時は流れ、12月になった。世界中のそこここでクリスマスの準備が始まる。ティナとロックの経営しているモブリズの孤児院も例外ではない。ティナとロックは町に買いだしに出て、クリスマスの準備を始めた。孤児院では子供達がパーティーの準備をしていかにも楽しそうである。

ロック「ふーっ、それにしても、10月はティナの誕生日、11月は俺の誕生日、12月はクリスマス、3か月連続ケーキが食べられて、パーティーでいろんなご馳走が食べられて、子供達はさぞかし喜んでいるだろうなあ」
ティナ「そうね。私達の誕生日とクリスマスが連続しているのは偶然だけれど、みんな1回1回のパーティーでとっても楽しんでいるわ」
ロック「子供達の料理の腕、いつの間にか上がってるな。ケーキもご馳走もみんな手作りだけど、どれもうまいし」
ティナ「私やカタリーナがちゃんと教えているもの」
ロック「それにパーティーの飾り付けもうまくなったな。みんな手先が器用になった」
ティナ「それはロックのおかげかしらね」
ロック「いや、みんなのおかげだよ」

ティナとロックは買った荷物を持ったまま、しばらく町を歩いていた。

ロック「ところでティナ、肝心のサンタさんだが………本当にアイツでいいのか?」
ティナ「あら、いやならロックがやる?」
ロック「いや、それはちょっと…」
ティナ「子供達はみんなサンタさんを信じてるのよ。正体がばれて、それがロックだったらがっかりするわ」
ロック「その点アイツなら大丈夫か…もともと正体不明だしな」

ティナもロックもお互いのプレゼントについては触れない。実は2人共、既に用意してあるのだ。しかし肝心の相手には当日まで悟られまいとわざと話題を避けている。





そんなことをしている間にとうとうクリスマス・イヴはやってきた。


Merry Christmas!!!!!


パーン! パパーン!!


子供達が次々とクラッカーを鳴らす。そしてパーティーが始まり、様々なクリスマス・ソングを歌ったりした。ティナとロックはその様子を微笑ましく見ていた。

「ねえティナママー、サンタさんまだー?」
ティナ「みんながいい子にしていれば、もうすぐ来るわよ」
「わーい!プレゼント楽しみだ―!」
ロック(…………来たな)

ロックは元泥棒――もとい、トレジャーハンターなだけあって、人の気配には敏感である。家に侵入者が来ればすぐにわかる。そして、『アイツ』が来たことがわかったのだ。

ロック(…………………………)

どうやら『アイツ』は言い伝え通り屋根に上って煙突から入る気のようだ。なかなか苦戦しているようである。


「どわあああああーーーーー!!!!!」


どっしーーーん!!!!!


「あれ〜?ティナママー誰かが落ちてきて暖炉の中にいるみたいだよ〜」
ティナ「もう、ゴゴったら」
ゴゴ「あちちちちちち!」
ティナ「言い伝え通りに煙突から入らなくても我が家は歓迎しますわよ?サンタクロースさん?」
「ええっ?じゃあこのまっ黒けなおじさんがサンタさん!?」
ティナ「そうよ」
ゴゴ「え〜、オホン。みんないい子にしとったかね〜良い子にしとらんとプレゼントはあげないぞ〜」
「僕、ちゃんといい子にしてたもん!」
「私だって!」
「サンタさーん、プレゼントちょうだいよー!」
ゴゴ「これこれ、そう、急かすんじゃない。そうら、みんなへのプレゼントじゃ!」

そう言うと、サンタ(ゴゴ)はキャンディーをいっぱい投げ、お菓子の雨を降らせた。子供達は大喜びで受け取ったり拾ったりする。そして、あらかじめティナが聞いておいた子供達の欲しいものをゴゴは順番に渡し始めた。

「わーい、サンタさん、ありがとう!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
ゴゴ「いやあ〜そんなに感謝されると照れるなあ〜」
ロック「ゴゴ…いや、サンタさん、どうもごくろうさん」
ゴゴ「久しぶりだな、ロック――おっと、もごもご、そうじゃない、ロックの旦那、ご依頼通り子供達にプレゼントは届けましたぞ」
ロック「どうする?久しぶりだから今夜は泊っていくか?」
ゴゴ「いやいやいやいや、役目が終わったら退散するのがサンタってもの――」
「えー!サンタさん、今夜ウチに泊まってくれるのー!?」
「わーい!ねえ、サンタさん、僕達と一緒に遊んでよー!」
「遊んでよー」
「遊んで!」
「遊んで!」

ティナ「あらあら…ロックの一言で困ったことになっちゃったわね。どうする?ゴゴ――サンタクロースさん?」
ゴゴ「いやあ〜大好きな子供達にこんなに囲まれちゃあ断れないのう。仕方がない、今夜はここに泊って行くよ」
「うわ〜い!サンタさんが今夜ウチに泊ってくれるって。それまで僕達と遊んでくれるって!」
「わ〜い!」
「わ〜い!」
「あ、でもさ、サンタさんって世界中の子供達にプレゼント届けるんじゃなかったっけ?」
ゴゴ「チッチッチッ、キミ達、世界中に一体何人の子供がいると思っているんだい?サンタは1人じゃないのだよ」
「へえ〜そうなんだ〜」
「ねえ〜サンタさ〜ん、やっぱりトナカイの(そり)できたの?見せて〜」
ゴゴ「あ、それはだな…ごにょごにょ」

ゴゴは適当に誤魔化した。





かくしてモブリズの孤児院のクリスマスパーティーは最高に盛り上がったのだった。ティナとロックは久しぶりにかつての仲間であるゴゴとも話をしようと思ったが、子供達に占領されてしまった。ゴゴは子供達の部屋で子供達と一緒に寝てしまった。

ロック「最初はどうなることかと思ったけど…ゴゴのおかげで随分楽しいクリスマスになったな」
ティナ「ええ、そうね。でもゴゴったら、これからもずっとサンタ役をするつもりなのかしら?」
ロック「どのみちあいつは正体不明だし…まあ、先のことはまたいずれ考えよう。それよりティナ、俺からのプレゼントだ」
ティナ「まあ、何かしら?」

ティナが包みを開けると、そこにはマフラーと手袋が入っていた。

ティナ「あら、私もちょうどあなたに手編みのセーターをプレゼントするところだったのよ」

そういうとティナはセーターを出す。

ロック「あちゃー、今回はお互い似たものになっちまったな」
ティナ「でも嬉しいわ。私、ロックからもらったものはとても大切にするから」
ロック「も、もちろん俺だって!ティナがせっかく編んでくれたんだ。ちゃんと大切に着るよ!」

ティナとロックはしばらく見つめ合った。

ロック「…なあ、ティナ、これから俺達は大人のクリスマス・イヴを迎えないか?」

それにティナは真っ赤になった顔で、無言で頷いた。

ティナとロックは抱き合い、厚い口づけを何度も交わした後、ベッドへ踊り込んだ。





聖夜の最中、真に愛し合う2人の男女は夫婦だけの神聖な行為を行う。





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