ここはヤーマス。トーマスは二回目のトレードとしてドフォーレ商会の悪事を阻止しようとしていた。仲間のカタリナ達と、ヤーマスへ来て知り合った怪傑ロビン親子とも協力して一つ案を考えた。

その日、ヤーマスのパブ『シーホーク』は臨時休業の看板が立っていた。ライムが大怪我をしたということで店は閉まっている。人々のちょっとした噂になっていた。

トーマスがこのヤーマスの町でドフォーレ商会について調べた結果、ドフォーレの麻薬取引は主に海運を介して行われていることがわかった。どうやらドフォーレ商会の所有物件『ドフォーレ海運』がその麻薬取引を行っているようなのである。ドフォーレ海運は運び屋もやっているらしい。おそらくはその運び屋が麻薬を運んでいるのだろう。トーマスはドフォーレ海運を買収することにした。この物件を抑えればドフォーレ商会は麻薬密売ができなくなる。

ドフォーレ海運の買収トレード。相手はドフォーレ商会の社長が出てくる。

(トーマスカンパニー。最近になって急に勢力を拡大してきた新参者だな。海運は渡さんぞ。麻薬取引ができなくなれば我がドフォーレ商会は一気に落ちぶれてしまう)

あくどいやり方をしなければ商人の世界でやっていけないドフォーレ商会。
ドフォーレ海運を巡るトレード開始。トーマスはまず、かけひき技『早馬を使う』を使った。トーマスカンパニーの命令伝達が素早くなった。その上でフルブライトに助力を頼む。『フルブライト演説』が始まり、ドフォーレ海運の人々の心を動かそうとする。
ドフォーレ商会も黙ってはいない。かけひき技『高笑い』を使う。自信に満ちた顔で気持ちよく高笑いし、海運の人々に好感を持たせようとした。
トーマスは今度はかけひき技『時代の風』を使った。ドフォーレ海運の人々は心を動かされた。資金もドフォーレ商会より多く出し、トレードを有利に持ち込む。
その後、ドフォーレ商会はかけひき技『物件独立工作』を多用し始めた。裏で工作をさせてトーマスカンパニーの物件の不信感をあおるのだ。しかしトレードはトーマスの方に有利に動いていた。

トレード進行中。トーマスがフルブライトの協力の下、ドフォーレ海運を買収している間、カタリナ、ノーラ、シャール、ミューズはロビン親子と共にヤーマスの港倉庫へ向かっていた。シャールはミューズを安全な場所へ隠しておきたかったが、ミューズは一緒に行くと言って聞かなかった。先日モンスターに襲われロビンに助けられたばかりである。シャールの心理としてもミューズを一人にしておくのは不安だった。ならば常に傍に置いて守り通すしかない。危険が伴うが、シャールはミューズをしっかりと守ることを固く心に誓った。

「ミューズ様、絶対に私のそばを離れないで下さい」
「わかっているわ、シャール」

ヤーマスの港倉庫では相変わらず麻薬密売が行われていた。そこをカタリナ達で現場を押さえるのだ。現行犯としてドフォーレの人々を一気に捕らえる。ドフォーレの社員達は抵抗した。捕まったら身の破滅である。必死になって逃げようとしたり、モンスターを放ってカタリナ達を抹殺したりしようとした。カタリナは大剣を振るい、モンスター達を次々と倒していく。ロアーヌで聖剣マスカレイドを授かる程の剣の達人である彼女にかなう者などいなかった。

「さあ、観念しなさい!」
「カタリナ、こっちも全員ひっ捕らえたよ」とノーラ。
「こっちもだ。ミューズ様、お怪我は?」
「私は大丈夫よ、シャール」

ロビン親子もモンスター達を倒し、ドフォーレの麻薬密売人を捕らえた。ドフォーレの人間達はロビンを見て驚愕に目を見開く。

「貴様はロビン!?」
「先日の一騒動の時と同じ二人いるぞ!」
「重傷を負わせたはずだが、生きていやがったのか!くそっ!」

「おまえ達、今度こそ観念するんだな!このロビンがいる限り、この世に悪は栄えない!」
「そうはいくか!いつものことだ、社長が何とかしてくれる。証拠隠滅など数億オーラムばらまけばなんとでもなるさ!」
「それはどうかな?」

