ファルスに泊まった翌日、ハリード達はスタンレーに向かった。近々戦争が勃発するファルスとスタンレーだが、スタンレーの方が兵力も少なく、余裕が無いようであった。武器屋の品物も軍に売ってしまったので品切れである。ファルスとスタンレーが争ってもルードヴィッヒが喜ぶだけ。パブのマスターの見解は当たっているだろう。どちらに味方しても大差ないが、傭兵への報酬はスタンレーの方が多い。ハリードはスタンレーの傭兵として参加することにした。ファルスとスタンレー、報酬はスタンレーの方が多いが兵力はファルスの方が多い。ファルス4000騎に対し、スタンレーは2500騎である。

「下翼突撃の陣!」
「防壁の波陣!」

スタンレー軍の下翼突撃の陣に対し、ファルス軍は防壁の波陣で対抗してきた。そして戦闘開始。スタンレー軍は前進攻撃後に全軍防御。相手が全軍後退したり前列交代したりしても、怯まずにそのまま前進攻撃でどんどんファルス軍を追いつめていく。するとファルス軍は全軍突撃してきた。

「全軍突撃!」
「後列突撃!」

ファルス軍の全軍突撃に対し後列突撃で返すスタンレー軍。下翼突撃の陣で後列突撃を使い、敵の指揮官を狙う作戦なのだ。そしてファルス軍の指揮官を倒すことに成功するが…

「グフッ………無念なり!」
「指揮官戦闘不能 クラックスがやられました!! 指揮官を失った兵隊達の行動は…全軍突撃!」

指揮官を倒されたファルス軍はまた全軍突撃を使ってきた。スタンレー軍も全軍突撃で返す。

「全軍突撃!」

ファルス軍の指揮官は倒したが、元々兵力に差があるので油断はできない。モラルが下がると押されてしまう。

「統率回復 強!」

モラルを回復しつつ攻め込み、スタンレー軍は戦いに勝った。



「みんな、すばらしい働きだったぞ!イヤー、勝った勝った!スタンレー軍団の力を見たか!」

スタンレー軍は不利な戦いに勝利をおさめたことで意気揚々としていた。一方、ファルス軍は…

「負けた……スタンレーに負けるようでは、ピドナのルートヴィッヒに対抗するのは無理だ……」

兵力では有利だったにもかかわらず敗北したということで、ひどく意気消沈していた。そんな中、報酬をたっぷりと稼いだハリードは上機嫌であった。

「ランスからファルスへの荷物運びで2000オーラム。このスタンレー側に加勢して勝って3000オーラムか」

金の勘定をしているハリードは随分と嬉しそうだ。そんなところを見ていると、本当にがめついなあとエレンは思うのだった。



ファルスとスタンレーの戦争も一段落着いた。戦争といっても小競り合いの程度で済んだのは幸いである。ハリードは今晩スタンレーに宿を取った。ランスからファルスへの荷物運びをやった時、野盗のアジトはスタンレーの近くの山の中にあるという情報を得た。明日はそのアジトへ乗り込み、野盗を完全に叩いておこうというのである。野盗の本拠地なら、今まで野盗が蓄えた金もあるだろう。ハリードはその晩、スタンレーのパブで満足そうに酒を飲んでいた。

一方、少年は夜に外で剣の稽古をしていた。剣の素振りをして余計な雑念を払うのだ。一心不乱に剣を振る。いろんなことが頭の中を駆け巡る。今まで少年に関わった人間はみんな死んでしまった。苦い記憶。辛い記憶。そしてサラとの出会い。サラに惹かれ、サラを守りたいと強く思うようになった。あれから少年の人生に転機が訪れた。共に旅する仲間ができたのだ。しかし旅の途中で自分が宿命の子だということを知る。今後は一体どんな運命が待ち受けているのか。更に驚くべきことに、今回は宿命の子が二人いるというのだ。そのもう一人の宿命の子はサラ。自分が惹かれていた少女だ。異性として惹かれていたのか、それとも宿命の子同士ということで惹かれていたのか、わからなくなる時がある。
しかし、やはり少年はサラのことが好きだった。サラにはいつも笑顔でいて欲しい。彼女には本当に幸せになって欲しい。その為には自分はどんな努力も惜しまない。少年は強くなりたかった。剣の腕ももちろんだが、これからどんな運命が待ち受けていようとも、サラをしっかりと守りたかった。

