ハリードは仲間と共にスタンレー近くの野盗の巣窟に向かった。現在ハリードパーティーはハリード、エレン、サラ、少年、レオニードの五人である。彼らはランスで別れたユリアン達が野盗に捕らわれたことを知らない。ユリアンパーティーは現在ユリアン、モニカ、詩人、タルト、雪だるまの五人である。彼らは野盗の巣窟に閉じ込められていた。野盗のボスは満足そうにユリアン達を見る。

「こいつらなら高く売れそうだな」

ユリアンはモニカをしっかりと抱きしめ、何があってもモニカを守ろうと思っていた。詩人はこんな事態にも動じず、呑気に詩を口ずさんでいる。タルトと雪だるまは泣きべそをかいていた。特に雪だるまの失望は大きい。せっかく外の世界を夢見て旅立ったのに、早速悪者に捕まってしまったのである。彼らは自分達を売り飛ばそうとしている。これから自分は一体どうなってしまうのか。

「うわーん!人身売買なんてひどいのだー!」泣き叫ぶ雪だるま。
「っていうか、おまえ人間じゃねえだろ…」ぼそりとツッコミを入れる野盗の見張り。

野盗達は雪だるまを奇異の目で見ていた。他の連中は普通の人間だ。男女別に人身売買のルートで売り飛ばそう。特に金髪の美女は高い値で売れそうだ。しかしあの雪だるまは一体何なのだろう?生き物のように動く雪だるまなど聞いたことも無い。謎の生き物は見世物小屋にでも売り飛ばそうかと算段していた。

そのうち、見張りが交代した。新しい見張りは何か様子が変だった。ユリアン達の他に誰もいないことを確かめると、ユリアン達の荷物を持ってきた。

「大丈夫か?持ち物は持ってきた。逃げよう」
「何故こんなことをするんだ?」
「女の子が売られていくのは耐えられないんだ。俺はポールっていうんだ。さあ、行こう!」

一方、ハリード達は野盗を徹底的に叩くべく、アジトへ侵入した。腕の立つハリードパーティーを見て逃げ惑う野盗達。特に先陣を切るハリードの強さに皆、怖気づき、我先にと逃げていく。そんな中、ハリード達はユリアンパーティーを発見する。

「ユリアン!?おまえ達どうしてこんなところにいるんだ?ヤーマスへ行ったんじゃなかったのか?」
「ハリード!俺達は途中で野盗に捕まってしまったんだよ。これから逃げようとしていたところだ」
「そいつも野盗の一味だな」

ハリードはポールに対して剣を抜く。ポールは慌てて命乞いをした。

「頼む、見逃してくれ!俺はポールっていうんだ。キドラントで恋人が待ってるんだ。頼むよ」

それを聞いてユリアンが反応した。

「キドラントのポールだって?まさか…」

ユリアン達はキドラントに立ち寄った際、知り合ったニーナという女性を思い出した。生贄の穴に放り込まれた時も助けてくれた彼女はポールという恋人の帰りを待ち続けているという。

「君はニーナの恋人のポールなのか?彼女はキドラントでずっと君の帰りを待っている。ニーナがこんなことを知ったら……」
「ニーナを知っているのか!頼む、ニーナには話さないでくれ!」
「なんだユリアン、こいつは知り合いなのか?」
「ハリード、この人は恩人の恋人なんだ。さっきも俺達を助けてくれたんだ。俺からも頼む、見逃してやってくれ」
「まあ別に構わないがな。俺の標的はこの野盗のボスだ」

ハリードは奥に進み、ボスの大野盗のところへ行った。金で見逃してもらおうとする大野盗だがハリードは応じない。金で買収できないとわかると大野盗は攻撃を仕掛けてきた。大勢の野盗を引き連れた大野盗にもハリードパーティーは全く動じない。

「残像剣!」
「メガホーク!」
「連射!」
「霧氷剣!」
「ファイアクラッカー!」

全体攻撃技や遠距離攻撃技を使って大野盗を倒した。これでもう野盗が出没することはないだろう。宝箱も回収し、満足したハリードはユリアンパーティーと共にスタンレーへ帰った。



野盗の巣窟で会ったポールという青年。彼はハリード達についてきていた。ユリアンパーティーはキドラントのニーナと面識があるので、少しポールと話をしたかった。スタンレーの宿屋でポールは身の上話を始めた。

