シーザーはエリザヴェータを捕らえようと必死になっていた。だがエリザヴェータは非常に素早く姿を消してしまう為、なかなか行方をつきとめることができない。アバロンの城下町を探しても彼女は見つからなかった。
ある日、エリザヴェータが屋根の上に姿を消したのを見た。軽やかな身のこなしでいつも木や塀の上に上る。まるでシティシーフのようだ。

シーザー(シティシーフ、屋根の上、まさかとは思うが…)

日が暮れるのを待ち、シーザーはアバロン城下町の屋根の上に上った。そして屋根から屋根へ飛び移っていく。するとエリザヴェータがいた。

エリザヴェータ「シーザー!?あなたこんなところまで!」
シーザー「見つけたぞ!」

エリザヴェータは慌てて逃げた。素早い彼女は屋根に飛び移る移動速度も速い。このままではまた逃げられてしまう。せっかくここまで追い詰めたのに。シーザーがそう思った時である。エリザヴェータの前方にモンスターが現れた。

エリザヴェータ「モンスター!?こんなところに?」

エリザヴェータが応戦しているうちにシーザーは追いついた。そして助太刀する。

シーザー「来い!お前達の相手はこっちだ!」

瞬く間にモンスターを倒してしまうシーザー。

シーザー「怪我はないか?」
エリザヴェータ「もちろんよ。こんなモンスター相手に苦戦するわけないわ。全く、こんなところにモンスターが現れなければあなたに追いつかれることもなかったのに」」
シーザー「とうとう捕まえたぞ。君が何者なのか教えてもらおうか?」

エリザヴェータはばつが悪い顔をしていたが、シーザーは逃げられないようにしっかりと捕まえている。隙を見て逃れるのは無理なようだ。

エリザヴェータ「仕方がないわね。ついていらっしゃい」





エリザヴェータについていくと、そこは狭い隠れ家だった。かつてジェラール帝の時代、シティシーフのキャットが根城にしていた場所である。屋根の上にある為、人々に見つかることはない。エリザヴェータはキャットの隠れ家を自分なりに綺麗にし、必要最低限の家具も揃えていた。シーザーに椅子を勧めるとお茶の用意をする。

シーザー「まさかこんな場所に隠れていたとはな。アバロン中どこを探しても見つからないはずだ」
エリザヴェータ「皇帝になるまで素性は明かさないつもりだったのよ。城下町の宿に滞在したらたちまち噂になってしまうわ」
シーザー「君ほどの美人なら無理もない」
エリザヴェータ「あら、お上手ね」
シーザー「さて、そろそろ君が何者なのか教えてもらおうか?」

エリザヴェータ「私はトーレンスから来たの」
シーザー「トーレンス?」
エリザヴェータ「チカパ山の向こうにある、人々の記憶から忘れられた町よ。そこにはかつてこの世界を支配していた古代人が住んでいるの。そして私は数百年ぶりに生まれた古代人の末裔よ」

シーザーは驚愕に目を見開いた。全く予想だにしない事実だったのだ。しばらく唖然としていた彼はあることに思い当たった。

シーザー「すると、君が冥術を使えるのも古代人の知恵か」
エリザヴェータ「そうよ」
シーザー「にわかには信じがたい話だな。それに何故、人目を忍んで暮らしている古代人が帝国の皇帝になろうと思ったのだ?」
エリザヴェータ「伝承法の限界が近付いているの」
シーザー「何だって?」
エリザヴェータ「帝国に伝承法を授けたオアイーブも古代人の1人よ。その伝承法にも限界があるの。次に行われる皇帝継承が最後。それ以降の者は力を受け継ぐことはできないの。私は戦士としてたぐい稀な才能を持っていた。だから古代人の皆は私を帝国最後の皇帝にすべく育ててきたのよ」
シーザー「君の言う帝国最後の皇帝というのはそういう意味か」
エリザヴェータ「ええ。次の皇帝でなんとしても七英雄との戦いに終止符を打たなければならない。もう力を受け継ぐことができる者がいないのだから」
シーザー「そうだったのか……………七英雄はあとスービエだけだ。我々で力を合わせて奴を倒そう」
エリザヴェータ「シーザー、今まで帝国の皇帝が倒した七英雄は生きているわ。彼らは眠っているだけ。彼らの本体はどこかに隠されていて、それが破壊されない限り本当に死ぬことはないの。以前ジェラール帝が倒したクジンシーもそろそろ復活する頃よ。そうやって倒されても倒されても長き眠りを経て復活する、それが七英雄の強みなの」
シーザー「では七英雄を倒すことは不可能なのか?」
エリザヴェータ「七英雄には血の誓いがあるわ。最後の1人は本体を守らなければならないの。本当に最後の1人になれば彼らは必ず本体のところへ行くわ。その場所を突き止めて戦いを挑むしかないの」

エリザヴェータの話は驚愕の事実の連続だった。彼女の出自、伝承法の限界、七英雄の秘密。

エリザヴェータ「わかったでしょう?次の皇帝の責務は誰よりも重いわ。新たに復活するクジンシーと残ったスービエを倒して七英雄の本体を倒さなければならないのだから。今までも数多くの皇帝が七英雄との戦いで命を落としていったわ。七英雄本体との戦いはさらに過酷なものになるでしょう。だから私は古代人達から教育を受けて誰よりも強くなろうとしたの。彼らに打ち勝ち、この世界に平和もたらす為に」
シーザー「そうか……………」

シーザーはしばらく黙っていた。そして意を決したように口を開く。

シーザー「エリザヴェータ、私と一緒に来い。そして共に力を合わせて七英雄を倒すのだ」
エリザヴェータ「ちょっと待って、皇帝にはあなたがなるつもり?」
シーザー「ああ。悪いが今までの勝負からしても、私の方が上手のようだ。それに、どちらか皇帝になるかは関係ないだろう。肝心なのは七英雄を倒すことだ」
エリザヴェータ「そうだけれど…私、せっかく強くなって皇帝になるつもりで来たのに…」
シーザー「何なら私の妃にしてやってもよいぞ。強い女は好きだ」
エリザヴェータ「まあっ!私、アバロンまでお嫁に来たんじゃないわ!」

エリザヴェータは顔を真っ赤にして怒った。そんな彼女を見てシーザーは声を立てて笑った。





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