ティナの誕生日から2週間、暦は11月になった。

ティナ「もう11月ね。今月はロックの誕生日だわ。何をあげようかしら?」
「ティナママー僕達も一緒にロックパパのプレゼント考えるー」
ティナ「あらあらあなた達」
「ロックパパが好きなものと言えば何かなあ?」
「バンダナ大切にしてるよ」
ティナ「そうね。そろそろ新しいのを買ってあげた方がいいかしら?」
「ティナママのプレゼントはそれで決定だねー。それじゃ僕達は何をあげよう?」

ロックの好きなもの・・・・・・・・・・

「ロックパパは地図が大好きだよね」
「とれじゃーはんたーってやつをやってた時、お宝の地図を見て探しに行くのが好きだったもんね」
「よーし!それじゃ僕達も地図を作ってあげよう!」
「どうやって?」
「紙に何でもいいから書くんだよ!島とか、大陸とか、海とか」
「よーし!僕だけの地図を作ってロックパパに見せてやる!」
「僕の地図は真ん中におっきな山があるんだ!」
「僕はおっきな島だ!で、こっちにお城があって…」
ティナ「あらあら…」

ティナは呆れながら子供達を眺めていた。彼らは実際には存在しない、彼らが作りだした架空の地図を作ってロックにプレゼントしようとしているのだ。子供ながらの独創的な発想に、ティナは感心すると共に果たしてロックはどんな顔をするだろうと思った。





今度はティナと子供達がこっそりと誕生日ケーキとパーティーのご馳走を作り、打ち合わせをし、とうとうロックの誕生日がやってきた。

ロック「…ん…」
ティナ「ロック、おはよう。そろそろ起きて」
ロック「う〜ん、…朝…か」

ロックが起きるとティナは既に身支度を整えていた。

ティナ「ロック、お誕生日おめでとう!」

ティナは満面の笑みでロックの誕生日を祝福した。手には町で買った新しいバンダナを持って。

ロック「ティナ!」

ロックは飛び起きて感激し、ティナにキスを浴びせた。

ティナ「ロ、ロックったら、朝から、恥ずかしいわ!」
ロック「ティナ、愛してる!」

ロックはティナを思いっきり抱きしめた。

ティナ「もう、ロックったら。はい、誕生日のプレゼント。新しいバンダナよ」
ロック「ありがとう。でも俺は君の笑顔さえ見られればもうそれだけで十分だよ。その上新しいバンダナまでくれるなんて!」
ティナ「大袈裟ねえ。今度は私が子供達と誕生パーティーの打ち合わせしてあるの。ねえ、早く身支度を整えて。行きましょう」





「ロックパパー!お誕生日おめでとうーーーーー!!!!!」

ロックを待っていたのは純粋な可愛らしい顔をした子供達だった。

「僕達ね〜がんばってロックパパの好きなもの作ったんだよ〜」
ロック「ケーキやお菓子か?」
「違う、パパの好きな地図!」
ロック「え?地図!?俺はこの世界の地図なら全部持ってるぜ」
ティナ「ロック、この子達は自分が考えた架空の世界の地図を作って、あなたを喜ばせようとしているのよ。あなたは地図が好きだから、喜ぶだろうって」


ロックは理解するのに暫しの時間を要したが、子供達が意図したことがわかると、大喜びでたくさんの地図を受け取った。
その中で1人だけロックに地図を渡そうとしない子供がいた。見ると後ろ手で何か隠し持っているようである。

ロック「おまえのプレゼントは地図じゃないのか?」
「ロックパパ…僕のプレゼントはこれだよ!」

そう言うとその子供はキノコを取り出した。

「ジャーン!マツタケだい!ロックパパも食べ物好き嫌いしちゃいけないよ。だからまずこの高くておいしいマツタケから食べる練習するんだ!嫌いなものを好きにしてあげる、これが僕からロックパパへのプレゼントだい!」

ロックは一瞬固まった。

ロック「お、おまえ…そんな高価なものどこから…」
「この間ママと一緒にキノコ狩りに行った時に見つけてとっておいたんだい!」
ロック「・・・・・・・・・・」
「ロックパパ良かったね。地図以外のプレゼントも貰えて」
ティナ「そうよ。明日とってもおいしいマツタケご飯作ってあげるから、みんなで食べましょう?」

ロックはしばらく硬直していたが、やがてあきらめたような表情になった。

ロック「仕方がないな。ティナもああ言うし、今度挑戦してみることにするよ」




その後パーティーが始まり、皆でロックの誕生日を祝ったが、昼過ぎになると、ロックはティナと2人きりになりたいと言いだした。子供達はからかうような無粋な真似はせず、大人しく昼寝を始めた。

ロック「ティナ…外へ出ないか?」
ティナ「どこか行きたいところがあるの?」
ロック「ああ」

ティナがロックに黙ってついていくと、そこはいつもロックが昼寝をしているお気に入りの場所だった。

ロック「ティナ、初めて俺がここで昼寝をした時のことを覚えているか?」
ティナ「ええ。あの時のあなたはとっても傷ついていて…それでも少しずつ元気を取り戻していって…私はクッキーを焼いて一緒に食べようと思ってここへ来たわ。でもあなたはとても気持ちよさそうに眠っていたから…」
ロック「あ、あのさ、ティナ」

ロックは急に照れくさそうな顔をした。

ロック「あの時みたいに…その…ひ ざ ま く ら…してくれないかな…?」
ティナ「えっ?でもあの時あなたは大人はそんなことしないって言ったわ」
ロック「ごめん、あれ、実は嘘だったんだよ。俺、あの時本当に恥ずかしくて、ドキドキして…」
ティナ「いいわ」
ロック「えっ?」
ティナ「今日はロックの誕生日だから、あなたの言うこと何でも聞くわ」

ロックは思わず赤面してしまった。

久しぶりのティナの膝枕。母性に溢れたティナの優しさに包みこまれて、とても安らいだ気持ちになる。この時だけは子供の頃に戻って、ロックはティナの膝に頭を横たえた。とても清楚ないい香りに包まれて、ロックは子供の心境に帰った。





ティナとロックが孤児院に帰ると再び誕生パーティーの続きが始まり、その日はティナの誕生日と同じく皆で楽しく過ごした。





その夜――

ロック「ティナ、今日は本当にありがとう。嬉しかったよ。幸せすぎてどうしたらいいのかわからないくらいだ」
ティナ「ロックったら大袈裟ねえ」
ロック「――あ!
ティナ「どうしたの?」
ロック「来月はクリスマスじゃないか!ああっ!そんな!先月あれほど悩んでティナへのプレゼントを考えたばっかりなのに!!!!!」
ティナ「そんなにプレゼントにこだわることないわ。クリスマスケーキを作って、みんなで祝えばいいじゃない。それに今度プレゼントするのは私達から子供たちへよ。みんなサンタさんを信じてるんだから」
ロック「そ、そうか。俺達は夫婦だけど、それと同時にあの子達の親でもあるんだからな」

ロックは頭をかいた。

ティナ「とにかく、今日はもう寝ましょう。クリスマスのことはこれから考えればいいじゃない」
ロック「そうだな。あ、え、と、その、ティナ、それじゃ、寝ようか」
ティナ「ええ」
ロック「愛してるよ、ティナ」
ティナ「ロック、私もよ」

2人はお互い厚い口づけを交わすと、そっとベッドにもぐりこんだ。





愛し合う新婚の夫婦の愛は冷めることなく、むしろさらに熱く、激しく、相手を求め、2人の愛のかたちを紡ぎ続ける。





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