ハリード達は魔龍公ビューネイを倒し、今はバンガードの町に滞在していた。そして詩人からこの町に伝わる言い伝えを聞いていた。


アビスの四魔貴族の一人 魔海侯フォルネウス 西太洋のいずこにか 巨大な宮殿を築き 船を襲い嵐を起こし 世界の海を支配せり 聖王 大船を造り 魔海侯に七度挑むも七度敗れる 玄武術士ヴァッサールいわく 島を動かし沈まぬ船となすべしと 聖王 冒険のすえ オリハルコーンを得 玄武術士の力によって島を動かす 島をバンガードと命名し 決戦へと乗り出した さすがのフォルネウスも バンガードを沈めること能わず 聖王ついに魔海侯の宮殿に突入し フォルネウスをアビスへと追い返し アビスゲートを閉じた


「聖王伝説か…この町が動くなんて本当だろうか?」

ランスで得た情報によると、フォルネウスのゲートは西太洋のどこかにあるらしい。かつての聖王はこのバンガードの町を動かしてフォルネウスを倒したそうだ。ハリード達はしばらくこのバンガードの町について調べることにした。

ハリード達がバンガードの町を歩いていると、カタリナとノーラに会った。カタリナは浮かない顔をしている。二人はマスカレイド・聖王の槍の手がかりを探して旅をしている。先日はツヴァイクへ行くと言っていたはずだが…

「よう!」
「ハリード」
「浮かない顔だな。その様子だとマスカレイドについての情報は得られなかったようだな」
「ええ…ツヴァイクを中心に北方地方を駆け回ったけれど、マスカレイドについても聖王の槍についても何の手がかりも得られなかったわ……」
「そう簡単に見つかるものじゃないわ。世界中を旅していればいつか手がかりが得られるわよ」

ノーラがそう言ってもカタリナは意気消沈したままだった。ロアーヌ襲撃の際に国元に駆けつけることもできない。一刻も早くマスカレイドを取り戻し、ロアーヌへ戻りたい。

「ねえ、ハリード。あなたは四魔貴族と戦う為に聖王遺物も探しているそうね」
「ああ。四魔貴族と戦うからには聖王遺物も手に入れた方がいいだろうと思ったんだ。ランスの聖王の試練でもいくつか手に入れたしな」
「…ねえ、マスカレイドについて何か聞いたことはない?」
「いや。聖王遺物の何がどこにあるのか、こっちが知りたいくらいだ」
「マスカレイドと聖王の槍。この二つについて何か情報を手に入れたら教えて頂戴」
「いいとも。カタリナ、焦るなよ。大事な探し物ほど手がかりは得られないもんだ」

そう言うと、ハリードはファティーマ姫のことを思い出した。

(姫……)

ゲッシア朝ナジュ王国が滅んで以来、愛しのファティーマ姫と離れ離れになってしまった。姫は今どこにいるのだろうか。



バンガードにはユリアンパーティーも滞在していた。

ハリードパーティーはハリード、エレン、サラ、少年、レオニードの五人。
ユリアンパーティーはユリアン、モニカ、詩人、タチアナ、雪だるま、ポールの六人。
そして今はカタリナとノーラもこの町に滞在している。

ユリアンパーティーはバンガードでしばらくゆっくりしていた。

「いい町だな。ロアーヌからもツヴァイクからも離れているし。モニカ、俺達ここに住もうか?」
「まあ、いいですわね」

ユリアンとモニカは駆け落ちして、どこか二人で暮らせる場所を探している。二人はこのバンガードに身を落ち着けることを検討し始めた。

ユリアン達がバンガードの町を回っていると、一組の男女に出会った。どうやら恋人同士らしい。

「私達、アツアツなんです」

その男女はぴったりと身を寄せ合い、戯れ合っていた。

「あーあ、昼間っからお熱いねえ」

タチアナは視線を逸らす。ユリアンとモニカも日頃からお熱いが、そこまで人前でいちゃつくことはない。雪だるまは恋愛の概念を知っているのかどうか、きょとんとした目でカップルを見ていた。そしてポールはこのカップルを見て故郷の恋人ニーナを思い出した。急にニーナが恋しくなる。

「ああ…キドラントにいた頃が懐かしい…俺もニーナと一緒に野原を駆け回ったっけ…いろんなことして遊びまわったよなあ…」

ポールは大声で叫んだ。



「ニーナぁぁぁぁぁ!!!!!」



大声で叫びながら走り出すポール。そのままどこかへ行ってしまうかと思いきや、建物の壁で止まった。タチアナはポールをじろりと見た。

「あーもう、うるさい。そんなに彼女が恋しければとっとと帰れば?」
「そ、そういうわけにはいかないんだ!前にも言ったように勇敢な冒険者になったと言えるだけのことをやらなければ。そう!どこか財宝の洞窟へ行ってお宝をいっぱい手に入れるとか!多くの冒険者が途中であきらめたという危険だらけの財宝の洞窟。凶悪なモンスターを倒し、トラップを回避しながら奥へ辿り着くカッコいい俺。お宝の前には巨大なドラゴンが待ち構えていて、みんなで勇敢に戦って倒すんだ!そしてお宝を山分けしてキドラントへ帰る俺。懐かしい故郷には可愛いニーナが笑顔で待っていて。抱き合う俺とニーナ。そして俺はニーナに手に入れたお宝をあげるんだ!ニーナにとびっきり綺麗なドレスを着せて、お宝の宝石アクセサリをつけて飾るんだ。お姫様みたいに綺麗になったニーナと俺は――って、あれ?」

気がつくとポールの周りには誰もいない。ユリアン達は先に行ってしまった。

「み、みんな!待ってくれよー!」

慌てて仲間の後を追うポール。



――事件はその日の夜に起きた。

「お手洗い?」

男が外に出た後、何か音がした。そして何者かが家に入ってくる。どすんと女の横に何かがきた。

「何よ、また? ん、何、これ、血!! キャー」



翌日、バンガードは殺人事件の話で持ちきりだった。殺されたのは二人の男女。一緒に暮らしていた恋人同士であった。ニュースは『バンガードタイムズ』で一気に広まり、人々は大いに噂し合った。ハリード達は一通り情報収集をすると、バンガードの市長を訪ねた。バンガードの市長は自分のことをキャプテンと呼んでいた。

「私がバンガードのキャプテンである!ん?昨夜の殺人事件のことか?全くひどい事件だ。モンスターの仕業だろうか?殺人鬼は夜になるとやってくるようだが…君達、何か情報があったら私に教えてくれ」

ハリード達は今夜もバンガードに泊まることにした。殺人鬼は夜になるとやってくるらしい。今夜も出るのだろうか。夜中に物音がするとみんな慌てて起きた。

「トイレかよ、寝る前に行っとけよな、全く!」

その後、本物の殺人鬼がやってきた。宿屋で眠るハリード達に襲いかかる。しかしハリード達は既に起きて待ち構えていた。

「甘いぞ!」

殺人鬼の正体はフォルネウス兵だった。複数のフォルネウス兵が襲いかかってきたが、今のハリード達の敵ではなかった。あっさりと返り討ちにする。

翌朝、ハリード達はバンガードの市長――キャプテンの元へ報告に行った。





ポールのゲーム中のセリフが非常に少ない為、このオリジナル小説でどういう風に書こうか頭を悩ませました。想像力が必要とされます。



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