ここは獣が原。空は快晴。上を見上げると太陽の光が眩しい。ティナはガウと一緒に日向ぼっこをしていた。
「ガウ、ここはとても暖かくて気持ちのいい場所ね」
「ガウ!ここは俺のお気に入りの場所!」
ティナとガウは仲良くおしゃべりをしていた。そのうちティナは本来の用件を切り出す。
「ねえ、ガウ、あなたは恋ってどんなものだと思う?」
「ガウー、俺、恋したことないからわからない。この間リルムに聞いてみた」
「リルムに?」
「リルムは俺と一番年が近い。リルムが知ってること教えてもらったぞ」
「それはなあに?」
「恋っていうのはドキドキするものだって!」
「そう。ドキドキ」
「それで結婚っていうのは男がタキシードっていう服着て、女がウェディングドレス着て、教会で式を挙げるんだって。それでリーンゴーンって鐘が鳴るんだって。それが結婚だって!」
「まあ、そうなの。ガウ、教えてくれてありがとう」
一方こちらは男性陣。岩陰に隠れてティナとガウの会話を盗み聞きしていた。ガウは一体どんなことを言うか気になっていたのである。
「なんだよ、恋愛結婚についての答えってあんなんでいいのかよ?」
「それじゃあ結婚っていうのは役所に行って婚姻届けを出すことだって言ってもティナは納得するわけか」
「なっ!そんな!真面目に考えて損した」
「いや、あれはガウだから許されるわけで、俺達大人の男はそういうわけにはいかないだろ」
一方、こちらはストラゴス。何やらいろんな着ぐるみを並べている。
ゴロネコスーツ、チョコボスーツ、ナッツンスーツ、ベヒーモスーツ、モーグリスーツ
そこへリルムがやってくる。
「おじいちゃん、何やってるの?」
「のう、リルム、どれを着たわしが一番可愛いかのう?ティナはモーグリが好きだからやっぱりモーグリスーツかのう?」
「は?」
「モーグリスーツを着た可愛いわしをぎゅっっっっっ!っと思いっきり抱きしめてくれるかのう?」
「おじいちゃん、バッカじゃないの!」
スパコーン!
用意したハリセンでストラゴスの頭を思いっきりぶっ叩くリルムであった。
エドガーはティナのことで真剣に悩んでいた。どうしたらティなの心を射止めることができるだろうか。
ティナは幻獣と人間のハーフ。人間的な感情に乏しい。普通の女性なら美貌を褒められたら喜ぶのだが、ティナは無反応だった。
口説きのテクニックの一つが通じない。ティナが美しさを褒められて喜ぶことなんてあるのだろうか。
エドガーがティナのことで悩んでいる頃である。ティナはゴゴから声をかけられた。
「ティナ!次はセッツァーに恋愛と結婚についての考え方を聞きに行くんだろう?」
「ええ、そうよ。セッツァーからどんな話が聞けるか、とても楽しみだわ!」
「ティナ!ティナはセッツァーのことが好きなんだろう?」
「ええ、そうよ」
「…正直だなあ、ティナは。そんなまっすぐなところがいいんだけど。それじゃあ、ティナ、これからおめかししよう!」
「おめかし?」
「女っていうのは、好きな男と会うのに目一杯おしゃれして自分を綺麗に着飾るものなんだ」
「まあ、そうなの?」
「俺と一緒にジドールの町へ行こう!俺がコーディネートしてあげるよ!」
こうして、ティナはゴゴと一緒にジドールの町へ向かった。
ゴゴと一緒に入った店ではいろんなドレスを売っていた。その中でゴゴはティナにイブニングドレスを何着か試着させてみた。
「う~ん、ティナはどれを着ても綺麗だなあ」
ティナは鏡に映った自分を見てぽかんとしていた。
「これが…私?」
「ティナ、一番気に入ったのを買ってあげるよ。セッツァーが見たらきっとびっくりするぜ!」
ティナにとってこんなことは初めてなので、戸惑いながら、もたもたしながらも自分の気に入ったイブニングドレスを選ぶ。そしてドレスに似合うアクセサリーも。靴はヒールの高い靴。ティナにとっては履き慣れていない靴である。足が窮屈だし歩きにくい。
その後、ジドールの美容院で髪を綺麗に結い上げてもらい、美しい髪飾りをつけてもらう。そして化粧。ティナは今まで化粧をしたことがない。美容院の店員さんからとても綺麗に化粧をしてもらった。ティナはまた鏡に映った自分を見てぽかんとしていた。なんだかまるで自分じゃないみたい。それに慣れないドレスを着て、化粧をしてもらって、緊張してしまう。化粧がとれては大変だと、あまり顔に触らないように気をつけてしまう。
「ティナ!すっごい綺麗だよ!さあ、その姿でセッツァーのところへGO!」
ティナは目をぱちぱちさせながらゴゴに連れられて、セッツァーのところへ向かうのだった。
セッツァーは、とうとう今度は自分の番だと思って、気合いを入れていた。ティナは純粋でまだ恋というものがどういうものかわかっていない。そんなティナの恋心を思い切って揺さぶってやろう。思いっきり自分に惚れさせてやろう。ティナのような大人しいタイプは多少強引で乱暴に口説くと効果的。セッツァーはそう思っていた。セッツァーはセッツァーで自分の頭の中で作戦会議中だった。
そこへ現れたのがドレスアップして驚くほど美しく着飾ったティナ。歩きにくそうにしているのを、隣でゴゴが支えている。
「セッツァー!ゴゴに勧められておめかししてみたの!」
セッツァーは驚きのあまり目を見開いた。しばらく呆然とティナを見つめている。
度肝を抜かれたのはセッツァーだけではない。少し離れたところから見ていたエドガーも同じだった。エドガーも呆けたようにティナに見とれている。
セッツァーはティナに嬉しそうに話しかけた。
「ティナ………驚いたな………綺麗だよ」
「本当?嬉しい!」
ティナは満面の笑みを浮かべた。それを見てエドガーはショックを受ける。自分がティナの美貌を褒めた時は無反応だったのに。セッツァーに対しては、なんとティナは自分から着飾って、セッツァーから綺麗だと言われたら本当に嬉しそうな顔をしたのだ。
ティナはセッツァーの方へ歩き出したが、ヒールの高い靴は履き慣れていないので、途中でバランスを崩してしまった。
「あっ!」
倒れそうになるティナをセッツァーがしっかりと抱き留める。
「嬉しいぜ、ティナ。俺の為にそんなにおめかししたのか」
セッツァーはティナをお姫様抱っこすると、そのまま飛空艇ファルコンの自分の部屋へ抱き上げたまま連れて行った。
ティナはどきまぎして真っ赤になったまま。セッツァーはすっかり上機嫌で自分の部屋に入って行く。
→次へ
→前へ
→二次創作TOPへ戻る