ティナは1人、アルティミシア城の一角に腰掛けていた。
この間からバッツの自由奔放さ、屈託のない振る舞いに惹かれて、バッツに夢中だったが、先日、オニオンナイトに他の仲間とも仲良くすべきだと指摘され、自らの振る舞いを反省しているのだ。
バッツのことが好きで好きでたまらない。いつの間にか頭の中がバッツのことでいっぱいになっている。朝起きて考えるのは今日はバッツと何を話そうかということばかりである。

しかし、仮にもコスモスの戦士として召喚された身である。戦うことが第1の使命であり、仲間の戦士達との結束を固める意味でも、バッツのことばかり考えていてはいけないのだと思った。
意を決したティナは仲間の元へ戻り、練習試合を始めた。仲間全員と戦い、時には負け、時には勝った。やはりバッツ相手には剣先が鈍るが、それはバッツも同じようだった。



ジタン「なあ、どう思うよ?あの2人」
ティーダ「バッツとティナッスか?」
セシル「確かに同じ仲間として気になるよね。どこまで進んでるんだろう」
フリオニール「バッツとティナ?いつからそういう関係になったんだ?」
ティーダ「おまえがクリスタルを手に入れている間に、あの2人の仲は急速発展しちまったんスよ。でも最近はどうなんスかね〜」
セシル「ティナってば、急に練習試合を始めたりして。今までは仲間同士だから嫌がってたのに」

そこにクラウドがやってきた。

クラウド「コスモスの戦士としての使命を思い出したのだろう」
スコール「俺達は戦いに生きるだけだからな」
ティーダ「そんな人生つまんないッスよ!せっかく違う世界の人間と出会えたんだ。楽しまないと損ッスよ!」
クラウド「ティーダは単純でいいな」





一方その頃オニオンナイトは――

オニオンナイト「はぁっ!やぁっ!たあっ!」

1人で剣の稽古に勤しんでいた。

オニオンナイト「はあ、はあ………ティナは…ティナは僕が守るんだ!バッツなんかに負けない!」

すると、背後から声が聞こえてきた。

ゴルベーザ「どうした?随分と焦っているようだな」
オニオンナイト「ゴルベーザ!」
ゴルベーザ「急にどうしたのだ?おまえは十分強い。何も焦ることはない」
オニオンナイト「そんなことないよ。僕はコスモスの戦士の中でも最年少。子供扱いされてる――ティナにも」

オニオンナイトは急に落ち込んでしまった。

ゴルベーザ「未熟さは心胆で補え!おまえは強い。どんなときにもくじけない強い心を持っている」
オニオンナイト「ゴルベーザ…あんただけだよ、僕のこと、ちゃんと一人前の戦士として見てくれるのは」
ゴルベーザ「オニオンナイト、おまえは少女を守ると誓った。その想いは確固とした揺るぎないものであろう?」
オニオンナイト「そうだけどさ、ティナはバッツが好きなんだ」

そう言うと、オニオンナイトは泣きそうな顔になった。

オニオンナイト「僕はしょせん子供なんだ。どんなにがんばっても振り向いてもらえない」
ゴルベーザ「おまえの気持はいつかあの少女にも伝わるだろう」
オニオンナイト「だけど…」
ゴルベーザ「ナイトというものは辛いものだ。守る女性が他の男性を見ていても、それでも意志を貫き守り通す。それが真の騎士というものだ」
オニオンナイト「報われない想い…悲しいな…でも、僕はそれでもティナが好きだよ」
ゴルベーザ「強く生きるのだ。少年よ」



バッツ「ティナ」
ティナ「あ!バッツ!」
バッツ「急にどうしたんだ?今までは練習試合も嫌がってたのに」
ティナ「この間オニオンナイトに言われたでしょう?バッツとばかり仲良くしてちゃダメだって。他のみんなとも仲良くしなきゃ。それに私だってコスモスの戦士だから頑張って戦わなきゃって思って…」
バッツ「そうか。…あ!そうだ!花を見つけてきたよ」
ティナ「本当?」
バッツ「ほら!白百合だ!清楚なティナには似合うと思うぜ!」
ティナ「ありがとう!」

そして見つめ合う2人。それをクラウドは物陰から見ていた。

クラウド(クッ…ティナ………!)





