ここはモブリズの村。ティナと孤児達が暮らしている場所である。
今、この村の外れには大きな飛空挺があった。世界をまたに掛ける飛空挺、ファルコン号である。
世界最速の飛空挺であるファルコン号であったが、エンジンに支障をきたしてこのモブリズの村のすぐ近くに不時着したのである。
それ以来、セッツァーはしばらくティナや村の子供達の厄介になっていた。

ティナ「セッツァー、ご飯ができたわよ」
セッツァー「ああ、悪いな。ティナにはすっかり世話になっちまった」
ティナ「いいのよ、そんなこと。私達仲間じゃない。飛空挺はもう大丈夫なの?」
セッツァー「ああ。後は試運転して問題がなければ出発する」
ティナ「じゃあその前にご飯を食べていって」
セッツァー「ああ、わかった」

セッツァーは改めてティナを見た。成人した彼女は美しく、清楚な雰囲気を湛えている。身寄りのない孤児の世話をする母性本能を持ち、愛情たっぷりに子供達の世話をする彼女はまるで聖女のようだ。清楚で、無垢で、清らかなティナ。その美しさに思わず見とれてしまう。

セッツァー(ティナ…いい女になったな…)

オペラ座の歌手のマリアを嫁にもらおうと考えていた彼はその野望をセリス達に阻止され、今度はそのセリスをものにしようとして、表裏一体のコインで見事裏をかかれたのであった。セリスは今やロックと結婚してしまった。セッツァーの身近にいる美女は今となってはこの成人したティナである。

ティナ「セッツァー、おかわりは?」
セッツァー「ああ、じゃあ頼もうか」

側では子供たちがわいわいと騒ぎながら食事をしている。セッツァーは元々あまり子供が好きではなかった。さっさと食事を終えるとティナを誘って外に連れ出した。ティナは何の警戒もなくついていく。肩を抱かれて歩き始めてもティナは無反応だった。セッツァーは飛空挺の側の目立たない場所にティナを誘った。

ティナ「…あの戦いからもう1年が経っているのね…」
セッツァー「ああ。ティナももう大人だ。すっかり美人になっちまったぜ。それじゃ男共がほっとかないだろう」
ティナ「どういう意味?」
セッツァー「…これから嫌でもわかるさ。なんなら俺が一から教えてやってもいいがな」
ティナ「?」

ティナは可愛らしげに首をかしげる。その清楚な雰囲気、純粋な瞳にセッツァーの心中は穏やかではなかった。ギャンブラーである彼は元から酒や女遊びが好きなたちである。カジノでは決して出会わないようなティナのようなタイプは新鮮に感じる。男女の間の色事を何一つ知らない彼女。いっそ自分のものにしてしまいたいという欲望が湧きあがったが、かろうじて抑えた。

セッツァー「ティナ、これから男には気をつけるんだぜ。特に俺やエドガーにはな」
ティナ「??どういうこと?」
セッツァー「いずれわかるさ。さあ、後はエンジンの最終チェックだけだ。それを済ませたらここを立つ」
ティナ「短い間だったけれど、あなたが来てくれて嬉しかったわ。名残惜しいけれど、良かったらまたいつでもここへ来て」
セッツァー「子供はあんまり好きじゃないんだがな」

セッツァーは苦笑した。



ちょうどその頃――

「ティナ…ティナ…私の天使――なあっ!!!!!」

ティナとセッツァーが2人で会話しているのを偶然見つけてしまった男がいた。エドガーである。

エドガー「セッツァーの奴いつの間にティナと!?あんな物陰に隠れた薄暗い所で何をやってるんだ!ま…ままままさかキスでもしているんじゃ――」



ティナ「それじゃあまた来てね、セッツァー。私、いつでも待ってるわ」
セッツァー「ああ」

ティナが立ち去るとエドガーはいても立ってもいられなくなりセッツァーに突進していった。

エドガー「セッツァー!お、おまえは…いいい今ティナに何をしていた?」
セッツァー「エドガー?おまえ何でここに」
エドガー「私のティナに何かしたんじゃないだろうな!」
セッツァー「私の?いつからティナはおまえのものになったんだ?ティナはそんなこと一言も口にしなかったぞ」
エドガー「黙れっ!ティナはいずれ私の妃となるのだ。それを邪魔するというのなら――決闘だ!」

そういうとエドガーはクリスタルソードを抜いた。

セッツァー「あれ?おまえの武器ってドリルじゃなかったっけ?」
エドガー「うるさい!いざ、勝負だ!」

逆上して頭に血がのぼっているエドガーがセッツァーに接近する前にセッツァーは一撃のダーツをエドガーの眉間に命中させた。


グサッ

バタッ


セッツァー「さてと、馬鹿はほっといて行くとするか」

エドガーはあっさりやられて地面に倒れた。それを一瞥すると、セッツァーは何事もなかったかのように飛空挺に乗り、飛び去っていった。





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