ミカエルはロアーヌを『影』に任せ、お忍びの旅を始めた。モニカの消息も気になる。まずはミュルスで情報収集をした。今まで捜索隊の報告では全く手がかりがつかめなかったモニカだが、今度はミカエル自ら聞き込みをする。緑の髪の若い男と金髪の美しい女は詩人と三人組で港へ向かったという。捜索隊は若い男女の二人連ればかり探していたので今まで見つからなかったのだ。ミカエルは港へ向かった。その時はツヴァイク行きの船しか出ていなかった為、三人組はツヴァイクへ向かったというのだ。これは完全に予想外のことだった。もしミカエルだったら迷わずピドナへ向かうところだ。モニカを見つけたら、まずはゆっくり話し合おう。先のことはそれから決めようとミカエルは考えていた。そしてミュルスからツヴァイク行きの船に乗った。





オーロラの旅を終えたハリード達は再びランスへ戻ってきた。ランスへ戻るとウォードが仲間から外れた。一度ユーステルムへ戻るというのである。ハリードとウォードは気が合うが、ウォードの方は共に四魔貴族と戦う気はないらしい。

「気が変わったらいつでも来いよ」
「おう。ハリード、また会ったら一緒に飲もうぜ」

軽く別れの挨拶をすると、ウォードはユーステルムへ帰っていった。

ハリードパーティーは四魔貴族と戦う為に旅をしている。ランスでアビスゲートの場所を調べた結果、一番はっきりしているのはピドナの魔王殿であった。魔王殿の地下に魔戦士公アラケスのゲートがあるらしいのだ。そこでハリードパーティーの次の目的地はピドナに決定した。
一方、今まで共に行動していたユリアンパーティーの方は、四魔貴族と戦うなどという大それたことをやる気はなかった。ツヴァイク公の子息との縁談を蹴ってユリアンと駆け落ちしたモニカ。ユリアンとモニカはどこか二人で静かに暮らせる場所を探しているところである。ロアーヌからもツヴァイクからも離れたところに。

ランスに戻ると商人達が荷物運びの依頼をしてきた。最近野盗の活動が活発で商品を運ぶのが危険らしい。ランスからヤーマスへの道と、ランスからファルスへの道の二つで商品の荷物運びをやってくれないかというのだ。そこでユリアンパーティーがランス~ヤーマス道、ハリードパーティーがランス~ファルス道の運び屋をやることにした。ユリアンはハリードパーティーに別れを告げる。

「ハリード達ともお別れだな。俺とモニカはなるべくロアーヌとツヴァイクから離れたところに行きたいんだ。西の方へ向かうよ」
「俺達の目的地はピドナだからな。この荷物運びをやってファルスへ行き、それからピドナへ向かうつもりだ」

ハリードパーティーとユリアンパーティーはそれぞれ別れを告げた。

「ハリード!オーロラの旅、楽しかったよ!」
「おい、そういえば雪だるまはどっちについていくつもりなんだ?」

……………し~ん……………沈黙が降りた。

「ボクはユリアン達についていくのだ。ハリード達は五人いるのだ。さっきウォードが抜けてユリアン達は四人なのだ。だからボクはユリアン達と一緒に旅をするのだ」
「そ、そうか…」

現在、ハリードパーティーはハリード、エレン、サラ、少年、レオニードの五人である。ユリアンパーティーはユリアン、モニカ、詩人、タルトの四人。生き物の雪だるまが共に旅をすることについて、いろいろとツッコミを入れたいことはあるが、ユリアン達は黙って雪だるまをメンバーに加えた。

「それじゃあな!」
「またね!」

こうしてハリードパーティーとユリアンパーティーは別れた。



ランスの荷物運びの依頼を受け、ヤーマスへの道を進むユリアン達。敵の野盗達はそれほど強くない。なので、ユリアン達はつい油断してしまった。引き上げの合図と共に逃げ出した野盗達を追って深追いしてしまったのである。野盗達を追っていくとそこにはリーダーと思われる大野盗の姿が。ユリアン達は大野盗と戦い始めた。
大野盗は手下の野盗を大勢引き連れていた。手下の野盗は倒しても倒してもきりがない。すぐに他の手下がやってくるので、いつまで経ってもボスである大野盗へ攻撃することができないのである。そのうち大野盗が強力な攻撃を仕掛けてきた。

