ティナとロックが結婚してから数カ月が過ぎた。ロックはすっかりティナに夢中で、傍から見ると呆れるほどの溺愛っぷりだった。そしてティナも愛する男性と結ばれて心底幸せそうだった。清らかな乙女から人妻となり、大人の女性となったティナは今までよりもさらに美しくなり、輝かんばかりの美貌を備えていた。優しげで儚げで、そしてこの世の誰よりも美しい。暗い過去を持った憂いを感じさせる表情、それでいて子供達から好かれる聖母のような母性を感じさせる、傷ついた者や寂しい者の心を包み込んでくれるような優しい表情。それでも今の彼女は新婚生活を心から幸せに感じており、その様子は筆舌しがたいくらいである。

そんな幸せな日々の中――
ロックは10月に入ってからこっそりとあれこれ悩み始めた。10月18日はティナの誕生日なのである。それでどんなプレゼントをあげるべきか、ああでもない、こうでもないとひそかに考えあぐねていたのである。
孤児院の子供達とのこっそりした打ち合わせで、ケーキの準備やパーティーの準備の段取りはしてある。だが、肝心の夫である自分は、果たしてティナに何をプレゼントすべきだろうか?

ロック「うう〜ティナは何を上げたら喜ぶかなあ?女に対するプレゼントと言えばやっぱ宝石やアクセサリかな?でも質素な生活を好むティナがそんなので喜ぶかな」

孤児院での彼らの生活は至って質素である。服装も簡素なものばかりである。それでいて絶世の美貌を持つティナの美しさは本物だと、ロックはつくづくと思うのだった。

ロック「花――は、いくらなんでもベタすぎるよな。う〜〜ん、ティナの好きなもの…モーグリとか?」

ちなみにモグはティナの誕生パーティーに来ることになっており、既に打ち合わせ済みである。

ロック「モーグリは、モグとそのお嫁さんになった雌モーグリが来るからいいとして、っていうか俺からプレゼントするものじゃないよなあ」

ティナの好きなもの好きなもの好きなもの……………

ロック「ティナは基本的に動物が好きだよな」

ペットでも飼うか?犬か?猫か?小鳥か?それともリスとか?

ロック「違う違う違〜〜〜う!!!!!そんなの駄目だあーーーっ!」

ドレスをプレゼント?

ロック「エドガーじゃあるまいし、ティナに似合うような素敵なドレスなんてプレゼントできないよ。服のセンスでは以前エドガーと喧嘩したことあるし」

う〜〜〜ん、う〜〜〜ん、う〜〜〜ん……………

すっかり困り果てたロックは久しぶりに町に出てみることにした。
やはり女性へのプレゼントならアクセサリかと思い、そういったものを売っている店を見てまわる。
そんな中、ロックはあるものが目にとまった。

ロック「これだ!!!!!





そしてとうとうティナの誕生日がやってきた。緊張していたロックはいつもより早く目が覚めた。
ティナはまだ眠っている。心底幸せそうな、安らかな寝顔。ロックは自分と結婚したことにより、この世の誰よりも愛しいティナが幸せそうに眠っているのが半ば信じられなかった。自分のような男がティナのような希有の美貌を持つ、そして強く、優しい性格の美女を幸せにしているのである。

ティナ

この世の誰よりも愛しい自分の妻。己の全てをかけて愛し、守り通して見せる。例えこの先どんなことがあっても。

愛おしさに耐えられずそっとキスをすると、ティナは目覚めた。

ティナ「あら、ロック、おはよう。今日は早いのね。いつもは私の方が起こしているのに」
ロック「おはよう、ティナ。今日はティナにとって特別な日だからね」
ティナ「特別な日?…あ!」
ロック「ティナ、誕生日おめでとう」
ティナ「やだ、ロックったらこんなベッドの中で言わなくったっていいじゃない」

ティナは可愛らしく恥じらいを見せる。

ロック「旦那の特権さ。他の誰よりも真っ先におめでとうを言う。今日はティナの言うこと何でも聞いてやるよ」
ティナ「そんな…私はただ、あなたと1日中一緒に過ごせればそれでいいわ」
ロック「ティナ…!」