麻薬取引が明るみに出たとなってヤーマスの町は大騒ぎになった。その時、ちょうどトレード完了。トーマスはドフォーレ海運を買収することに成功した。

ドフォーレ商会は混乱していた。麻薬密売の要であるドフォーレ海運をトーマスカンパニーに買収されてしまった。それと同時に麻薬取引の現場を押さえられ、それを発端に今までの悪行が公になってしまったのである。麻薬以外の悪行も次々と芋づる式に判明する。会社の不祥事をどう始末をつけるか。静海沿岸地方の都市同盟からも厳しく糾弾される。そんな中、ドフォーレ商会の他の所有物件も次々とトーマスカンパニーに買収されていった。悪事が公となってしまった商会とは縁を切るに限る。今までドフォーレ商会の傘下にあった物件の人々はどんどんドフォーレを見限り、独立していった。そして新たにトーマスカンパニーの傘下に流れていった。ドフォーレ商会の社会的信用は一気に失墜した。

ドフォーレ商会は倒産こそしなかったものの、地方の一会社に過ぎない存在となった。他のヤーマスの物件は全てトーマスカンパニーの傘下に入り、新たに組織の仕組みを再構築することになった。その結果、もうヤーマスで麻薬取引が行われることはなくなり、他の悪行も全て行われなくなった。トーマスはフルブライトの助力を借りながら社長としての手腕を発揮していった。今までヤーマスの町はドフォーレ商会のおかげで財政が潤っていた。それがドフォーレ商会の不祥事により町全体が貧しくなってしまうのではないかと人々は危惧していたのだが、トーマスとフルブライトのおかげで町の繁栄は今まで通りになった。自分達の豊かな生活が保障されたとわかると人々はドフォーレ商会の悪口を言い始めた。

「ドフォーレ商会は今まであんなに悪いことをしていたのだから、ざまあみろだわ」
「ホント、ヤーマスの面汚しよね」
「これでヤーマスも平和になる。これからは大手を振って商売に専念できるってもんだ」

ドフォーレ商会の社長は悔しさに歯ぎしりしていた。以前の栄光は見る影もない。すっかり落ちぶれてしまった。世論では厳しく叩かれ、人々からも公然と悪く言われるようになった。ドフォーレはトーマスを恨んだ。調べてみると、トーマスカンパニー設立の背景にはフルブライト商会の若き当主、フルブライト二十三世が絡んでいたという。今回のドフォーレ海運買収も、元はと言えばフルブライトの差し金だったのだ。

「くそっ!フルブライトめ!」

一方、ドフォーレ商会を首尾よく失墜させることに成功したフルブライトは満足そうにトーマスと話していた。

「良くやってくれた。これで少しは禁制品の取引も減るだろう。……商人には狡猾な立ち回りが必要とされる時がある。トレードにおけるかけひきもその一つだ。だが、それと禁制品の取引をやることとは別だ。ドフォーレ商会はやってはいけないことに手を染めてしまったのだよ」

そんな時である。ドフォーレ商会は少し前に怪傑ロビンの正体を突き止めようと、密偵を放っていた。先日重傷を負わせたのでそれを手がかりに調査していたのである。そしてとうとうロビンの正体を突き止めたという報告が入った。怪傑ロビンは二人おり、正体はパブ『シーホーク』の店員ライムとその父親、マスターのトラックスだというのである。頭に重傷を負ったロビンを手当てしたのはトーマス達だということや、その後パブ『シーホーク』がライムが大怪我をしたというので臨時休業していたことなどが明らかになった。ライムとトラックス親子。あの二人がロビンだとは意外だが、証拠は十分に挙がっている。ドフォーレはロビンを捕まえてとっちめてやろうと思った。ガラの悪い連中を連れてパブ『シーホーク』へ向かう。
シーホークへ行ってみると、当面の間、閉店するとの張り紙が貼ってある。ライムとトラックスの自宅にも押しかけたが、中はもぬけの殻である。ドフォーレはロビン親子を探した。

