紆余曲折を経てクリスタルを手に入れたティナは、オニオンナイト、クラウドと3人でしばらく旅をしていた。
ティナ「他のみんなはどうしてるかな。無事、クリスタルを手に入れられたかしら?」
オニオンナイト「きっと大丈夫だよ」
クラウド「そうだな。そろそろ連絡をとってみるか」
クラウドはティナ達の見知らぬ物を取り出した。
オニオンナイト「クラウド、それは何?」
クラウド「これはPHS、俺の世界にある、遠くに離れている仲間と連絡をとれる機械だ。他に持っているのはスコールとティーダだけだったが、3人で番号を交換しておいたんだ。ちょっと待っててくれ」
プルルルル、プルルルル……
クラウド「もしもし、スコールか?今どこにいる?……無事クリスタルは手に入ったか…………よし、次元城に集合だな、わかった。じゃあな」
プルルルル、プルルルル……
クラウド「もしもし、ティーダか?あれからどうしている?……そうか、みんなバラバラになってしまったんだな。……わかった、次元城で合流しよう」
クラウド「待たせたな。皆無事にクリスタルを入手できたようだ。俺は他の連中を集める為、先に行く。2人は後から来てくれ。集合場所は次元城だ」
オニオンナイト「わかったよ」
クラウドが去り、改めて2人きりになると、オニオンナイトとティナはお互いぎこちなくなった。
オニオンナイト「あ…その……じゃあ、僕達も行こうか」
ティナ「そ、そうね」
……………………………………………………
ティナ「ねえ」
オニオンナイト「何?」
ティナ「あなたと1回はぐれてしまった時あったでしょう?あの時、私とても心細かったの。あなたがいないだけでとても不安で…寂しかった」
オニオンナイト「ティナ……」
ティナ「本当に……無事で……良かった……」
オニオンナイト「――!!危ない!!」
突然オニオンナイトはティナをかばい、身を伏せた。
セフィロス「おや?奴はもういなくなったのか。残念だ」
オニオンナイト「セフィロス!おまえ!」
セフィロス「まあいい。戯れに子供の相手でもしてやろう。未来に別れは告げたか?」
ティナが何かをする間もなく、2人は剣で斬り合った。剣戟の音が響き渡る。
セフィロス「斬る。八刀一閃!」
オニオンナイト「旋風斬!」
セフィロス「なかなかやるな」
オニオンナイト「行くぞ!流剣の舞!煌きの剣雨!!導きの剣閃!!!」
オニオンナイトは次々と剣技を繰り出す。
セフィロス「くっ……たいしたものだ。ここまでとはな。何がおまえを強くした?」
オニオンナイト「僕が見つけたのは――みんなを守る力だ!」
セフィロス「次は本気を出そう」
セフィロスは去っていった。ティナが見るとオニオンナイトの脇腹から血が流れている。
オニオンナイト「くっ……油断した……でも大丈夫……ティナのことはちゃんと守ったよ……」
オニオンナイトは地面に倒れた。
ティナ「そんなっ!お願い!しっかりして!!」
ティナはオニオンナイトの傷の手当をし、ずっとケアルをかけ続けた。少年の顔は青ざめ、生気がなかった。ティナは知らず知らずのうちにオニオンナイトに依存するようになっていた自分を激しく責めた。いつも、いつも少年が先導してくれ、敵が現れればアドバイスをしてくれ、必要な時には守ってくれた。カオスの手先と遭遇した時も、すべて彼が対処していた。自分もコスモス側の戦士の一人であるのに、力を怖れて戦うのを極力避けてきた。その結果がこれなのだ。大切な仲間に重症を負わせてしまった。あの時自分も一緒に戦えば――
『守るから。ティナのことは僕が守るから』
オニオンナイトの言った言葉が脳裏に焼きつく。ティナは少年が自分を守ると言ってくれること、守ろうとしてくれることを心地よく感じていた。いけない。自分も世界を救う為に召喚された戦士の一人なのだ。守られるばかりでなく、自分も誰かを守る為に戦わなければ。
それだけではない。ティナはオニオンナイトを失ってしまうかもしれないという怖れに、単に仲間を失う以上の恐怖を感じた。
彼を失ってしまう――彼が永遠に自分の前から消えてしまう――
自分を守ると言ってくれた彼。いつも自信喪失がちな自分を優しく励ましてくれる彼。自信家で頼りになる彼。決断力があり、頭脳明晰な彼。彼の笑顔。彼の優しい瞳――
ティナ「いやっ!お願い!死なないで!!」
オニオンナイトが意識を取り戻した時には既に朝日が昇っていた。ふと横を見るとティナがそばに寄り添って眠っている。
オニオンナイト(ティナ……一晩中僕の看病をしてくれたのか?)
オニオンナイトは思わず赤面した。傷口を見るともうほとんどふさがっている。
ティナ「う…うん…」
ティナは目を覚ました。
ティナ「オニオンナイト!気がついたのね!よかった!!」
ティナは少年に抱きついた。
オニオンナイト「ティ、ティナ!!」
ティナ「死んでしまうかと思ったのよ!私…私…」
オニオンナイト「ティナ……もう大丈夫だよ。心配かけたね」
少年はティナをしっかりと抱きしめた。
ティナ「…ねえ」
オニオンナイト「何だい?」
ティナ「私、思ったの。今まであなたに守ってもらってばかりで、いつも励ましてもらってばかりだったわ。でも、それだけじゃダメだって。私もコスモスの戦士の一人なんだもの。これまでは戦うことを恐れていたけれど、恐れるだけじゃない未来を形作る為にも、それをみんなと一緒に夢見る為にも、今は戦わなきゃ」
ティナ「オニオンナイト、あなたは私にとってとても大切な人よ。あなたに守られるだけじゃなく、私もあなたを守りたい。」
オニオンナイト「ティナ……」
ティナ「行きましょう。仲間のところへ」
ティナはオニオンナイトに対して、他の仲間より特別な感情を抱いている自分に気づいた。この気持ちが何なのかはっきりわからない。しかし、この気持ちは何より大切にしたいと思った。
一方、ここは次元城。クラウドとスコールはティーダを待ちくたびれていた。
クラウド(ティーダのやつ、遅いな。一体何をしているんだ)
スコール(これで1時間になる。何でこんなやつと一緒に待たなければならないんだ。だいたいあの髪型は流行らないだろう。不必要にデカイ剣なんか背負って。何もしゃべらないし、つまらないやつだ)
そしてティーダは……
ティーダ「やべえっ迷っちまったよ。どこだ、ここは?え〜と、何か壁に書いてあるぞ。『夢の終わり』?」
ティーダは携帯を見た。
[圏外]
ティーダ「夢も希望もありません、ってか。マジでヤバイッスよ!やっぱフリオニールと別行動とるんじゃなかった。俺一人だけ置いてかれちまう。みんな、どこだ〜!!」
クリスタルを手にした戦士達は一人、また一人と集い始める……
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