時に使用し、ボートを水中に移動させることができます。ボートの片側全体に逆エッジをかけて潜っていくのですが、潜らせる時にボートが全く見えない状態ですから、水上からは何をやっているのか全くわかりません。派手な動きはないですが、現在主流となっているテクニックです。

 ステージ1の酸素消費量は20%に抑えてください。 

ステージ2

 「表層で底流をつかむ」を説明する前に、水面にいるカヤックを思い浮かべてください。カヤックの舵がききボートが走るのはエディから本流へ入る時、本流からエディへ入る時など、ボートと川の流れの速度差がある場合です。これは、水中でも同様のことが言えます。合流した流れでボートを潜らせた時、ボートは表層で下へ向かって動いていますが、下流には動いていません。表層から中層へ行くあたりで川の流れがボートに当たりはじめ、ボートを下流へと動かそうとするので、この時に、表層の下流に行く流れをつかむのではなく、川底に行く流れをハンドパドルでつかみます。

 水中で川の流れは見えにくいので、体に当たる水圧とアワの形や向きでどのような流れになっているか、確認します。流れに正面を向いている場合もありますし、背面している場合もあります。そのどちらの場合であってもボートの先端を下げ、川底へ向かう姿勢を作って漕いでください。

 ボートのバウ、スターン、左右、どのエッジも使用することができるテクニックによって、川底に行く姿勢を作り、ボートの面でその流れを受けます。姿勢づくりにはハンドパドルが欠かせません。ボートのエッジコントロールと川底に行くために漕ぐことができる大きさや形状の、自分に最も適したハンドパドルが重要なアイテムになります。

 ステージ2の酸素消費量は最大でも50%に抑えてください。 

ステージ3

 川底へ行く流れを掴み、ボートが川の流れと同じスピードになったら、ボートのデッキに底流を絶えず当てる姿勢を作るだけで漕ぐ必要は全くありません。川底の石を見て楽しんだり、巨大な鯉と友達になったり、水中から見る神秘的な水面やボートのデッキに舞い降りる天使を楽しんでください。

 ステージ3の酸素消費量は10%程度ですが、ここで「深く潜りすぎた!」とか、「水面があんなに高い場所にあって自分は大丈夫だろうか?」といった邪念があると酸素消費量はいっきに20%程度に跳ね上がり、酸素消費量がトータル90%となってしまい、さらにあせりが生じ息がもたなくなってきます。ヨガや座禅などを日頃のトレーニングに取り入れても良いと思いますが、いずれにしても自分がスクォート乗りか、最も試されるステージです。 

ステージ4

 楽しかった水中トリップも終わりに近づこうとしています。川底に押し付けようとする流れが弱くなれば、ボートは水面に浮上します。しかし、その時のボートの位置がエディラインであればボイルやスクィーズが、岩壁であればピローが、さらに長く潜るための手助けをしてくれます。このわずかな流れを利用し、残った酸素をフルに使用しハンドパドルで下から上に漕ぎ、ロングダウンタイムを稼ぐことができます。この時のボートの面づくりは非常に重要で、わずかな流れをデッキに受け、それをこぼさないようにする、繊細なエッジコントロールが求められます。

 もし、水中で息が続かず苦しくなった時には、片側のバウとスターンのエッジを同時に立てることにより何時でも瞬時に水面へ浮上することができます。そのテクニックは「三河アタック」と呼ばれています。最近はバウを前に傾けることによって水中から水面にエンダーするように浮上する人もいますが、いずれも水中でのプランを見直す必要があります。水面から水中へ潜らせる際、水中から水面へ浮上する際のムーヴは最も美しくなければなりません。 

 深く、長く潜るミステリームーヴはそれ相応のテクニックが必要です。最初は浅く、短い時間しか潜らないかもしれませんが、それでも楽しい、スクォートの世界がそこにあります。