ガウは世界が平和に戻った後も、相変わらず獣ヶ原で生活していた。
ある日のこと、少し遠出をしてみようと思い、近くの森へ入っていった。そこで彼が見つけたものは――





「ガウーガウガウ!!モグ いるかー!」

ガウは非常に興奮した状態でナルシェに入って来た。その時、モグはちょうどウーマロと2人で雪だるまを作っているところだった。

モグ「ガウ?どうしたクポ?」
ガウ「獣ヶ原の近くの森。モーグリ、見つけた」
モグ「なっっっっっ」



何だってーーーー!!!!!



モグはウーマロを連れて、慌ててガウについて行った。

モグ「ガウ、どこだクポ?どの辺で見つけたクポ?」
ガウ「どっか このへん………あ、いた!」

モグは一目でそれが雌モーグリだということがわかった。また、相手のモーグリもモグの存在に気付いた。

モグ「クポ…」
雌モーグリ「クポ…」
モグ「クポオォォォォ!」
雌モーグリ「クポオォォォォ!」

2匹のモーグリはひしと抱き合って大声で泣いた。無理もない。自分以外のモーグリは全ていなくなってしまったと思っていたのだから。





モグ「そういうわけでボクはこの子と結婚することにしたクポ!」
雌モーグリ「クポ!」
ティナ「良かったわね。モグ」
ロック「本当に…良かったな」
ウーマロ「ウガー!」
ガウ「ガウー!俺が見つけた!」
モグ「ガウ、ありがとうクポ!」
ティナ「2人共、お幸せに」

ティナはにっこりと笑ってモグ達を送り出した。

ティナ「モグ、本当に良かったわね」
ロック「ああ。本当にモーグリが絶滅しちまうかと思ってたからな。それを思うと本当に良かった」
ティナ「みんな、幸せになっていくわね」
ロック「…ああ…」

ティナがロックの方を見ると、ロックはわざと目をそらし、子供達の方へ行ってしまった。

ティナ(ロック…)





その夜――

ティナ「ロック、まだ起きてる?」
ロック「ティナ、どうしたんだ?」
ティナ「今晩はとっても星が綺麗なの。一緒に見ない?」
ロック「……ああ……」

ティナとロックは外へ出て、2人で夜空を見上げた。

ティナ「ね?とっても綺麗でしょう?」
ロック「ああ…」
ティナ「ロック…」
ロック「何だい?」
ティナ「私、あなたのことが好き」
ロック「……………ティナ、俺は女を幸せにできない男だ」
ティナ「ロックがそう思うのは勝手だわ。でも、私は…あなたが、好き」
ロック「ティナ…」

今宵は満月である。月明かりに照らし出されたティナの姿は昼間とはまた別に、一段と美しい。

ロック「ティナ…」

怖い。今の関係をさらに発展させる一歩を踏み出すのが怖い。また傷ついて、傷つけて、失ってしまいそうだ。ロックは頭の中で逡巡した。

ティナ「ロック、あなたの気持ちを聞かせて」

ティナはロックに面と向かい合う。

ロック「俺も、ティナが好きだよ。だけど…ティナだけは傷つけたくない!ティナだけは失いたくない!ずっと君の側にいる、それだけでいいんだ!」
ティナ「私には、あなたを幸せにする資格はないの?」
ロック「な…何を言ってるんだ!俺はティナの側にいるだけで十分幸せだ!」
ティナ「ロック、もう一度言うわ。いいえ、何度だって言う。私は、あなたが、好き。あなたの心の中にレイチェルさんやセリスがいてもいいわ。だってそれは当然のことだわ。あなたが過去に愛した女性なのだから」
ロック「ティナ!!」

それは、セリスとの破局の原因となったことを嫌でも思い起こさせた。それは、ティナとの関係にさらなる一歩を踏み出せない、ロックの心を縛る『楔』であった。しかしそれを断ち切るようなことをティナは言ったのである。もう我慢できない。ロックはティナを強く抱きしめた。

ロック「ティナ…俺は…本当にダメな男だ。レイチェルの時もセリスの時も。だけど、今度こそ、今度こそ、本気で愛したい!こんな俺でもティナが愛してくれると言うなら俺は…!」
ティナ「ロック…」
ロック「ティナ…愛している…今までの誰よりも……愛してる…愛してるんだっ!!」

ロックはしばらくティナを強く抱きしめていた。ロックの激情、熱情がティナに伝わってくる。身体中が熱くなる。胸の鼓動が高く鳴り響く。



その後、ロックはまるで壊れやすい陶器を持ち上げるかのように、ティナの顎を手でそっと持ち上げた。
ティナは真っ赤になってしまった。なにせロックの顔が至近距離にあるのだ。
そんなティナを見て、ロックはそっと口づけをした。

ティナ「…!!」

それは、ティナにとって初めての経験であった。以前、ディーンとカタリーナが同じことをしているのを見たことがある。おそらくこれは、愛し合う男女が行う行為なのだろう。なんともいえない、甘美な感触。思わずうっとりとしてしまう。
どのくらいの間そうしていただろう。ロックはそっと唇を離した。そして、静かに語りかけてくる。

ロック「ティナ、俺の恋人になってくれないか?」

ティナはうなずくのが精いっぱいで、真っ赤になったままだった。





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