「俺とニーナはいつも一緒に遊びまわっている仲の良い恋人同士だった。ある日、俺は冒険者に憧れるようになった。俺も勇敢な冒険者になりたい。そう思って町を出ていった。ニーナを一人残して。その後、俺は野盗の一員になってしまい、町へ帰るに帰れなくなってしまった。俺は今でもニーナのことが好きだ。故郷もニーナも恋しい。俺を待ってくれているはずのニーナの為にもキドラントへ帰るのを夢見ていた。野盗の一員である以上、それもかなわなかったけどな」
「ニーナは君のことを今でも待ち続けている。野盗一味もいなくなったことだし、キドラントへ帰ったらどうだ?」とユリアン。
「そこが問題なんだ!野盗に身をやつして一体どの面下げて故郷へ戻れるだろう?」
「ニーナならきっと君が無事に帰ってきてくれただけで喜ぶだろう」
「それじゃ俺自身が納得できないんだ!ユリアン、頼む!君と一緒に冒険をさせてくれ!俺が勇敢な冒険者としての土産話を持ち帰れるほどのことをやれたら、その時にキドラントへ帰る。ニーナの元へ。それまでは君達と一緒に旅をする!」

ポールは必死に懇願した。ユリアン達は顔を見合わせたが、やがて仲間になることを承諾した。そしてユリアンパーティーはユリアン、モニカ、詩人、タルト、雪だるま、ポールの六人で旅をすることになった。タルトは早速ポールに話しかける。

「私達と一緒に旅するのはいいけどさ、ポールは勇敢な冒険者になりたいんだよね?それならハリード達と一緒に行ってもいいんじゃない?あっちは四魔貴族と戦おうとしてるんだよ」
「えっ!何だって?」

タルトはハリード達の旅の目的を説明した。

「四魔貴族と戦ってアビスゲートを閉じれば、もう勇敢な冒険者決定だよね~。運が悪かったら死ぬかもしれないけど」
「い、いや、それはちょっと…」

ポールは凄腕の剣士というわけではない。魔貴族と戦うなどと聞いてすっかり尻込みしてしまった。



ランスで荷物運びの依頼を受け、それぞれランス~ヤーマス道、ランス~ファルス道の二手に別れたハリードパーティーとユリアンパーティー。ユリアン達が野盗に捕まり、野盗の巣窟はスタンレーにあった為、二つのパーティーはまた合流することになった。

「な~んだ、別れたと思ったのに結局また一緒なんじゃん」とタルト。

野盗に捕まり、一時はどうなることかと思っていたので、ユリアン達は内心ほっとしていた。ハリードとユリアンは今後の目的地について話し合っている。

「ユリアン、俺達はこれからピドナへ向かう。ファルスからピドナ行きの船が出ているはずだ。おまえ達はどうする?」
「俺達も一緒に行くよ。ピドナからはいろんな場所へ船が出ているし」
「よし、また一緒に行くか」

ハリードパーティーとユリアンパーティーは共にファルスへ向かい、港からピドナ行きの船に乗った。

「確かトーマスはピドナに行くと言っていたな」とハリード。
「あれからどうしてるかしら?久しぶりにトムに会いたいわ。ねえユリアン」とエレン。
「ああ、そうだな」

その後ハリードは一人でいた少年に声をかけた。

「よう!サラは一緒じゃないのか?」
「はい。今はタルトと遊んでいます」

しばらくの間、ハリードと少年は黙って海を眺めていた。

「ハリードさん」
「何だ?」
「好きな女性を守るって大変なことですね。戦うことで強くなるだけじゃない。好きな人の心も守ってやれなければならない。僕はこの旅で初めて自分が守りたいと思う女の子に出会った。戦いで守るだけじゃなく、彼女の笑顔も守りたい。彼女が喜んでいたら僕も嬉しい。悲しんでいたら僕も悲しい。こんな気持ちになったのは初めてです。ハリードさんもそういう経験はありますか?」
「もちろん。俺にも生き別れの姫がいる。姫を愛する気持ちは今でも変わらない」
「ハリードさんはゲッシア朝の王族でしたね。…そうですか。ハリードさんにもそんな人が…」

ハリードと少年はしばらく語り合った。少年の一途な想いを聞いてハリードは笑みがこぼれた。自分の少年時代を思い出す。まだファティーマ姫と共に幸せだった頃――。少年は気が弱く、精神面もまだまだ未熟なところが多い。ハリードは年長者としてしっかりと見守ってやろうと思った。

「これから四魔貴族との戦いが待っている。サラをしっかり守ってやれよ」
「はい!」

宿命の子だということはいずれハリードに話さなければならない。そして初の四魔貴族との戦い。少年は気を引き締めた。



次の目的地はピドナ。







実際のゲームでは雪だるまを仲間にした後で野盗のイベントをやることは、おそらくできないと思いますが、これはオリジナル小説なのでその辺は自由に書きました。



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