ここはフィガロ城の屋上。そこに黒い影がひとつ――

ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ!ある時は怪傑に、ある時は堅物の侍、ある時は忍びの忍者。怪人二十面相ものまね師ゴゴ様とはこの俺のことだー!」
「ゴゴ、こんなところで何してるの?」
ゴゴ「はうっ!?」

ゴゴが慌てて振り返るとそこにはティナの姿があった。

ゴゴ「ティ、ティナ!ここは未来のお妃様が来るようなところじゃないなあ」
ティナ「さっき窓から人影が見えたけれど、あれはあなただったんじゃないの?」
ゴゴ「…フッ、そうさ。俺はティナのこと好きだからエドガーが変な真似しないよう見張ってたんだ」
ティナ「エドガーは私の婚約者よ?」
ゴゴ「あの女たらしは本来なら結婚してからすることをティナにしようとしていたんだよ!」
ティナ「結婚してから…愛し合う男女がすること?」
ゴゴ「そうさ!それは本来なら夫婦になってからすることだ!」
ティナ「じゃあディーンとカタリーナは…」
ゴゴ「そ、それは、彼らは孤児だったからそういった順番を踏むことを知らなかったんだよ!それに比べてエドガーの奴は…全くけしからん!」

ティナ「ゴゴ…あなたは私とエドガーの結婚を祝福してくれる?」
ゴゴ「ああ、もちろんさ!条件付きだけどね」
ティナ「条件?」
ゴゴ「俺はティナのことが好きだ!だけどエドガーは根っからの女好き。エドガーがちゃんと誠実な夫としてティナを愛しているかどうか見ていたいんだ。もし、不誠実なことをしたらマッシュのものまねで爆裂拳さ!俺はティナにずっとずっと幸せでいて欲しいんだよ。と、いうわけで、これからは俺もこの城に住みつくことにするよ。ある時はエドガーの家来、ある時は女官長、ある時は謀反が起きないかどうか見張るスパイ。城の中で出来るありとあらゆるものまねをして暮らすさ!ティナ、俺は俺なりにティナが好きで、ティナが幸せでいられるよう、ずっと見守ってあげるよ」
ティナ「そうなの…ゴゴ…ありがとう!」





その後、しばらくしてエドガーとティナの結婚式が盛大に行われた。ティナの花嫁姿はこの上なく美しく、誰もが見とれていた。そしてそのティナを妃に迎えるエドガーも愛しのティナを、皆が羨ましそうに見守る中、娶ることができて、心底幸せだった。
結婚式にはシャドウを除いたかつての仲間達とモブリズの子供達が招待された。子供達はそれぞれ稚拙だが自分なりに考えたプレゼントをティナに渡した。ティナはそれをにっこりと笑って受け取った。そしてかつての仲間達も新郎新婦の元へやってくる。

ロック「ティナ、結婚おめでとう!」
ティナ「ありがとう、ロック」
エドガー「おや?ロック、私には祝福の言葉はないのか?」
ロック「…ティナを不幸にしたら許さないからな!」
エドガー「…それは祝福の言葉では――」
セリス「エ・ド・ガー!浮気なんかしたらこの私が絶対に許さないわよ!今度私を口説いたりなんかしたら思いっきり張り倒してやるんだから!」
エドガー「…何故私にはこんなに風当たりが強いのだ?」
セリス「自分の胸に手を当てて考えてみなさい!」
ティナ「セリス、以前あなかたらブーケをもらったけれど、おかげで結婚することができたわ。ありがとう」
セリス「ううん、いいのよ、そんなこと。それよりエドガーをしっかりと尻に敷くことね!」
ティナ「???」
ロック「セリス!ティナにそういう抽象的な表現を使ったらダメだ。意味が通じないぞ」
ティナ「どういう意味なの?」
セリス「妻が自分の意に夫を従わせて、思うままに振る舞うことよ!女好きのエドガーと結婚するならそれくらいしとかなきゃいけないわよ!」
ティナ「そ、そう…?」
エドガー「安心したまえ、我が愛しの妃よ。私にはもう君しか見えていないよ」
セリス「と・に・か・く!十分に用心するのよ!」

ティナはセリスの気迫に押されながら何故そのようなことをしなければならないのかよくわからないようだった。

ティナ(そういえばゴゴも同じようなことを言っていたけれど…困ったら彼(?)に相談すればいいかしら…?)



