ユフィはエッジの街に来ていた。クラウドとティファの家に遊びに来たのである。
一緒に暮らしているというクラウドとティファ。果たして自分の入る余地がないのかどうか、ユフィはそれを知りたかった。
恋する相手が別の女と同棲しているというのは大きい。まるで夫婦も同然だということである。
だが、まだ結婚はしていない。だからユフィは一縷の望みをかけているのである。それだけユフィはクラウドが好きだった。

ユフィ(ま、見込みがないならないで、すっぱりあきらめちゃえばいいんだよ。とにかく行動せずにうだうだ悩むのはアタシの性に合わないんだ。よっし、行くぞ!)

ユフィ「ここがティファのセブンスヘブンかあ」
ティファ「ユフィ!いらっしゃい!」
ユフィ「やっほー!ティファ」
ティファ「まだ時間が早いけれど、どうぞ、中に入って」

恋敵であるはずのティファはユフィの気持ちなど全く気づかぬ様子で、笑顔で迎えてくれる。ユフィは複雑な心境になった。しょせん、クラウドにとってもティファにとっても自分など妹のようなものなのだろうか?

ユフィ「お〜!いい匂いがする〜お腹すいてきちゃった」
ティファ「何か食べる?」
ユフィ「食べる食べる!」

ユフィはティファが作ってくれた料理を食べながら様々な話をした。こうしていると、ユフィとティファはかつての仲間同士、仲間としての絆は揺るぎなく感じる。しかし、実は同じ男に想いを寄せる恋敵でもあるのだ。

ユフィ「ティファの料理って、ん〜ま〜い!さすが店が流行ってるだけあるね!」
ティファ「そろそろ開店時間よ。お客さんが増えてきたらあまり相手してあげられないけれど、クラウドが帰ってきたら上へあがってちょうだい」
ユフィ「は〜い」

店が開くと、たちまち常連の客で埋まった。皆、ティファには少なからず好意を抱いているようである。
客達に人気のあるティファを見ていると、ユフィはだんだん自分に自身がなくなってきた。
ティファは美人でナイスバディで料理が上手くて、その上優しく気立てがいいとなれば女として何一つ文句はない。どんな男でもティファのような女性を望みそうである。クラウドが同棲しているのも無理はない。

ユフィ(………やっぱクラウドもティファがいいのかな…でもこの間の夏祭りはアタシと一緒にいてとても楽しそうに見えたけど。それもただ妹みたいな存在ってだけなのかなあ…)

そう考えると自分がみじめに思えてくる。ユフィはこっそり厨房の奥に行って酒を飲みはじめた。



ティファ「クラウドお帰りなさい」
クラウド「ただいま。ユフィは?」
ティファ「ごめんなさい。今日お客さんが多くてなかなか相手してあげられなくて…あら?どこに行ったのかしら?」

見ると、ユフィは酒を飲んですっかりできあがっていた。

ユフィ「ヒック、ヒック、クラウド、遅いぞ〜!」
ティファ「ユフィ!あなたお酒飲んだわね!ダメじゃない!まだ未成年なんだから!」
ユフィ「そんなのアタシの勝手じゃん!第一、飲んじゃダメって言われると飲みたくなるんだよ!」
クラウド「しょうがないやつだな。ほら、来い」
ユフィ「ヒック」
クラウド「ティファ、俺達は先に上がっている。店が終わったら来てくれ」
ティファ「わかったわ」



クラウド「全く、酒なんか飲んで」
ユフィ「いいじゃ〜ん、別にぃ〜それよりアンタの部屋ってどこ?」
クラウド「おまえはティファの部屋で寝るんだ」
ユフィ「アンタ達一緒に寝てんじゃないの?」
クラウド「なっ…何を言うんだ!俺とティファは別々の部屋で寝ている!」