フリオニール「WOLがやってきたらセフィロスに奪われた『のばら』を返してもらわなきゃな」
クラウド「フリオニール、おまえの『のばら』なら俺がセフィロスから取り返したぞ」
フリオニール「何だって?それじゃあ返してくれ」
クラウド「…フッ」
フリオニール「?」
クラウド「ただでは返さない」
フリオニール「な、何だって?」
クラウド「俺はもうティナには告白できないんだあああーーー!!!!!
フリオニール「それと何の関係が?」
クラウド「フリオニール、俺の愚痴を聞いてくれ」
フリオニール「別にそれくらい、いくらでも聞いてやるけど」
クラウド「ティナは…俺の憧れの女性なんだっ!!!!!」

その後、クラウドは泣き上戸の様になった。

クラウド「ずっと…ずっと片思いをしていたのに…今までの関係を壊したくなくて、ずっと秘かな想いを温めていたのに…くうっ…うっ…」
フリオニール「泣くなよ。確かに俺もティナは好きだけど、ティナはバッツが好きなんだろ?仕方がないじゃないか」
クラウド「仕方がないで済むか!俺がどれだけティナに恋してきたか、おまえらにわかってたまるか!」
ジタン「クラウド、世の中に女なんていっくらでもいるぜ。だからそう絶望すんなって」
クラウド「ティナの様な女性など他に存在するか!あれほど清楚で可憐な美少女など!今時の女なんておしとやかさのかけらもない!」
ティーダ「そんなことないッス」
ジタン「人によると思うけどな。それに口の悪さも愛嬌のうちってね!」
クラウド「俺にはティナ以上の女性がいるなんて到底考えられない!」
ジタン「あーあ、ダメだこりゃ。完全にティナにぞっこん惚れちまってる」
クラウド「そう言うおまえはどうなんだ!コスモスのことも気にかけているようだが、まさかティナとのことは遊びなんじゃないだろうな!」
ジタン「まさか!でもコスモスもいいよな〜」
クラウド「ジターン!!」
ジタン「レディ達にはそれぞれの良さがある。誰が1番かなんて決められないよ」
クラウド「俺は誰が何と言おうとティナだあああーーー!!!!!
ティーダ「確かに。俺もティナみたいな感じの女の子、割と好みのタイプッスね」
セシル「僕も」
フリオニール「俺も」
スコール「俺は少し違うな」

WOL「私は誰が何と言おうとコスモスだ!」

ジタン「わっ!びっくりした!」
フリオニール「WOL!いつの間に」
WOL「皆、待たせたな。しかしコスモスは誰にも渡さんぞ」
セシル「大丈夫だよ。みんな元の世界に大切な人がいるから」
クラウド「俺はいないっ!」
ティーダ「もしかして片思いされてるかもよ!そう嘆くなって」
クラウド「う…ティナ以外の女性なんて考えられない」
ジタン「しょーがねーヤツだなあ、もう」
スコール「それよりこれで10人そろったんだ、他の皆を呼んでこよう」





改めて10人のコスモスの戦士達がそろった。

ジタン「とうとうこれで全員がクリスタルを手に入れたわけだ」
WOL「よし、皆、行くぞ!コスモスの元へ!」

バッツとティナは並んで歩き始めた。お互いの存在を意識しながら。その後ろにティナを気づかいながらオニオンナイトが続く。ジタンとオニオンナイトは互いに牽制し合っており、クラウドも遠巻きにティナを見守りながら歩いている。セシル、ティーダはそんな仲間達を見守るようにして歩いている。そしてWOLはそんな仲間達の人間関係には気づかないようでひたすらつき進んでゆく。

慕情、嫉妬、羨望。様々な思いが錯綜する中、戦士達は真の戦いへ赴く。





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