セリスは相変わらずセッツァーの元に同居し、傷ついた心の痛みに悲しんでいた。そこに正装して薔薇の花束を持ったエドガーが訪ねてくる。それを見て、セリスは一目で、エドガーが自分にプロポーズするつもりだということを察した。

エドガー「やあ、セリス。調子はどうだい?」
セリス「エドガー………あなた、ティナにふられたのね」
エドガー「いきなり何を言っているんだい?マイレディ?私の妃にふさわしいのは君だよ、セリス」
セリス「嘘吐き!あなたが前からティナのことが好きだったのは知っているのよ!」
エドガー「もちろん、ティナのことは好きだよ。かけがえのない仲間としてね」

そう言うと、エドガーはセリスの手を取り、手の甲に口づけた。

エドガー「セリス。私はロックとは違う。君を幸せにしてやれるよ。だから、どうか私と結婚していただきたい」
セリス「どこが違うのかしら?私に求愛しておきながら頭の中では他の女のことを考えているんでしょう?」
エドガー「まさか。今の私には君しか見えない。君の為なら何でもしよう。他のレディ達を口説くのも、もうやめる。だから、どうか私の妃になって欲しい」
セリス「嫌よ!」

セリスはエドガーの手を振り払い、ばんっとテーブルを叩いて立ちあがった。

セリス「あなたの行動はお見通しよ!ティナにふられたから私にプロポーズしに来たんでしょう!ティナが1番で私は第2希望なんでしょ!隠したってわかるわよ!1番好きなティナにふられて、ちょうど良く私がロックと別れて1人身だから言い寄って来たんでしょう!」
エドガー「そんなことはない。私は前から君を――」
セリス「何よ!私とロックが両想いだって知ってても平気で口説いてきた癖に!そんな節操のない男なんかごめんだわ!出ていって!」
エドガー「セ、セリス!!」

セリスは涙を湛えながら部屋を出ていった。

セッツァー「お〜やおや、せっかくプロポーズしに来たのに、見事ふられちまったなあ、王様よ?」
エドガー「私としたことがレディを泣かせてしまうとはな」
セッツァー「でも図星だろ?あんたはいつだってティナ一筋だった。うまく隠そうとしてたみたいだけど、俺にゃバレバレだぜ。あんた、女好きだけど本気になるとわかりやすいんだよ。で、ティナの元には今ロックがいる。ライバル登場だ。そしてティナにプロポーズしたがふられたから今度はセリスの元へ来たってわけだ」
エドガー「そう言うが、セッツァー、私もそろそろ妃を娶らなければならない年頃なのだよ」
セッツァー「ティナがダメならセリス、ってか?そりゃあいつも怒るぜ」
エドガー「私にはセリスを幸せにしてやれる十分な自信があったのだがな…仕方がない。国内のレディ達から妃を選ぶことにするよ」

エドガーはさすがに暗い面持ちで去っていった。


セッツァー「さてと。セリスはどこに行ったんだ?」

セッツァーは飛空挺ファルコン号の中をセリスを探して回った。セリスがいたのは飛空挺の中でも最も薄暗い所だった。

セッツァー「セリス、そんなところで何してるんだ」
セリス「………」
セッツァー「エドガーならあきらめて帰ったぜ」
セリス「……私は何の為に存在するの?」
セッツァー「あ?」
セリス「セッツァー、私とロックの間に何があったか教えてあげましょうか」

セリスは急に挑戦的な態度になった。

セッツァー「おまえが話したければ、いくらでも聞いてやるよ」
セリス「私は彼と結婚して幸せだったわ。こんなにも幸せでいいのかしらって思ったくらい。でもそれは幻だったの」
セッツァー「浮気でもされたのか?」
セリス「その方がまだマシよ!」

セリスは話しながら壁に近づいて行く。

セリス「ある夜、私達はいつものように抱き合って寝ていたわ。でも私は途中で目が覚めて…あの人はまだ眠っていて…寝言を言っていたの。『レイチェル、愛している、結婚してくれ』ってね。私を抱きながらそんなことを言ったのよ!!あの男は!!!目が覚めてから彼は何度も謝った。でも私はどうしても許せなかったわ。それから何もかもがうまくいかなくなった。しょせん、あの人にとって私はレイチェルという女性の代わりなのよ。そう、いつだって私は誰かの代わり。ロックにとって私はレイチェルの代わり。セッツァー、あなたにとってはオペラ座のマリアさんの代わり、そしてエドガーにとっては私はティナの代わり、いえ、第2希望だわ。私はいつだって誰かの代わり。この私、セリス・シェールを愛してくれる人は誰もいないのよ!!!!!」

そう言うと、セリスは堰を切ったように泣き出した。

セッツァー「セリス、落ち着け。確かに俺は最初マリア目当てでオペラ座にちょっかいを出した。だがおまえを見たら、マリアより美人なおまえをみたら、今度はおまえが欲しくなったんだぜ。覚えているか?」
セリス「要は美人なら誰でもいいんでしょ!」

セリスは容赦なく痛いところをつく。セッツァーは図星なのもあって一瞬ひるんだ。

セッツァー「だけど…じゃあ、おまえはどうして俺のところに来た?」
セリス「別に…他に行くところがなかったからよ。特に深い意味なんてないわ」
セッツァー「他の仲間達の元へ行くことだってできただろう?何故俺を選んだ?」
セリス「…ただ…飛空挺に乗ってれば気晴らしになると思っただけよ!」
セッツァー「そんな見え透いた嘘はこの俺には通じねえぜ」

セッツァーはセリスに近づくと、抱き寄せ、口づけをした。

セリス「…!!やめてっ!」

パシッ

セリスの平手打ちが飛ぶ。

セッツァー「なんだよ。この間は誘ってきた癖に。…なあ、おい、おまえ。そんなに男が嫌なら1人で生きていったっていいんだぞ?」
セリス「!?」
セッツァー「それとも他に男を探すか?おまえは美人だからさぞかしたくさんの男共が言い寄ってくるだろうよ」
セリス「…嫌…私を外見でしか判断しない男達なんて…」
セッツァー「なら1人で生きていくか?」
セリス「……嫌……1人は嫌なの……」
セッツァー「どっちみち元帝国の女将軍のおまえとうまくやっていける男なんざ、そう簡単にゃみつからねえよ」
セリス「……………」
セッツァー「セリス、もう1度聞く。何故俺のところに来た?」
セリス「……………」
セッツァー「おまえと同居し始めてからもう結構な時間が経ってる。男と女が1つ屋根の下で同居して、いつまでも何でもない関係でいられると思うか?おまえの方からここへ来たんだ。俺は…俺に都合のいい解釈をさせてもらうぜ?」

セリスは傍目にもわかるくらい混乱して取り乱し始めた。

セリス「やめて…やめてやめて!!1人にして!お願い!!」

セリスは必死に首を横に振ると、飛空挺内の自分の部屋へ駈け出して行った。

セッツァー「…ふう…またもう少し様子をみるか…」

残されたセッツァーは1人ため息をついた。





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