クラウドは真っ赤になって怒った。

ユフィ「でも同棲してるんだよね?」
クラウド「ただ一緒に暮らしているだけだ!とにかくおまえはもう寝ろ!」

酔っ払い、クラウドに介抱されながら、それでもユフィは強引にクラウドの部屋へ入って行った。

クラウド「おい、ユフィ!」
ユフィ「ここがアンタの部屋?伝票だらけで散らかってるじゃん」
クラウド「ティファの部屋はこっちだ!」



ユフィ「ん〜〜〜ちょっとお酒飲みすぎたかな…」
クラウド「気分はどうだ?気持ち悪くないか?」
ユフィ「それは大丈夫。だけど眠〜い」

ユフィは寝ぼけながらクラウドに抱きついた。





ティファ「クラウド、遅くなってごめんなさい。店はもう締めてきたわ。ユフィの様子はどう?」
クラウド「すっかり酔い潰れてる」

そこにはクラウドに抱きついて熟睡しているユフィの姿があった。

ティファ「しょうがない子ねえ」
クラウド「悪いな、ティファ、あとは頼んだぞ」
ティファ「ええ」



ティファ「ユフィ――きゃっ!?起きてたの?」
ユフィ「違うよ〜今起きたんだよ〜」

相変わらずユフィは寝ぼけている。

ティファ「もう!これからはお酒なんか飲んじゃダメよ!ほらちゃんとベッドに入って!」
ユフィ「う〜〜〜ん………」



ユフィ「………ねえ、ティファ」
ティファ「なあに?」
ユフィ「いつかはクラウドと結婚するの?」

ユフィがそう聞くと、ティファは急に暗い表情になった。

ティファ「さあ…どうかしら?私はもちろんそうしたいけど、クラウドが何て言うか…」
ユフィ「でも同棲してるんでしょ?」
ティファ「………一緒に暮らしてるのは確かよ。でも…私達、本当の意味での恋人同士じゃないし」
ユフィ「どういうこと?」
ティファ「だって………クラウドは抱きしめてくれたりキスの1つもしてくれないもの」
ユフィ「へ?」

ティファ「一緒に暮らしたいって言いだしたのは私の方なんだけど………とにかく今の私達の関係は『同棲』じゃなくて『同居』ね」
ユフィ「そ、そうなんだ。てっきり夫婦同然かと思ってたよ」
ティファ「ねえ、ユフィ。クラウドはいつか私にプロポーズしてくれると思う?今はただ奥手なだけ?」
ユフィ「さあ…クラウドに思い切って聞いてみたら?」
ティファ「そんな勇気ないわ。クラウドはきっと………エアリスのことがまだ好きなんだわ。私なんてエアリスには一生かなわない」
ユフィ「ちゃんと聞いたわけじゃないのに勝手に思い込むのは良くないと思うけど」

ティファ「じゃあエアリス以外でクラウドが惹きつけられるような素敵な女性なんて他にいる?」
ユフィ「そう言われてもなあ…とにかくエアリスはもう星に還っちゃったんだよ」
ティファ「だったらクラウドは今でもエアリスのことを忘れられないでいるのよ!きっと。だから私、じっとクラウドの出方を待っているのに…一緒に暮らすことはOKしてくれたから、いつかは、って思ってるのに…」

ユフィは心の中でつぶやいた。

ユフィ(あのクラウドに対して『ひたすら待つ』なんてことやってたら何年経っても進展ないよ)



その後もいくらか女同士の会話をした後、2人は寝た。ユフィはベッドの上で考える。

ユフィ(………思い切って来てみて良かった。クラウドとティファは夫婦同然のラヴラヴだと思ってたけどそれは大間違いで、結局、アタシの入る余地全然あるじゃん。ティファ、アンタには悪いけど、アタシだってクラウドが好きなんだよ。せっかく好きな人ができたんだもん、積極的にアタックしていくよ。もしクラウドが振り向いてくれたら…アタシはクラウドと――)

恋する乙女2人は同じ部屋で同じ男のことを想う。恋の悩みはつきない。相手の男が果たして自分に振り向いてくれるのかどうか。男への慕情に悶々とする。ユフィとティファは恋煩いを抱えたまま、その日の夜を過ごした。





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