「烈風剣!」

全員が大ダメージを受け、窮地に陥るユリアン達。大野盗は更に止めをさそうとしてくる。

「ファイナルストライク!」

ユリアンのパーティーは全滅した……気絶した五人は野盗のアジトへ運ばれていく。



一方こちらはハリード達。ランスからファルスへの道を進む。野盗に混じってモンスターも現れる。しばらくすると合図が鳴り、野盗達は引き上げていった。逃げ遅れた野盗を捕まえると、アジトの場所を白状した。野盗のアジトはスタンレーの近くの山の中にあるらしい。野盗からは大した金は取れなかった。ファルスへ着き、報酬を受け取る。
ユリアンパーティーが野盗に捕らえられたことなど知らないハリードは、ファルスの町で一休みすることにした。そしてサラと少年を見る。ランスのモンスター襲来事件以来、彼らは二人で寄り添っていることが多かった。以前から少年はサラに気があるようだったが、彼らの様子を見ていると、恋愛関係として進展しているのではなく、何か共通の悩みを抱えているように見えた。

その時である。ガラの悪い連中がサラと少年に絡んできた。少年はとっさにサラをかばう。しかしそのごろつき達を倒したのは少年ではなくエレンであった。ごろつき達の背後から忍び寄り、格闘であっという間にやっつけてしまった。エレンは指をパキポキと鳴らし、凄みのある表情でごろつき達を睨む。

「いい?あんた達、私の大切な妹に手を出したらタダじゃおかないわよ!」

見た目より相当腕が立つエレンを見て、ごろつき達は逃げていった。

「お姉ちゃん…」

自分が宿命の子だと知って以来、エレンの実の妹ではないと知って以来、サラの心中は複雑だった。自分が本当の妹じゃないことは、怖くてエレンに聞けない。この悩みを打ち明けているのは今のところ少年だけである。

「サラ、元気出しなよ」
「うん…お姉ちゃんは私のこと、本気で大切に思ってくれてるんだね…」
「サラが赤ちゃんの時からずっと一緒に育ったんだろう?エレンさんにとっては血がつながってないなんて、そんなこと関係ないんじゃないかな」

血がつながっているかどうかではなく、ずっと一緒に育った大切な家族。エレンにとってサラは何よりも大切な妹なのだろう。その思いが伝わってくると、サラは思わず涙ぐんでしまう。何も気づいていないエレンは、最近のサラは一体どうしたのだろうと思っていた。



その日はファルスに宿をとった。『ホテル・ラ・マーレ』の酒場で『ファルスワイン』を嗜むハリードとレオニード。ウォードとはまた別に気が合うのか、ハリードはレオニードとも一緒に酒を飲むことが多かった。

「ハリード、あなたは自分の曲刀にカムシーンと名付けていますね。カムシーンは初代ゲッシア朝の王、アル=アワドの名剣だ」
「ああ、その通りだ。今まで多くの者がカムシーンを手に入れることを望み、命を落とした。俺もカムシーンに憧れ、自分の剣をカムシーンと名付けてきた」
「えっ?ハリード、それじゃあ、あんたの剣は普通の曲刀なの?」とエレン。
「ああ。これはただのファルシオンだ。本物のカムシーンはアル=アワドの墓にある」
「ふ~ん…」

ハリードは名剣カムシーンに憧れているらしい。エレンにはよくわからなかった。

「ハリード、明日はどうするの?」

ハリードは酒を飲みながらパブで情報収集をしていた。ファルスは現在メッサーナの権力を握っているルードヴィッヒに対抗しようとしている。その為かスタンレーと戦争を起こして勝とうとしていた。ランスとの道中に出没する野盗はスタンレーの仕業だと言っているが、スタンレー側からすれば完全な濡れ衣だった。ファルスはスタンレーに勝って勢力をつけ、ルードヴィッヒに対抗するのが目的と思われるが、冒険者であるハリード達はこれらのもめ事に深入りする気は無かった。ただ、ファルスとスタンレーの戦争に傭兵として参加すれば金が稼げる。ハリードはそれに目を付けた。

「明日はスタンレーへ向かう。ファルスとスタンレーの戦いは報酬が多い方に加勢するつもりだ。それに野盗のアジトがスタンレーの近くにあるというのも気になる。アジトに乗り込めば野盗が溜め込んだ金を手に入れることもできるだろう。ボスを倒してしまえばもう野盗がランスの交易を邪魔することもないしな。ピドナへ行くのはそれからだ」

多額の報酬が稼げそうだと見て、ハリードの機嫌はよかった。エレンはがめついなと思いつつ、野盗を退治するのは賛成であった。ピドナへ行けば初めての四魔貴族との戦いが待っている。それまでにできるだけ戦闘経験を重ねて強くなっておきたい。
四魔貴族と戦うことについて超然としているハリードとレオニード。負けるものかと気合いを入れるエレン。宿命の子としての運命に不安を抱えながらハリードについていくサラと少年。五人はそれぞれの思いを抱えながら宿で眠りについた。





ランスからの荷物運び。ランス~ヤーマス道はユリアンパーティーに、ランス~ファルス道はハリードパーティーにやってもらうことにしました。
このイベントは野盗とのバトルで全滅するパターンもあるので、全滅した場合をユリアンパーティーでやってもらうことに。



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