エドガーはティナに手厚い看病を受けていた。

ティナ「エドガー大丈夫?」
エドガー「ティナ…君が側にいてくれるだけで私の心は癒されるよ」
ティナ「側にいるだけで…?」
エドガー「もちろんさ」
ティナ「エドガー?…ごめんなさい。言ってることがよくわからないの。私、まだまだ人間としての感情が足りないのかしら?」
エドガー「それならば私と共に新たな感情を見つけてみないかい?愛という名の美しい感情を」
ティナ「人を愛することは私にはもうわかっているわ」
エドガー「いいや、まだ君の知らない感情がある。ディーンとカタリーナを見たまえ。そして彼らの愛の結晶を」
ティナ「愛の結晶?それはなあに?」
エドガー「赤ん坊のことだよ」
ティナ「赤ちゃんは結晶なんかじゃないわ」
エドガー「愛し合う男女の間には子供が生まれる。それを例えて愛の結晶というのだよ」

それを聞くと、ティナは急にふさぎ込んでしまった。

ティナ「愛し合う男女…ディーンとカタリーナ…ロックとセリスもそうなの?」
エドガー「そうだよ。この世には結婚している夫婦がたくさんいるだろう?愛し合う男女にはその2人の間だけに特別な愛情が芽生える。それはその者達にしかわからないものだ」
ティナ「愛し合う男女…結婚…夫婦…赤ちゃん…」
エドガー「ティナ。私は君を愛している。どうか私と結婚してもらえないだろうか?」

ティナは目を見開いた。

エドガー「君がまだ知らない『愛』を共に築いていかないかい?私の愛しい人よ」
ティナ「……………」

ティナはしばらく黙っていた。

ティナ「ごめんなさい。しばらく考えさせて」
エドガー「いいとも。君がその気になるまで私は何年でも待つ気だよ」



ティナは子供達のところへ戻った。

カタリーナ「ティナ、どうしたの?」
ティナ「エドガーに結婚してほしいと言われたの」
子供「ママ、結婚するの?」
ティナ「私、どうしていいかわからない」
カタリーナ「ティナはあのエドガーさんを好きなの?」
ティナ「好きよ」
子供「じゃあ結婚しちゃえ!ママが結婚して幸せになるなら僕達みんなでお祝いするよ!」
子供達「そうだよそうだよ!」

ティナはしばらく逡巡していた。そして子供たちを一通り見回して言った。

ティナ「みんなはママの結婚に賛成なのね?」
子供達「うん!」
ティナ「…じゃあ、私、やってみる!エドガーと一緒に幸せをつかんでみせるわ!」


その後、エドガーが有頂天になったのは言うまでもない。





エドガーは早速ティナをフィガロ城へ招き、婚約した。そして式の準備を進めていく。国王としての政務に追われながらもエドガーは幸せだった。何故ならティナが求婚を受け入れてくれたのだから。


ある夜――

ティナ「エドガーどうしたの?こんな夜更けに私を呼んだりして」
エドガー「何を言うんだい、マイレディ。私達は婚約者じゃないか。こうして夜にワインでも飲んで愛を語ってもいいじゃないか?」
ティナ「エドガー、私、まだあなたのいう『愛』がどんなものだかよくわかっていないの。でも結婚したロックとセリスも、子供が生まれたディーンとカタリーナもとても幸せそうだったわ。モブリズの子供達も私に結婚して幸せになって欲しいって。だから私も幸せをつかみたい。私に求婚してくれたあなたと共に」
エドガー「ああティナ!そんなことを言われたら私は幸せすぎて我を失ってしまうよ!このまま死んでしまったとしても思い残すことはないほどだ!ああティナ、私の天使…」

エドガーはティナに近づくと、唇に接吻した。

ティナ「…今のはなあに?」
エドガー「『キス』というのだよ。愛し合う男女がすることだ」
ティナ「何故お互いの口をつけるの?」
エドガー「愛し合う男女は皆そうすると昔から決まっているんだよ、ティナ。君は本当に何も知らないのだね」

そう言うエドガーの口調は限りなく優しい。

エドガー「ティナ、今夜は一緒に寝よう。『愛し合う』ということがどんなものか教えてあげるよ」

そういうとエドガーはティナの手を取り、寝室のベッドまで連れて行った。

エドガー「ティナ、これから私が何をしても驚かないで。それが『愛し合う』ということなのだから」
ティナ「わかったわ」

ティナ。この上なく清らかな無垢な乙女。そのティナをベッドへ招きいれようとしたその時――




喝ーーーーっ!!!!!




エドガー「なっ…何だ!?」
ティナ「エドガー!今、窓の外に人の影が!泥棒かもしれないわ。衛兵さん達に知らせなくちゃ!」

そう言うとティナは部屋から出ていった。

エドガー「覗きか?このフィガロ王エドガーと未来の妃との愛を覗き見ようとは無礼も甚だしい!見つけ次第極刑にしてやる――のわっ!」

エドガーは慌ててのけぞった。すると今までエドガーの頭があった所に矢文が突き立てられていた。

エドガー「矢文とは…何だ?何が書いてあるんだ?」
























エドガーは暫し呆然としていた。





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