だいぶ旅にも慣れてきたサラは一人空想に耽っていた。サラはいろんなことを空想することが好きである。小さい頃から本を読むとその世界に引き込まれる。そして頭の中で様々なことを空想するのだ。今は旅をしている。今までは本でしか知らなかった外の世界を実際に見聞きるすことでサラの想像力は更にかきたてられていた。ポドールイの美しい街並み、北のオーロラの幻想的な光景。四魔貴族との戦いも順調に勝利をおさめている。このまま全てのアビスゲートを閉じて世界が平和になればよいのだが。今度は魔海候フォルネウスと戦うということで、海へ行くようだ。シノンでは見たことも無かった大海原。広大な西大洋のどこかにフォルネウスの宮殿があるらしい。言い伝えの詩によると巨大な宮殿らしい。海のどこかにある巨大な宮殿。一体どんなところなのだろう。

宿命の子として生まれたことも恐れずに足を踏み出していこう。サラには大切な仲間がいる。姉のエレンがいる。同じ宿命の子である少年もいる。ハリードもレオニードも仲間として自分を助けてくれる。皆で力を合わせて戦えばきっと明るい未来が待っている。そう信じて、サラは今日も仲間達と旅を続ける。次の目的地はモウゼスだ。



モウゼスに着いたハリード達はまず情報を集めることにした。現在ハリードパーティーにはカタリナとノーラが同行している。ハリード達は四魔貴族と戦う為に聖王遺物を集めており、カタリナとノーラはそれぞれマスカレイドと聖王を槍の手がかりを探していた。そしてこの町にもやってきたのである。
モウゼスでは二人の術士が町を二分して争っていた。一人は玄武術の使い手ウンディーネ。もう一人は朱鳥術の使い手ボルカノ。二人は最近このモウゼスにやってきて町を二分して争っているらしい。おかげで町の者は大迷惑だそうだ。パブではマスターから死者の井戸について情報を得る。

「ウンディーネとボルカノは死者の井戸の中にある何かを巡って争っているようだ」
「死者の井戸?」
「町の真ん中の小島にある井戸は死者の井戸と言ってな、その昔、死人をあの井戸に投げ込んでいたらしい。だから町の者はあの島には近づかないよ。四魔貴族の時代には病人や年寄りは生きたまま死者の井戸に投げ込まれていたそうだ」
「ひどい…」

死者の井戸の話を聞いてサラは心を痛めた。一通り情報収集が終わると、ハリード達はパブに集まった。

「さて、バンガードを動かすのに必要なのは玄武術士だ。ウンディーネとやらを訪ねるか」

すると、パブの人々がハリード達のところへやってきた。

「旅の方、お願いがあります。もし何かよい方法があればウンディーネとボルカノの争いをやめさせてもらえませんか?我々町の人間はほとほと迷惑してるんですよ。一体あの呪われた死者の井戸に何があるんだか」

死者の井戸の前にはウンディーネの部下とボルカノの部下がそれぞれ立っている。どちらも互いを牽制し合っているようだ。もちろん部外者のハリード達など寄せ付けない。

「死者の井戸に何があるか知らんが、あいつら邪魔だな。おい、カタリナ、二手に別れよう。俺達はウンディーネのところへ行って話をしてくる。カタリナはボルカノのところへ行ってくれ。ウンディーネとの争いをやめさせるにはどうしたらいいか、死者の井戸に何があるか探るんだ」
「わかったわ」



カタリナと二手に別れると、ハリード達はウンディーネの館を訪ねた。中に入るとウンディーネの弟子達が襲いかかってきた。

「何者だ!」
「誰でもいいさ。ウンディーネ様は術士同士の連携を重んじている。新しい陣形を試してみようぜ!」

ウンディーネの弟子達が玄武術で攻撃してきたが、ハリード達にとってたいしたことはなかった。

「残像剣!」

ハリードが曲刀カムシーンで一掃する。

「く、くそっ!」
「おやめなさい!」

まだ何かしようとする弟子達を止めたのはウンディーネだった。

「弟子達が失礼をしたようで。お許し下さい。それにしても素晴らしい腕前」
「あんたがウンディーネか。俺達は今、バンガードを動かす為に玄武術士を探している。協力してくれないか?」

ハリードは最近この地方に四魔貴族の一人フォルネウスの魔の手が忍び寄っていること、バンガードで殺人事件が起き、町を守る為にバンガードを動かそうとしていることを話した。

「まあ、町を守る為に四魔貴族と戦おうなんて、あなたは本当に勇敢なのね。その腕を見込んでお願いがあるわ。南の術士ボルカノを倒して欲しいの。あいつがいなくなってくれれば、すぐに協力するわ」
「ボルカノを倒せばいいんだな。いいだろう」
「それじゃあ先程のお詫びと合わせて2000オーラム払うわ。頼むわよ」



