ロックとセリス。一度結婚して結ばれたこの2人は約1年で破局を迎えた。ロックはティナの元へ転がり込み、一方、セリスはセッツァーの元へ転がり込んでいた。

ケフカを倒し、仲間をそれぞれの居場所へ送り届けた後、セッツァーは飛空挺ファルコン号で気の向くままに世界を回っていた。そんな中、ある日、セリスがやってきたのである。彼女はロックと別れたことを話すと、そのまま飛空挺に居ついてしまった。それ以来、セリスは酒ばかり飲んでいた。

セッツァー「セリス、また真昼間から酒か?」
セリス「…別にいいじゃない。私のことは放っておいてよ」
セッツァー「人のウチに転がり込んで、人の酒を飲んでその言い草かよ」
セリス「…」
セッツァー「何があったのかは知らねえけどよ、ま、おまえも大切な仲間の1人だ。好きなだけここにいていいぜ」
セリス「……………」

セリスはグラスをテーブルの上に置くと、セッツァーの方を見た。

セリス「セッツァー……………私を抱こうとは思わないの?」
セッツァー「…いきなり何言ってんだ」
セリス「だって、初めて会った時、私を自分の女にしようとしたでしょ?」
セッツァー「あのオペラ座でのことか」
セリス「…そうよ。…セッツァー…私が欲しくはないの?」
セッツァー「…あいにく、自暴自棄になってる女を抱くほど安っぽい男じゃないんでね、俺は」

そう言うと、セッツァーは部屋から出て行った。





セリス・シェール。今は無きガストラ帝国の天才教育によって人工的に生み出されたルーンナイト。まだ年端もいかぬ少女であるにもかかわらず数多の戦いを経験し、その結果はいつも勝利、勝利、勝利。いつしか、彼女は常勝将軍と呼ばれるようになった。
しかし、帝国のやり方に反発した彼女は裏切り者として地下牢に投獄される。そのまま死刑を待つ身だった彼女を死の淵から救い上げたのがロックだった。
その後、様々な出来事があり、ケフカにより世界は崩壊した。意識を取り戻した彼女の側にいたのは、昔から実の娘のように可愛がってくれたシド博士だった。
シドとの暮らしは彼女にささやかな幸せをもたらした。しかしそれは長くは続かず、しばらくしてシドは息を引き取った。

海に囲まれた孤島にただ1人残されたセリスは絶望し、身投げをするが、幸いにも彼女は生きていた。そしてそんな彼女に再び生きる希望を与えたのが怪我をした鳥に巻かれていたバンダナである。それはかつてロックが愛用していたものだった。
セリスにとって、死の淵から、絶望から救いだしてくれるのはいつもロックの存在であった。
ケフカを倒し、世界に平和が戻った後、2人は結婚した。セリスはこの上なく幸せだった。新婚の、甘い、甘いひと時。こんなに幸せでいいのだろうか。この幸せがずっと続くと思うと――
セリスの心は幸福感で満ち満ちていた。
しかし――2人の間柄は長くは続かなかった。

今のセリスの心を支配しているのは深く、深く傷つけられた痛み、怒り、悲しみ。セリスはテーブルの上に突っ伏して涙を流し始めた。そして、小声で歌いだす。


愛しの 貴方は 遠いところへ

色褪せぬ 永久の愛 誓ったばかりに

悲しい 時にも 辛い 時にも

空に降る あの星を 貴方と 思い

望まぬ 契りを 交わすのですか?

どうすれば ねえ貴方

言葉を待つ


今でもまだ覚えている、オペラ座での歌。その歌詞にロックと己の関係を重ね合わせてセリスは1人涙を流す。





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