モグ「ティナー!結婚おめでとうクポ!ウーマロに結婚祝いを作らせたクポ!」
ウーマロ「ウガー ティ、ティナ、け、結婚お め で と う!これ、プレゼント!」

ウーマロは得意の骨彫刻でエドガーとティナを彫ったものを持ってきた。

ティナ「ありがとう、ウーマロ!」

ティナはにっこりと笑った。

エドガー(ああ…あんな骨彫刻でも嫌な顔一つせずに受け取るなんて、ティナ、まさに君は天使だよ)

エドガーは以前ウーマロに投げられプロポーズを台無しにされたこともあり、彼らを見ると思い切り顔をひきつらせて挨拶の言葉を述べた。

エドガー「…ところで私への祝福の言葉はないのかな?」
モグ「ティナを不幸にしたら許さないクポー!」
ウーマロ「ウガー!」
エドガー「…何故皆同じことばかり言うのだ…」
モグ「それよりエドガー、服装はこれでいいクポ?ボクとウーマロはスノーマフラーの代わりにネクタイ締めてきたクポ。これで礼服だと思って欲しいクポ」
エドガー「ああいいよ。君達のことなら家来にもきちんと話してあるしね」
モグ「ウーマロは礼儀作法とかさっぱりわかんないクポ。だから式の間だけ大人しくさせるから後はご馳走をたっぷり用意させて欲しいクポ」
エドガー「もちろんだよ。披露宴ではウーマロ君にはたくさんご馳走を食べて満足してもらおう」
ウーマロ「ウガー」



マッシュ「兄貴!ティナ!結婚おめでとう!カイエンとガウも連れてきたぞ!」

礼服を着てきたマッシュとカイエン、そして以前父親と会う時に買った服を着てきたガウがやってきた。マッシュはあまり堅苦しいのは好きではないらしく、窮屈そうにしていたが、カイエンはこういった場には慣れているようであった。ガウはまるで未知の世界を見るように周りをキョロキョロ見回している。

カイエン「エドガー殿、そしてティナ嬢、ご結婚おめでとうでござる」

カイエンが丁寧に挨拶をしてお辞儀をするとガウもそれを真似する。

ガウ「ござる!」
エドガー「ありがとう、マッシュ、カイエン、それにガウ。今日は私達の祝いの席に来てくれて本当に嬉しいよ」
ガウ「ティナ、きれい」
ティナ「ありがとう、ガウ」

ティナは相変わらず天使のようににっこりと笑う。マッシュとカイエンとガウはそれぞれが用意した結婚祝いを渡して席について行った。



セッツァー「よう!ティナ!とりあえずは結婚おめでとう、だな」
エドガー「何だその言い方は!」
セッツァー「ティナ、エドガーに愛想つかしたらいつでも俺のところに来いよ」
エドガー「セッツァー!」
ティナ「いいえ、セッツァー、私、決めたの。これから私、エドガーと一緒に幸せをつかめるようがんばるわ!」
エドガー「ティナ…!」
セッツァー「そうか…それじゃあ俺の出る幕じゃねえな。幸せにな!」



ストラゴス「エドガー、ティナ、結婚おめで――」
リルム「ティナー!結婚おめでとーー!!」
ストラゴス「これこれリルム、落ち着かんかい!」
リルム「ティナ、すっごい綺麗!後で結婚祝いに2人の絵を描いてあげるからね!」
ティナ「まあ嬉しいわ!ありがとう!」
リルム「えへへ…それじゃブーケは今度は私に投げてね?」
ストラゴス「お前はまだ子供じゃないか」
リルム「いいの!」
ティナ「わかったわ。約束よ」

そう言うとティナは白く美しい指でリルムと指切りをした。

エドガー「ところで私への挨拶は…」
ストラゴス「おお!わしとしたことが申しくれた。結婚おめで――」
リルム「色男!浮気したら似顔絵描いちゃうぞー!」
ストラゴス「リルム!全くこの子は…」

ストラゴスとリルムは挨拶を終えると席について行った。



エドガー「おや、愛しの我が花嫁よ、急に悲しい顔をしてどうしたんだい?」
ティナ「シャドウも私達の仲間だったのに…なんだか悲しいわ」
エドガー「…そうだね。でも彼はもう帰らぬ人となったのだよ。仕方がない。彼の分まで私達が幸せになってみせようではないか?」
ティナ「そうね」

ティナはようやく笑顔を取り戻した。

ティナ「そういえばゴゴは?」
エドガー「式には遅れると知らせが来ている。披露宴までには来るそうだ」
ティナ「そう、よかった」
エドガー「さあ愛しの花嫁よ、神聖な式の場で永遠の愛の誓いを交わそうではないか」

そう言うと、エドガーはティナをエスコートしていった。



その後、結婚式は静粛に行われた。





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