ロックの心の中には3人の女性が住みついている。1人はレイチェル、もう1人はセリス、そしてもう1人は――ティナ。
ロックの3人の女性に対する想いは常に揺れ動き、一つ所に留まることを知らない。
最初、ロックにとって最も大切な女性はレイチェルであった。その執着力はすごく、彼女が亡くなった後も特殊な薬で遺体をそのまま保存し、魂を呼び戻すことができるという秘宝を求め、リターナーに所属しながらもトレジャーハンティングを行っていた。
そんな彼がある日出会ったのは記憶を失った魔導の力を持つという娘――ティナ。記憶を失っており、不安に怯える彼女を見てロックはレイチェルを思い出した。

ロック「記憶をなくした……安心しろ。俺が必ず守ってやる。必ずだ!!俺は……見捨てたりしない……必ず守ってやる!!」

その後、ティナを気遣いながらエドガー、マッシュと合流し、リターナー本部へと行く。
次に、帝国に占領されたサウスフィガロの地下牢で、ロックはセリスと出会う。そのセリスの様子に、ティナとはまた別の面でレイチェルを思い出させるものがあった。そこで彼が言った言葉は、

ロック「守る!俺が守ってみせる!行くぞ!」
ロック「似てるんだ……いや、何でもない。俺自身の為さ」

ロックにとって、レイチェルを守れなかったことは相当のトラウマであった。ティナもセリスも、守ってやりたかった。それぞれ異なる面でレイチェルを思い出させる2人の女性、ティナとセリス。レイチェルが己の全てと言っても過言ではない程執着していたロックの心は、新たに出会った2人の女性により揺れ動き始める。
ナルシェに合流後、セリスの姿を見たカイエンはセリスに斬りかかろうとする。

ロック「俺はこいつを守ると約束した。俺は一度守るといった女を、けっして見捨てたりはしない!!」

ティナが幻獣の姿になって暴走後、

ロック「早く行こう!俺は守ると約束したんだ!」

そして、コーリンゲンのレイチェルの家で過去を回想する。2人の女性を守ると約束しておき、尚且つレイチェルを蘇らせる秘宝を求めている彼は、己のの中の矛盾に気付きつつも、3人の女性に対する想いで揺れ動き続けていた。そして、その想いは徐々にセリスに向かって大きく傾き始めた。オペラ劇場での出来事。セッツァーとの出会いで起きたセリスの賭け。帝国での出来事。アルブルグからサマサへの船旅。ティナを気にかけつつセリスへの想いは深まる一方で。しかし、その後、ケフカにより、世界は崩壊した。ティナともセリスとも離れ離れになったロックが始めたのは、レイチェルを蘇らせる為の秘宝探しだった。

ロック「俺はレイチェルを守ってやれなかった…真実をなくしてしまったんだ…だから、それを取り戻すまで俺にとって本当の事は何もない…」

ロックはレイチェルへの想いを振り切れなかった。だからこそ、秘宝を求めた。結果、フェニックスの秘宝によりレイチェルと束の間の再会を果たした彼は、セリスを選んだ。セリスとの幸せな新婚生活。しかし甘い一時は長くは続かなくて。ある晩、レイチェルにプロポーズする夢を見たことがきっかけで、その寝言をセリスに聞かれたことがきっかけで、2人の仲はうまくいかなくなった。ロックは必死に謝り、なんとかセリスへの気持ちを伝えようとするが、セリスは何を言っても聞かなかった。そしてとうとう耐えられなくなったセリスは出ていった。

何故このようなことになったのだろう?レイチェルへの想いはもう断ち切ったはず。今はセリスを愛しているはずなのに。セリスを失った激しい喪失感。絶望。
そして、今、ロックの心は、未だ嘗てない程ティナに惹かれていた。ティナと一緒にいるだけで心が癒される。安らぎを感じる。傷ついた自分を優しく包み込んでくれるような暖かさを感じる。それだけではない。ティナを見ているだけで胸の鼓動が高くなる。ティナの美しさに見惚れてしまう。
しかし、ロックは自分に自信がなかった。ティナを愛しても、またセリスと同じような過ちを繰り返すかもしれない。ティナを傷つけることなんて到底耐えられない。

何故こうなったのだろう?自分は今、誰を愛しているのだろう?そう思うと真っ先にティナの顔が思い浮かんだ。

ロック(何故だ…何故俺はセリスを選んだ?何故ティナから離れて行った?今これほどティナを愛しく思っているのなら、何故?)

ティナを愛したい。愛し合いたい。ロックの気持ちはつのる一方であった。しかしティナだけはどうしても失いたくなかった。

レイチェル、セリス、そして――ティナ。3人の女性がロックの頭の中でくるくる回る。ロックの気持ちは常に揺れ動いていた。しかし、セリスと別れた後、時間が経てば経つほどティナのことで頭がいっぱいになっていった。

ロック(俺は……俺は……っ!)

ロックは心の内で激しく悩んだ。





マッシュ「で、本当にロックはここにいるのか?」
ティナ「ええ、そうよ。最初の頃と比べたらだいぶ明るくなったけれど…」
マッシュ「ロックとセリス…本当に別れちまったんだな…何があったかは知らないけどよ」
ティナ「私も知らないわ。でもエドガーが、それは夫婦の間だけの問題で、他人が立ち入っちゃいけないって」
マッシュ「俺も正直どうしていいかわからない。とにかく2人は別れて、ロックはティナのところに、セリスはセッツァーのところにいるってことだな」
ティナ「そうなの?」
マッシュ「ああ。兄貴から聞いたんだ。間違いない」
ティナ「セリス…会いに行けないかしら」
マッシュ「それはやめた方がいいんじゃないか?ロックがここにいると知ったらセリスは逆上するぜ、きっと」
ティナ「でも…私…セリスにも元気になって欲しいの」
マッシュ「それはセッツァーに任せようぜ。俺達みたいな奥手な人間には手に負えない問題だ。その点、兄貴やセッツァーは経験豊富だからな」
ティナ「そう…」
マッシュ「じゃあ、ロックのことは任せたぜ」
ティナ「ええ。また何かあったら教えて」
マッシュ「おう!」





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