ロビン達は港にいた。港の倉庫の上に二人のロビンの姿があった。一人はすらりとした体格、もう一人は小太りである。港には人々が集まっていた。

「みんな聞いてくれ。このヤーマスの町は自由の町だ。悪事を重ねていたドフォーレ商会も今となっては小さな会社になった。これからはみんなで自由にやってくれ。私達は一旦この町を去るが、必ず戻ってくる!困っている人を放っておくことなど決してしない!怪傑ロビンがいる限り、この世に悪は栄えないんだ!」

人々の間で歓声が上がった。

「ロビン!ロビン!」
「ロビン様ー!」

女性達の黄色い声援が上がると、小太りのロビン――トラックスの方が投げキッスをした。

ロビン親子を見つけたドフォーレはガラの悪いごろつき達を引き連れて港へ押しかけた。ロビンは港の倉庫の上にいる。捕まえようとするドフォーレだが、二人のロビンは倉庫の上から出港した船に飛び移る。そして人々に見送られながらヤーマスの町を後にするのであった。船で逃げられてはお手上げだ。ドフォーレは地団駄を踏み、悪態をついた。

ロビン親子は船の中に入るとトーマス達に礼を言った。

「トーマスさん、どうもありがとうございます。あなたのおかげでドフォーレ商会をやっつけることができました」
「いや~本当にスカッとしましたよ。ドフォーレ商会の奴ら、ざまあみろってんだ」
「私達はこれから船でピドナへ戻ります。あなた方親子はどうしますか?良かったら私の家に滞在して頂いて構いませんよ」
「ドフォーレ商会の奴らには僕達の正体はバレてしまったようだから、当分ピドナでほとぼりを覚ますことにします」
「私達親子は今までヤーマスから出たことがなかったですからねえ。旅に出るのも悪くないと思っています。これからどうするか、息子と二人で話し合いますよ」

ドフォーレ商会の悪行を封じることに成功したトーマスは仲間と共に一旦ピドナへ戻ることにした。船の中ではロビン親子と楽しく語り合う。ライムは覆面をしている時は堂々としているが、覆面を取ると急に弱気になってしまう。そのギャップが面白かった。



一方、ドフォーレ商会の社長はとぼとぼと帰っていった。会社はすっかり落ちぶれ、世論では厳しく叩かれ、町の人々からも軽蔑の目で見られる。そして今まで目の仇にしてきた怪傑ロビンにもあっさり逃げられる。完敗だ。コテンパンにやられたドフォーレは悔しさでいっぱいになった。



ドフォーレは憎んでいる相手の名前を呟いた。フルブライト二十三世、トーマス=ベント、怪傑ロビンことライム、トラックス親子。このままでは済まさない。必ず何らかの手段で復讐してやると心に誓ったのだった。






実はこの話、書くのに結構苦労しました。

だいたい、二回目のトレードのドフォーレ商会、ドフォーレ商会を直接買収しなくてもドフォーレ海運を買収すればクリアになるのは、攻略情報を知っている人なら皆ご存知のはずですが、何でドフォーレ海運を買収すればいいのか、その意味まで深く考えたことがなかったです。ネット上のいろんな掲示板等を調べたところ、どうもドフォーレの麻薬取引は主に海運を介して行われている設定になっているようです。根拠はロビンイベントで船の倉庫で麻薬取引が行われていたことなどです。買収前のドフォーレ海運の取引品目には「運び屋」があり、買収後にはなくなります。これらの点からドフォーレ海運が運び屋を使って麻薬取引を行っていたという設定になっていたのではないかと思われます。

いろいろ頭を悩ました結果、トレードイベントのドフォーレ海運買収と、ロビンイベントとしてドフォーレ商会と決着をつける、ロビン親子を仲間にして旅立つところまでを一気にストーリー構成することにしました。

書くのに本当に苦労しましたよ、これ。会社経営の世界や社長の世界、企業買収とか会社の不祥事とか、そういうことに詳しければもっと上手く書けるのかなあと思ったり。これからもう少し新聞もちゃんと読むようにしようっと。



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