そうやって少年が剣の稽古をしていると、サラがやってきた。今まさに彼女のことを考えていたところに本人がやってきたので少年は思わずびくりとしてしまった。

「ごめんね。邪魔しちゃった?」
「う、ううん、そんなことないよ」

サラはタオルを持ってきて少年に駆け寄り、汗を拭いた。少年は思わず赤面する。自分はサラのことでこんなにドキドキするのに、サラの方は全く何とも思ってないように見える。二人は夜風にあたり、しばらく話をした。サラは姉のエレンのことを考えていたようだ。これまでのエレンとの思い出を話してくる。サラがこうやって自分にいろんなことを話してくれるのは嬉しかった。少年はこの姉妹について、ふと思ったことを口にした。

「エレンさんって、まるで太陽みたいに明るい人だよね。勝気で男勝りでサッパリしていて。エレンさんには太陽が似合う。明るい太陽の下で、太陽の光に負けないくらい明るく活発に生きている、そんな感じがするよ」
「そうね。お姉ちゃんはシノンの村では男の人達の憧れの的だったんだよ。でもお姉ちゃんは恋愛には全く興味が無いみたいなの。お姉ちゃんには太陽が似合う、かあ。確かにそうだね」
「うん、それでね、サラはまるで月みたいだ。物静かで落ち着いていて、静かな夜の月明かりが君にはとても似合ってると思うんだ。エレンさんが太陽ならサラは月。そんな感じがするよ」

サラは目をぱちぱちとさせた。しばらくしてにっこりと笑った。

「そっかあ。お姉ちゃんは太陽で私は月、かあ。確かにそうかも」
「サラは月みたいで、月明かりの下の君はとっても綺麗で…」

少年は続けてサラの美しさを賛美するようなことを言おうとしたのだが、恥ずかしくなってやめてしまった。月のように神秘的な美少女。サラは静かな夜に月明かりの下で見ると美しさが一層際立つ。太陽のように明るいエレンの美しさとは対照的である。

「ありがとう。私、ちょっとずつ元気が出てきたよ」
「サラが笑顔だと僕も嬉しいよ」

サラが笑顔で楽しそうにしていると少年も嬉しい。逆にサラが辛くて苦しそうにしていると少年の心も張り裂けそうになる。やはりこれは恋というものなのではないだろうか。

「サラ」
「何?」
「僕達は一人じゃないよ。僕は今まで一人だったけど、君のおかげで仲間ができた。そして君とは同じ宿命を背負っている。宿命の子について、アビスの魔物達の言ったことに最初は戸惑ったけど…宿命の子が二人いるなら、一人で悩みを抱え込まなくていい。共に悩みを共有できる相手がいるんだ。これからどうなるかわからないけど、僕は絶対にサラを守ってみせるから。例えどんな運命が待ち受けていても君と一緒に苦難を乗り越えていきたい。僕はそう思っているよ」
「……………!!ありがとう!」

サラと少年は月明かりの下、二人で手を取り合った。





ファルス対スタンレーのマスコンバット。毎回何度もリセットしてスタンレー側につく私です。もちろん報酬が多いから。
後半は私が思いついた独自のエピソードです。なんだかエレンって太陽のイメージがあって、サラは月のイメージがある、そんな風に思って書きました。エレンとサラがそれぞれ太陽と月みたい。テーマ曲からいってもそんな感じがします。



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