それからしばらく後、エドガーがモブリズの村に訪ねてきた。タキシード姿にバラの花束を持っている。その様子から、ロックはエドガーがティナに求婚しに来たということを察した。

エドガー「久しぶりだな、ロック」
ロック「ああ…その格好、おまえ、ティナにプロポーズする気なのか?」
エドガー「当然だよ。今まで世界中を旅していたが、彼女ほど美しいレディはいないからね」
ロック「……………」
エドガー「ロック、何か言いたそうだな。だが、君に私とティナの関係を邪魔する権利があるのかね?」
ロック「…ッ!それは…!」
エドガー「愛する女性を幸せにできない君にティナはふさわしくない。彼女は私がいただく」
ロック「エドガー!!」

ロックが叫ぶと孤児院の中から子供達が出てきた。

「あ、エドガーおじちゃんだ!」

純粋無垢な子供の辛辣な呼び方にエドガーは一気にショックを受けた。

エドガー「お、おじちゃん!?私はまだ29歳だよ、坊や」
子供「なんだ、やっぱりおじちゃんじゃん」
ロック「…そういえば俺ももう27になったんだよな〜そろそろ『おじちゃん』って呼ばれる覚悟しておかないと」
エドガー「おじちゃんおじちゃんうるさいぞ!」
子供「だっておじちゃんじゃん、ねーおじちゃんおじちゃん!!」

可愛らしい天使のような姿をした小悪魔達にからかわれながら、エドガーはなんとか気を取り直してティナにプロポーズをしようとする。

エドガー「と、とにかく!私はティナに求婚に来たんだ!ティナに会わせてくれ!」
子供「球根?わかったよ〜こっち来て〜」





子供「ティナママ〜!エドガーおじちゃんが球根持ってきたよ〜」
エドガー(ぎゃああああ!!)

エドガーは内心叫びたい気持ちでいっぱいだった。

エドガー(せっかく服装もバッチリ決めて愛しのティナにプロポーズしようというのに、これでは私のエレガンスな雰囲気も台無しではないか!!)

ティナ「あら、エドガー久しぶりね」

エドガーは暫しティナの姿に魅入っていた。それに対しティナは怪訝そうな表情をする。

ティナ「…どうしたの?」
エドガー「ティナ、今までにも増して綺麗になったね。思わず見とれてしまったよ」
ティナ「それで何の球根を持ってきたの?」
エドガー「…ティナ、子供が勘違いをしたんだよ。私はティナにバラの花束を持ってきたんだ」
ティナ「とても綺麗ね」
エドガー「君ほどじゃないよ。それよりティナ、これから2人きりで話せないかい?大事な話があるんだ」
ティナ「いいわ。こっちへ来て」



ティナ「話ってなあに?」

ティナがそう言うと、エドガーは跪いてティナの手の甲にキスをした。

エドガー「ティナ………単刀直入に言おう!私と結婚してくれないか?」
ティナ「エ、エドガー!?」
エドガー「初めて会った頃からずっと君が好きだった。今の私には君以外の女性なんて全く目に入らない。毎日君のことで頭がいっぱいなんだ。…私の全身全霊を込めて君を愛する。幸せにする。だから、どうか私と結婚していただきたい」

ティナはしばらく呆然とエドガーを見つめていた。エドガーは真摯な眼差しでそれに応える。

ティナ「エドガー、ごめんなさい。私、ロックの側にいてあげたいの」
エドガー「!!ティナ!ロックは愛する女性も幸せにできない男だ。彼と共にいても君は幸せになれない」
ティナ「そんなことないわ。だってロックがここへ来てから、私、毎日とっても幸せだもの」
エドガー「何だって!?」
ティナ「ロックが好きな食べ物を作ったり、毎日ロックの世話をして、ロックが少しずつ元気になっていくだけで私は幸せなの」
エドガー「ティナ…」
ティナ「ねえ、それよりロックとセリスはどうして別れちゃったのか知らない?」
エドガー「…ティナ、それは夫婦の間での問題だよ。他人が立ち入るべきじゃない」
ティナ「そう…じゃあセリスは今どうしてるか知らない?セリスが何らかの形で幸せにならないと、ロックは元気にならないと思うの」

エドガー(ティナ…君は残酷だね…私はこんなに君を愛しているというのに、君はロックしか見えていない…)

ティナ「エドガー、セリスのこと知らない?」
エドガー「知らないよ。すまないね」

エドガーは嘘をついた。





ロック「エドガー…その顔は失敗したって顔だな…」
エドガー「ロック!おまえという奴は…!」
ロック「何だよ。やるのか?」
エドガー「…仮にも紳士たるもの、喧嘩はしないものだよ…どうやらティナはおまえが好きらしい」
ロック「…!!」
エドガー「それでティナが幸せだというのなら、私は身を引こう。しかし――!」

エドガーはロックの胸倉をつかんだ。

エドガー「ロック、ティナを不幸にしたら許さない!!」

それだけ言うと、エドガーは去っていった。

ロック「ティナ…」





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