バンガードを動かす為に必要なイルカ像を探してグレートアーチにやってきたハリード達。リゾートで一通り遊んだ後、イルカ像探しを始める。情報を集めていると、このグレートアーチにリゾートをしに来ている人々の本当の目的は海賊ブラックの財宝らしい。皆、お宝目当てでやってきているのだ。そして財宝のありかを知っているという人物が何人かいた。

「海賊ブラックの財宝のありかを知りたくないか?100オーラムで教えるぜ」
「そこにオリハルコーンのイルカはあるのか?」
「もちろん!!」
「教えてくれ」

金を払って財宝のありかを聞き出したものの、財宝の場所を教えると言っている人間は四人おり、財宝の洞窟の場所は全て違った。

「どこが本当の財宝のありかなんだ?」
「四つとも行ってみればわかるだろう」

現在グレートアーチにはハリードパーティー、ユリアンパーティー、トーマスパーティー、カタリナパーティーが集結している。そこでハリード達は四手に別れてそれぞれイルカ像を探しに行くことにした。

トーマスパーティーにはシャールとミューズが仲間に加わっている。ミューズは今まで病弱だったが、夢魔を倒して以来すっかり健康になった。そこでシャールと一緒にトーマスに同行しているのだが、今までは戦闘に加わらなかった。病人から健康になったばかりのミューズを戦闘に参加させるなどとんでもない。シャールはそう思っていた。しかしミューズは旅の仲間として少しでも役に立ちたかった。そして月術を覚えた。

「シャール、今度は私も戦うわ。この間、月術を覚えたの。少しだけでいいから私も戦わせて」

シャールは渋い顔をしたが、後列に下がらせることにし、ミューズには常に気を配って戦うことにした。今回はハリードに協力してイルカ像を探している。財宝の洞窟はそれほど凶悪なモンスターは出てこなかった。

「シャドウボルト!」

ミューズは後列から月術で攻撃した。このまま月術を使いこなし、皆の役に立ちたい。ミューズはそう思っていた。



四手に別れてそれぞれ財宝の洞窟に行ったハリード達。結果は全て外れ。どこにもイルカ像は無かった。

「全部デマか。くそっ!本物はどこにあるんだ?」



イルカ像探しが行き詰まってしまったハリードはどうしたものかと考えあぐねていた。今日も日暮れが訪れる。グレートアーチの夕焼けは一際美しい。空が茜色に染まり、人や建物も全て朱に染める。そんな中、ハリードは一人の老人を見かけた。白髪で片足が義足になっている。どうやら現地の人間のようだ。海賊ブラックの財宝について何か知っているだろうか。ハリードは老人に気さくに話しかけた。

「よう!じいさん、俺と一杯飲まないか?」

その老人の方もハリードの誘いに気さくに応じた。日は徐々に沈み、夜の帳が降り始めている。ハーマンと名乗るその老人とハリードは共に酒を飲み始めた。たわいもない雑談から世間話、思ったよりも会話が弾み。そのうちハリードは海賊ブラックの財宝を探していることを話し始める。

「へえ、おまえも海賊ブラックの財宝目当てか。知りたきゃ100オーラムで教えるぜ」
「他に同じことを言った奴は四人もいる。そして全部外れだった。せっかく金を払ったのに無駄金だったぜ」
「俺なら本物の財宝のありかを教えてやれるぜ」
「…なあ、ハーマン、海賊ブラックの宝にオリハルコーンのイルカは無かったか?」
「おお、あれはブラックの宝の中でも素晴らしいものだった。どうしてあのイルカのことを知っている?」

ハリードは今までのことを簡単に説明した。最近バンガードで殺人事件が起きた。犯人は魔海候フォルネウスの手下だった。そこで町を守る為にバンガードを動かそうとしているのだ。