一方、こちらはカタリナとノーラ。ボルカノの館に入るとボルカノの手下が襲いかかってきた。

「何者だ!」
「丁度いい、新しいアイテムを試してみよう!」

ボルカノは朱鳥術の使い手であると同時にアイテム作りの名人らしい。作ったアイテムの出来を確かめる為に頭の悪いモンスターをたくさん雇っているという話だ。ボルカノの手下達は攻撃アイテムを使用してきたが、カタリナとノーラの敵ではなかった。

「く、くそっ!」
「やめろ!」

止めに入ったのはボルカノだった。

「手下共が失礼をしたようで。お許し下さい。それにしても素晴らしい腕前。その腕を見込んでお願いがあります。北の術士ウンディーネを倒して欲しいのです」

カタリナはなんとか争いをやめさせる方法が無いか、それと死者の井戸に何があるのか探ろうとしたが、ボルカノは取り合わない。

「ウンディーネさえ倒してくれればこの町を出て行こう。俺の依頼を引き受けてくれるか?」
「……わかったわ」
「それでは先程のお詫びと合わせて前金として2000オーラム払おう。頼むぞ」



その後、ハリード達とカタリナ達は合流した。

「ウンディーネはボルカノさえ倒してくれればバンガードを動かすのに協力すると言っている」
「ボルカノはウンディーネさえ倒してくれればこの町を出ていくと言っているわ」
「互いに相手が邪魔なのか……それで結局、死者の井戸に何があるんだ?」
「探りを入れてみたけどわからなかったわ」
「俺もだ。……よし!カタリナ、ついて来い」
「どうする気?」

ハリードとカタリナは死者の井戸の前に立っているウンディーネとボルカノの部下をそれぞれだまし、立ち去ってもらった。そして井戸の中に入る。

「一体この井戸に何が?」

死者の井戸。その昔、死人が投げ込まれていた井戸。病人や年寄りは生きたまま投げ込まれていたという。このことについて想像力を働かせてしまったサラはガタガタと震え始めた。サラはいろんなことを空想することが好きである。その想像力が却って恐ろしい光景をイメージしてしまった。少年が心配して駆け寄る。

「サ、サラ、大丈夫だよ。みんなついてるから」
「そうだぞ、サラ。俺達の仲間にはヴァンパイアのレオニードだっているんだからな」

ハリードもサラを安心させようとした。井戸の中は当然アンデットの巣窟であった。多くのアンデットモンスターを相手に戦うのはレオニード城地下以来である。少年は妖刀龍光を取り出して戦い、レオニードはアンデット支配を使ってモンスターを片付けていった。

「思ったより広い井戸ね。ここにウンディーネとボルカノの争いの元になった何かが隠されているのね」
「あんまり長居したくないわね」
「おい、ここから奥に行けるぞ」

見にくい場所に奥への通路を見つけ、先に進むハリード達。最奥部にはデスマスターというアンデットの僧がいた。周りにもモンスターがおり、デスマスターまで直接攻撃が届かない。ハリード達は遠距離まで届く技で攻撃した。

「剣閃!」
「退魔神剣!」
「練気拳!」
「ファイアクラッカー!」
「連射!」

デスマスターを倒すと、そこに盾があった。レオニードがそれを手にする。

「これは魔王の盾だ。中心に魔力を集めるレンズを持つ。一定の確率で様々な攻撃を全く無効にし、術の威力を高める効果を持っている。ウンディーネとボルカノが手に入れたがっていたのはおそらくこれだろう」
「魔王の盾。聖王遺物ではなく魔王の遺物か」
「四魔貴族と戦うのに手に入れておいて損はないぞ。これは非常に特殊な効果を持つ盾なのだ。通常の盾では防げない攻撃も防ぐことができる。所有者が両手武器や術を使っていても勝手に攻撃を防いでくれるし、麻痺や睡眠状態に陥って動けない時でも発動してくれる。ただし、他の補助魔法を無効化したり、技ポイントや術ポイントを激しく消耗したりするから注意するのだな。性能を理解した上で使いこなせば非常に有用な盾だ」
「よし。これは俺達がもらっておこう。戻るぞ」

入り口に戻り、井戸から外に出ると――





練磨の書によると、サラはいろいろ空想することが趣味なのだそうです。

モウゼスのイベント攻略としては一番プレイヤーが得する方法にしました。それにしても死者の井戸の設定は改めて考えると怖いですねえ。ゲームプレイ当時はイベントクリアすることしか考えてなかった…
魔王の盾のゲームシステム上の性能はレオニードのセリフの通り。役に立ちます。



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