残る七英雄はスービエのみ。彼は血の誓いによって本体のところに向かったはずである。七英雄の本体が眠る場所。それは一体どこにあるのか。シーザーは帝国の情報網を使い、全力で探していた。だが、なかなか見つからなかった。もどかしさを感じながらも最後の戦いに向けて剣の稽古は怠らない。そんなシーザーに、エリザヴェータは時々剣の相手を申し込んできた。今となっては共に戦う仲間である。もう勝負にこだわることはなくなった。

今は真夜中。いつものように剣の稽古が終るとエリザヴェータはシーザーに近づいてきた。

エリザヴェータ「あなたの愛剣はデイブレードというのね」
シーザー「ああ」
エリザヴェータ「デイブレード。太陽の力を秘めた剣。私のムーンライトと対照的ね。ムーンライトは月の力を秘めているの」

エリザヴェータはさらにシーザーに近づいた。あまりにも至近距離だったのでシーザーは動揺する。

エリザヴェータ「私とあなたは対照的ね。あなたは太陽の力を秘めたデイブレードを使う。私は月の力を秘めたムーンライトを使う。あなたの髪はまるで月のように輝く銀の髪。私の髪はまるで太陽のように輝く金の髪。全く正反対だわ。私達は対照的に太陽と月を宿しているのよ」
シーザー「そ、そうだな」

エリザヴェータは何も意識していないようだが、シーザーの方は徐々に落ち着きがなくなっていった。何せ妙齢の女性が至近距離まで顔を近付けてくるのである。エリザヴェータは非常に美しい女性だ。艶やかな金の髪。長い睫毛。魅惑的な口元。絹のような滑らかな肌。そして成熟した女性の色香。シーザーはエリザヴェータの顔に手を触れた。そしてそのまま口元を引き寄せる。

エリザヴェータ「!?」

エリザヴェータはひょいと避けて後ろへ下がった。

エリザヴェータ「まあっ!これだから男って信用できないわ!油断も隙もないんだから!」
シーザー「私が相手では不満か?」
エリザヴェータ「さあ、どうかしらね」

そう言うと、エリザヴェータはくるりと身を翻して去って行った。逃げられてしまった。男のシーザーからすれば、エリザヴェータの方から先に『誘った』のだが、彼女には全く自覚がない。つれない態度がさらに激情を煽る。戦いが終わったら彼女を妻に娶りたい。強く美しい女は好きだ。シーザーの心は半ばエリザヴェータに捕らわれていた。





七英雄の行方がつかめないまま、武術の訓練に明け暮れる日々が続いた。1日たりとも訓練を怠るわけにはいかない。七英雄本体との戦いは今だ嘗てないほど厳しいものになるだろうから。
そんなある日、エリザヴェータがシーザーの元にやってきた。

エリザヴェータ「シーザー、ハンニバル達を呼んで一緒に来て頂戴」
シーザー「七英雄の居場所がわかったのか?」
エリザヴェータ「そうじゃないわ。あなたも皇帝ならアバロンは自ら守るべきよ」
シーザー「一体どうしたんだ?」
エリザヴェータ「来ればわかるわ」

シーザーはハンニバル、アウ、コウメイを連れてエリザヴェータの元へ向かった。

ハンニバル「エリザヴェータ嬢、何事です?」
エリザヴェータ「みんな、黙ってついて来て」

エリザヴェータが向かったのはアバロンの下水道。ひんやりとした空気が身を包む。歩くと靴の音がかつーん、かつーんと響く。シーザー達は一体何が起きたのかと後についていく。そのうちに地下墓地へ出た。墓石の1つに穴が空いており、その先には――

シーザー「白アリ!?何故こんなところに」
エリザヴェータ「しばらく前からここで繁殖を始めたみたいなの。このまま放っておけばアバロンの町を乗っ取られるわよ」
シーザー「わかった。今のうちに先手を取って倒してしまおう」

何故ハンニバル達も呼んだのか、そのわけがわかった。この数はシーザーとエリザヴェータ2人では手に余る。シーザー達は白アリを退治しながら穴の奥深くまで進んだ。そして奥には白アリの女王、クイーンが。

「お久しぶりね。帝国の皇帝。サバンナでは世話になったわ。あの時、卵を1つ、皇帝にひっつけておいたのよ。ここまでなるのにどれだけかかったことか…今からきっちりお返しをしてあげるわ。七英雄さえ恐れさせた私の真の姿を今再び!」

クイーンは孵化して襲いかかってきた。中からは蠱惑的な女性が出てきた。新たに生まれ変わったクイーン――リアルクイーン。しかし所詮は白アリ。相変わらず冷気に弱いはずである。弱点がわかっているシーザー達の敵ではなかった。

「乱れ雪月花!」
「シャドウサーバント!月影!」

冷気の攻撃を立て続けに行い、シーザー達はリアルクイーンを倒すことに成功した。断末魔の叫びを上げて白アリの女王は息絶える。巨大な女王の身体も徐々に生気が失われていき、とうとう冷たくなった。

シーザー「こんな奴がアバロンの地下にいたとは…危なかったな。城下町が襲われていたら被害は甚大だっただろう。エリザヴェータ、礼を言うぞ」
コウメイ「しかしよく気がつきましたね」
エリザヴェータ「あの白アリは古代からいたのよ。過去にもとんでもない被害が出てるわ。アバロンの町を隅々まで探検していたら見つけちゃって…」
アウ「あんなところまで?」
エリザヴェータ「私、シティシーフ達とも仲がいいの」

エリザヴェータ自身もまるで盗賊のように身のこなしが軽い。何はともあれ、アバロンの危機は事前に回避された。


残るは七英雄本体との戦い。彼らの居場所は一体どこにあるのか。





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