ティナとロックが結婚し、お互いの誕生日とクリスマスを過ごした後、無事年は明けた。今は真冬である。しんしんと雪が降る。ティナは部屋の窓から外を見つめていた。

ロック「ティナ、どうしたんだい?」
ティナ「こうして雪を見ていると思いだすの。あなたと初めて会った時のこと」
ロック「…ああ…」
ティナ「あの時の私は操りの輪を外されたばかりで、何もわからなくて不安だらけだった。……あの時もナルシェには雪が降っていて、積もっていたわね」
ロック「ああ…そうだな…あれからいろんなことがあったけど、俺のティナに対する気持ちは変わらないよ。いや、前よりずっと強くなってる。たとえどんなことがあってもティナを守る!!!!!って」
ティナ「ロック…嬉しいわ。私、あなたと結ばれて、本当に幸せよ」

ロックは一気に真っ赤になった。

ロック「ティ、ティナ!いくら2人きりだからって…は、恥ずかしいなあ」
ティナ「あら、私だって…夜はとっても恥ずかしいわ」

そういうとティナは頬を赤く染めた。結婚してから半年以上経つというのに未だに恥じらいを見せるティナを見ていると、ロックは冷静さを失いそうになる。実際、ティナが愛しくて愛しくてたまらないのだ。毎晩、その想いを思い切りぶつけて愛し合ってもまだ足りない程。
ロックはティナを溺愛していた。ティナに何か悪いことがあったら到底耐えられない。ロックはまさに完璧な愛妻家だった。

ティナ「ねえ、ちょっと外へ出てみない?」
ロック「いいけど、冷えるからあんまり長い間は駄目だぞ」
ティナ「ふふ、ロックったら」





外に出ると綺麗な雪景色が見える。そして手のひらを上に向ければちらちらと雪の破片がゆっくりと落ちてくる。

ティナ「綺麗な雪」
ロック「明日には積もるだろうな。子供達は雪だるま作ったり雪合戦して遊ぶんだろうな」
ティナ「霜焼けがひどくてストーブから離れない子もいるけどね」

2人はしばらく黙ったまま雪景色を見ていた。

ティナ「ねえ、ロック」
ロック「なんだい?」
ティナ「あのね、一生に一度も喧嘩しない夫婦なんていないと思うの」
ロック「いきなり何を言い出すんだ!」
ティナ「だって夫婦だもの。ちょっとしたことがきっかけで想いがすれ違うこともあるわ。でも」

ティナは手のひらに落ちた雪をロックに見せる。

ティナ「もし私達の想いがすれ違ったり離れてしまうような時があったら、この雪景色を思い出して。そして、私達が初めて出会った時も」
ロック「ティナ…」
ティナ「私にとって雪は特別な想い出。私とあなたが出会った時、降っていた雪。決して忘れられないもの。不安だらけの私を勇気づけて孤独の中から連れていってくれたのは、あなた」

ティナは暫し手のひらの雪に見入っていたが、ふいにロックの方へ向き直った。

ティナ「ロック、愛しているわ。こんなありきたりの言葉だけじゃ足りないくらい。本当に、とても、とても、愛しているわ」
ロック「ティナ!!!!!俺だって!愛してる!ティナがいない世界なんて想像できない!もしそんなことが起きたら俺は狂ってしまうかもしれない!」

そう言うと、ロックは思わずティナを強く、激しく抱きしめた。

ロック「ティナ!どこにも行かないでくれ!俺から離れないでくれ!今までは散々ろくでもない男だった俺だけど、でも、精一杯努力するから!――守るから。俺が絶対に守るから。どんなことがあっても絶対にティナを守って見せる!心も身体も!」
ティナ「ロック…」
ロック「だから喧嘩するかもしれないとか、すれ違うとか、そんな話はやめてくれ!俺はティナの気持ちが自分から離れていったらと思うとそれだけで気が狂いそうだ!――離れないでくれ…愛してるんだ…絶対に守ってみせるから…」
ティナ「ロック、ごめんなさい。ちょっと昔のことを思い出して、いろいろ不安になってしまったの。でも、私のあなたに対する気持ちは永遠に変わらないわ――そう――愛している、愛しているわ」
ロック「ティナ!」
ティナ「不安にさせてしまってごめんなさい。ただ、夫婦の間にはいろいろあるって雑誌にも書いてあったし、人からも聞いたし、ロックだって昔――だから――」

ティナはロックに抱きつき、キスをした。

ティナ「もう、戻りましょう。だんだん冷えてきたわ。私はただ、どんなことがあってもあなたを愛し続ける――雪を見るたびにあなたと初めて出会ったことを思い出す――雪は私にとって特別な想い出――それを伝えたかっただけ」
ロック「あ……お、俺こそ、ごめんな。いきなり感情的になっちまって。俺は本当にティナを愛しているんだ。俺も、どんなことがあってもティナを愛し、守り続けるよ」
ティナ「ロック……」
ロック「ティナ……」





雪がちらつく冬の最中、2人の夫婦は寒さに負けない程、激しく抱き合い熱い口づけを交わし合った。





それは、ある雪の日の出来事である。





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