ロックは嬉しさで舞い上がってしまった。彼は本当にこの新妻を愛しくて愛しくてたまらないのである。

ロック「起きよう。子供達とこっそり打ち合わせして、全部準備はできてるんだ」
ティナ「え?」
ロック「君の誕生パーティーさ!」





ティナが身支度を整え皆に会いに行くと、孤児院の子供達が一斉に駆け寄って来た。

「ティナママ!お誕生日おめでとう!!」
「みんなでがんばってケーキとかお菓子も作ったんだよ〜」
「僕、ママにプレゼント用意したんだ!」
「僕も!」
「私も!」
ティナ「まあ…みんな、ありがとう」
「今日は一日ティナママのお誕生日パーティーだよ〜!」





ティナは感激しながら子供達のプレゼントを1つひとつ受け取っていった。

「ところでロックパパは何をあげるのー?」

ティナと結婚して以来、ロックはティナと夫婦として孤児院を運営することになり、子供達の呼び方も『ロック』から『ロックパパ』に変わった。最初はなんだか変な感じで恥ずかしかったが、今はもう慣れた。ティナと結婚するということは、つまり、この孤児院の子供達の面倒を見るということでもあるのだから。
ティナはロックの方を見た。ロックは何故だか自信満々である。

ロック「へっへー、おまえ達、見て驚くなよ!ティナ、こっちへおいで」
ティナ「あなたは私に何をくれるの?」
ロック「この間、町で綺麗な髪飾りを見つけたんだ。ティナにとっても似合うと思うぜ!」
ティナ「…まあ、とっても綺麗」

ロックはそっと髪飾りをティナの頭につけた。周囲から歓声が上がる。

「うわあー!」
「ティナママきれ〜い!!」

その時、モグ達が孤児院にやってきた。

モグ「ティナ誕生日おめでとうクポ…!!ティナ!何だか今日はいつもよりすっごく綺麗だクポ!」
雌モーグリ「クポ!」
ウーマロ「ウガー!」

ティナ「まあ、モグ達いらっしゃい。あなた達も来てくれたのね」
モグ「当然だクポ!」
ウーマロ「ウガー!」





その後ケーキの蝋燭に火を灯し、皆で誕生日を祝う歌を歌い、誕生パーティーが始まった。子供達ははしゃぎ、モグは結婚した雌モーグリと踊り始め、ウーマロは子供達を肩車をしたりして遊んでいた。





その夜――

ティナ「ロック、今日はとても楽しかったわ。みんなで私の誕生日を祝ってくれて」
ロック「当然だろう?ティナはみんなのママなんだ。そして俺にとっては命より大切な奥さんだ!」

ティナは頬を赤くした。

ティナ「この髪飾り、とっても嬉しかったわ。ありがとう。でも…それなら私も考えなくちゃいけないわね」
ロック「何を?」
ティナ「だって来月はロックの誕生日じゃないの!」
ロック「ああっ!そうだった!」
ティナ「ロックは誕生日プレゼント、何が欲しい?」
ロック「俺は…君と1日中一緒に過ごせればそれでいいよ」
ティナ「それ、私が朝言ったことと同じね」
ロック「そうだな」

2人はお互い笑い合った。

ロック「ティナ、え、と、あ、その、……………そろそろ寝ようか?」

ロックがそう言った瞬間ティナは真っ赤になる。結婚して数カ月経つと言うのにまだティナは夫婦の営みに慣れていないようだ。そしてロックも言いだすのを未だに恥ずかしがっていた。

ティナ「そ、そうね」
ロック「ティナ…愛している…この世の誰よりも君を…!!」

そう言いながらロックはティナを抱き寄せる。

ティナ「ああ…ロック…私もよ…」
ロック「ティナ…」

こうして夜の帳が下り、新婚冷めやらぬ夫婦は寝室のベッドへ入った。





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