バンガードを突如襲った殺人事件。犯人は魔海候フォルネウスの手下であった。それを知ってバンガード市長は嘆いた。

「なんてことだ。どうやって町を守ったらいいんだ」
「動かそうぜ、バンガードを!聖王はフォルネウスと戦う為にバンガードを作ったんだ」

ハリードはかつての聖王と同じことをするつもりだった。この町が本当に動くのなら、それでフォルネウスの元まで行くのだ。ハリードはバンガード市長――キャプテンに、町の安全の為にバンガードを動かし、フォルネウスと戦うことを提案した。

「うむ……出来るだろうか……君はもちろん協力してくれるよね?」
「金だ」
「では3000オーラム出そう」
「もう一声。この町を守る為だろう?」
「足元を見おって!仕方ない、5000オーラム出そう」
「それくらいでいいだろう。で、まずは何をすればいいんだ?」
「この町を動かす為にはまずバンガードの内部へ入らねばならん」
「どこから?」
「わからん」
「まずはそれからだぜ」

ハリード達はバンガード内部への入り口を探した。町中のありとあらゆる場所を探し回る。しかしどこにも見つからない。みんなで手分けして探し続ける。そんな中、レオニードは悠然と立ったまま何もしていない。

「おい、レオニード、おまえも真面目に探せ」
「ハリード、灯台下暗しという言葉を知っているか?」
「何?」
「バンガード市長の足の下を見てみるのだな」

ハリードはもう一度バンガード市長の元へ行った。

「どうだね、入口は見つかったかね?」
「キャプテン、足の下……」
「なんだね?おや、何かな?こんな所にあったとはさすがの私も気づかなかったよ、ハハハハ」
「キャプテン…あんた気づいていてわざと俺達に探し回らせたのか?」
「そんなことはないぞ、ハハハハハ。ここからバンガードの内部に入れる。長いこと使われていないからモンスターがいるかもしれない。中を見てきてくれ。それではがんばってくれたまえ」

バンガード内部は暗くてじめじめしていた。モンスターの巣窟になっており、退治しながら奥へ進む。最深部でコントロールルームを発見したハリード達は地上へ戻った。キャプテンは過去の文献を調べていた。

「古い本を調べて見たんだが、コントロールルームの様子は、こんなだったかね?」

ハリードは文献に載っている絵と図面を見た。ほとんど同じだが、真ん中のイルカの像が無い。

「何だと!!古い本で調べると、コントロールルームの真ん中にイルカの像があったはずなのだ。あれはオリハルコーン製の玄武術増幅器なのだ。あれが無ければバンガードを動かすことは出来ない!盗まれたのだ。オリハルコーンは高く売れるからな」
「入口は1か所しかないのに?市長の足の下の入口を誰かが知っていたと?」
「そういうことだ。……町の者かもしれない、信じたくはないが」
「よし、イルカ像を探そう。それさえあればバンガードを動かせるんだな?」
「いや、他に玄武術士を集める必要がある。彼らの力を合わせてバンガードを動かすらしい」
「どこで集めたらいい?」
「モウゼスに術士が集まっていると聞いたが」
「わかった」

その後、ハリード達はイルカ像の手がかりを探した。町の人々から情報を集めると、パブのマスターはイルカが大嫌いらしい。イルカと聞いただけでビクッとするそうだ。マスターは昔どうしようもないワルだったが、死食の後、急に金回りがよくなって、店を始めたそうだ。

「思いっきり怪しいな」

ハリードはパブのマスターに近づいた。

「いらっしゃいませ」
「イルカ……」

マスターはビクッとした。人々から聞いた通りである。何度もイルカと言うと、マスターは根を上げた。

「あれが大事な物だとはわかってました。でも金が欲しかったんです。おかげで店も持てて、今じゃ女房・子供もいます。見逃して下さい、お願いします」
「イルカを誰に売ったか教えてくれ」
「ヤーマスのドフォーレ商会に。あそこは盗品でも買ってくれるルートがあるんです」



その後ハリード達はユリアンやカタリナ達と一度集まった。ハリード達はフォルネウスと戦う為にバンガードを動かそうとしていること、その為にはイルカ像と玄武術士が必要であることを話した。イルカ像はヤーマスのドフォーレ商会に売り飛ばされたらしい。玄武術士はモウゼスにいるそうだ。

「そうなのか。ハリード、よかったら俺達も協力するぜ」とユリアン。
「私も協力するわ、ハリード。私はこれからこの地方を中心にマスカレイドの手がかりを探そうと思うの」とカタリナ。

彼らは話し合った結果、ユリアンパーティーがヤーマスへ、ハリードパーティーとカタリナ・ノーラがモウゼスへ向かうことになった。



一方、トーマスはロアーヌからピドナへ戻った。ゆっくり落ち着く暇もなく、フルブライトが血相を変えて駆けつけてきた。

「大変な情報だ!商人達の中に、アビスの魔貴族に協力して交易を独占しようという連中がいるのだ。彼らはアビスリーグという同盟を結んでいるらしい。誰がアビスリーグに加盟しているかはわからん。しかし、なんとしても世界の交易を守り抜かねばならん!一緒に戦ってくれるか?」
「喜んで!」

トーマスはまたトレードをやることになった。今度の相手はアビスリーグという同盟。まさかアビスの魔貴族が人間の経済界にまで介入してくるとは思わなかった。秘書にアビスリーグに加盟している物件を調べさせ、一つひとつ買収していくトーマス。だがアビスリーグの物件を買収して減らしても、また新たに増えている。それどころかトーマスカンパニーの所有物件に買収工作をしかけてきた。アビスリーグの物件は『アビス脅し』『アビス資金』などの駆け引き技を使ってきた。そしてアビスリーグの財力とあくどい駆け引きにトーマスカンパニーの物件を何件か奪われてしまった。その中にはクラウディウス家ゆかりの者達の物件もあった。ミューズとシャールは表情を暗くした。今となっては散り散りになってしまったクラウディウス家。かつて知っていた者達がアビスリーグに入ってしまったというのだ。

「ミューズ様、シャール、心配しないで下さい。俺が必ず奪われた物件を取り戻してみせます!アビスの勢力になど負けません!」

トーマスは粘り強くトレードを続け、奪われた物件をアビスリーグから取り戻していく。取り返した物件の人々から話を聞くと、アビスの手の者から脅されて仕方なくアビスリーグに参加していたらしい。彼らの表情は恐怖に満ちていた。アビスリーグ。魔貴族に協力して交易を独占しようとするなど言語道断だ。トーマスは経済界をアビスから守る為に奔走した。トーマスはアビスリーグを壊滅させる為、世界中を駆け回り始めた。





バンガードのイベントはハリードパーティー、ユリアンパーティー、カタリナパーティーで手分けしてやることに。

アビスリーグは、ゲームシステム上はただアビスリーグの物件を全て買収すればクリアなのですが、オリジナル小説としては、それでは物足りないと思い、少し考えました。今回の話ではクラウディウス家の物件がアビスリーグに奪われるという話。ああ…トレードで負けた時の音楽が頭の中を流れる…。
今後アビスリーグネタはもう少し続きます。



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