とうとうハリードパーティーは魔王殿へ向かった。ランスで得た情報によると魔戦士公アラケスのアビスゲートはピドナの魔王殿の地下にあるそうだ。襲い来るモンスター達を倒し、魔王殿の中を進むハリード達。宝箱はほとんど空で、ハリードは舌打ちした。探索を続けていると、中に謎の宝箱があった。他の宝箱と同様に中身は空なのだが、何か書いてある。

『死を讃えよ 死は幸いなり いざ、幸いの地へ』

「何だこれは?」

ハリードは特に気に留めずに先に進んだ。
奥に進んで行くと開かない扉に辿り着いた。ランスの聖王家の当主から貰った指輪を使う。聖王遺物の一つである王家の指輪は魔王殿地下への扉を開く鍵になっているのだ。その奥から魔王殿地下へ――
それまでとは違った構造の建物になった。途中、多くの妖精系モンスターに遭遇する。誘惑攻撃を多用する女性モンスターにエレンは警戒する。

「ブレードロール!メガホーク!練気拳!」

誘惑してくる女性モンスターと見るや、真っ先に攻撃し、瞬殺しようとするエレン。その様子は殺気漂い、恐ろしい。

(冗談じゃないわ!あんな奴らにハリードを魅了されてたまるもんですか!)

あまりにも恐ろしい形相で戦っているので、そばで見ていたサラが怯えた。

「お姉ちゃん、怖い…」
「エレン、どうしたんだ?確かに誘惑攻撃は厄介だが、おまえの殺気は異常に凄まじいぞ」ハリードが尋ねる。
「そ、そんなことないわよ。あんた達男共が魅了されないように真っ先に倒してるだけよ。そう、これは戦略上の行動よ」

そんなエレンには構わずリリスやミニティといった女性モンスターは誘惑を仕掛けてくる。レオニードは魅了攻撃は全く効かないし、ハリードも魅力が高いので魅了されることは少な目だ。しかし少年は――

(くっ…こんな攻撃に負けてたまるもんか。僕にはサラが……)

何度も誘惑を使ってくるリリス。魅了されそうになった少年は逃げ出した。

「うわああああっ!」
「あっ!こら逃げるな少年!陣形が乱れるだろうが!」
「魅了凝視!」

逃げる少年をハリードが捕まえ、レオニードが魅了凝視で女性モンスターを魅了したことで戦況は落ち着いた。



その後、アラケスの戦鬼に出くわす。二体同時に攻撃を仕掛けてくる。攻撃を受けたキャラは大ダメージを受けて倒れた。それ以降、ハリード達は一気に警戒し、片方を集中攻撃してすぐに倒すことにした。すると今度はフェロモンを使って女性を魅了しようとするアラケスの戦鬼。



「いい?ハリード、女モンスターに魅了されたらタダじゃおかないんだからね!」
「いきなり何だ、エレン」
「あんたが魅了されたら厄介でしょ!みんなの足を引っ張らないでちょうだい!」
「それを言うならおまえだって男モンスターのフェロモンに引っかかるなよ」
「な、何よ!」

女モンスターの誘惑と男モンスターのフェロモン。異性を対象とした魅了攻撃がハリードとエレンの喧嘩の元になった。エレンとしてはハリードが女モンスターに誘惑されるなどということはどうしても我慢ならないのだ。

「エレン、サラ、フェロモンをさっさと見切って極意を修得しろよ」
「そんなこと言われなくてもわかってるわよっ!」
「お、お姉ちゃん、落ち着いて…」



ここは魔王殿地下。アビスの魔物が多く徘徊している。彼らはレオニードを異様な目つきで見た。

「貴様…何故人間と行動を共にしている…不死のヴァンパイア、アンデットである貴様が…」
「アビスに加担する気は無い」
「魔に属する者でありながら我らと敵対するというか。裏切り者が!」
「アンデット支配!魅了凝視!ジェントルタッチ!」

レオニードは固有の技能で襲い来るモンスター達を駆逐した。エレンは不安になった。今の魔物達が言った通り、ヴァンパイアであるレオニードは人間の敵であってもおかしくない。自分達と仲間として一緒に戦っているのは不思議だ。エレンの不安そうな目つきを見てレオニードは微笑した。

「エレン、安心して下さい。アビスに味方する気はないのですよ。ただ、あなた方と旅をしてたまには運命の担い手になるのも悪くないと思ったのです」
「レオニードは仲間だ。裏切るとは思ってないさ。あんたは人生達観してるからな」

ハリードがそう言うと、レオニードはミステリアスな笑みを浮かべた。



魔王殿地下を進むと、途中で合成術の奥義書を見つけた。他にも宝箱を守る強力なモンスターが待ち構えている場所もあった。巨人との戦いでは少年が『無刀取り』を使った。するとトリプルソードという大剣を手に入れた。強敵を倒し、宝を回収しながらハリード達は最奥部のアラケスの元へ向かった。
最深部でアビスゲートを発見、すぐに閉じようとするハリード。中心の光っているところを破壊しようとする。すると現れた。魔戦士公アラケスが。

「血を流せ……」

アラケスは力押しのタイプだった。強力な直接攻撃を仕掛けてくる。
ハリード達は落ち着いて、着実にダメージを与えていった。戦いの最中、アラケスはサラと少年に気づいたようだ。二人の方を見る。

「宿命の子…我らと仇名すか…」
「僕は魔王にはならない!アビスゲートの向こうへ帰れ!」

少年はそう言うと東方不敗でアラケスを斬りつけた。サラも黙って弓を射る。

「…そうか………ならばおまえ達全員、死ぬがよい!大回転!」

アラケスは全体攻撃技を使ってきたが、ハリード達もかなり戦闘経験を積んでいた。皆、強力な技を取得している。やがて、アラケスは消え去った。

「アラケスを倒したぞ!」

ハリードはアビスゲートの中心の光っている場所を破壊した。魔王殿地下のゲートは閉じられた。



無事に四魔貴族の一人を倒し、アビスゲートを閉じることに成功したハリード達はピドナの街に戻った。ユリアンパーティーとトーマスパーティーは彼らの勝利を祝福した。特にトーマスはサラが無事に帰ってきたので安心したようだ。詩人が勝利の詩を歌う。

「ワンツースリーフォー ワンツースリーフォー スキルエンドメァジックビート ディーモンデュークアラケス アウワグレイトヒーロー ハリード!!」



魔戦士公アラケスを倒した。アビスゲートはあと三つ。





思いついたネタとしは魅了。厄介ですよねえ。エレンからすれば自分の好きな男に女モンスターが誘惑している光景はさぞかし気に食わないだろうと。
そういえばフェロモンは見切れるのに誘惑は見切れないんですね…



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