「バンガードを動かす為にイルカ像が必要なんだ。バンガードでなきゃフォルネウスとは戦えない!」
「フォルネウスと戦うだと!!……そうか、イルカのありかを教えてやらんでも無いが……」
「知ってるなら教えてくれ。金が欲しいのか?」
「いや、わしも連れて行け」
「直接案内してくれるのか。いいだろう」
「では、今夜はこれまでだ。明日になったら行こう」

ハーマンが仲間になり、同行することになった。『ホテルバランタイン』で一泊した翌日、ハリードパーティーはハーマンの案内で財宝の洞窟へ向かった。その洞窟はグレートアーチからずっと南にあった。洞窟内は多くの罠が仕掛けてあったが、ハーマンの案内で事なきを得る。ハーマンはこの洞窟内をよく知っているようだが、一体何者なのだろう。ハリードは疑問に思いつつ洞窟の奥へ進んで行った。
最深部でイルカ像を発見したが、その前に蛇と蛙とナメクジがいた。三匹はお互いに牽制し合っている。いわゆる『三すくみ』の状態だった。

「何だこいつらは。邪魔だな。残像剣!」

ハリードは三匹をあっさり葬ると、その奥にあったイルカ像を入手した。これでバンガードを動かすことができる。ハリードはひとまずグレートアーチに戻った。



「よし、それじゃあ船でピドナに行き、それからバンガードへ戻ろう」

ハリード達はグレートアーチで他のパーティーと合流した。トーマスはハリード達がイルカ像を取りに行っている間、トレードをやっていたようだ。グレートアーチの物件は全て買収したらしい。

「ハリード、イルカ像を入手できたみたいだな。俺もピドナへ戻るから途中まで一緒だな」

一行は全員船でピドナへ行くことにした。そこへハーマンがやってくる。

「ハリード、わしもバンガードへ連れて行ってくれ」
「どうした?財宝のありかを教えてくれるだけだと思ってたが」
「フォルネウスには借りがあるんだ」

ハーマンは義足である。昔、船で西大洋を航海していた時にフォルネウスと遭遇し、片足を食いちぎられてしまったらしい。

「わしがフォルネウスに出くわした場所まで案内してやる。その近くに奴の居城があるはずだ」

こうしてハーマンが新たに加わった。



グレートアーチからピドナへ向かう船の中、カタリナは相変わらず浮かない顔だ。仲間のノーラの探している聖王の槍の手がかり、その一つは赤サンゴだったが、グレートアーチで情報収集してもそれ以上の手がかりが得られなかったのだ。カタリナが探しているマスカレイドについても相変わらずである。一体いつになったらマスカレイドを取り戻せるのだろう。いつになったら雪辱を果たし、ロアーヌへ帰ることができるのだろうか。カタリナを心配するノーラはなんとか元気づけようとする。

「大丈夫だよ、カタリナ。まだこの世界全て探したわけじゃない。とにかく根気よくいかなきゃ」
「そうね…。ノーラ、いつもありがとう」
「それにしてもカタリナ、なんだか顔色悪いよ。せっかくグレートアーチで遊んだのに何でかな?」
「実は私………ぬるぬるした生き物が嫌いなの」
「え?」
「財宝を探して行った洞窟にもいたでしょう?昔からああいう生き物が苦手で…」

カタリナがそう言った時だった。船にモンスターの軍団が襲いかかってきたのだ。不測の事態に乗客達は逃げ惑う。そんな中、ハリードパーティー、ユリアンパーティー、トーマスパーティー、カタリナパーティーはモンスターの襲来に応戦した。襲ってきたモンスターは水棲系、両生系、無機質系モンスターだった。全てぬるぬるした生き物。それを見てカタリナは更に顔色が悪くなる。

「…どうして、よりにもよって私の苦手なモンスターばかりなの…」
「カタリナしっかり!」
「大丈夫よ。私は武人。私にとって武人の誇りは大切なもの。私の誇りにかけてモンスター相手に怯んだりはしないわ!」

カタリナは剣を抜き、勇敢に戦い始めた。

モンスターは無尽蔵に現れ、倒しても倒してもきりがない。中には手強いものもいる。ユリアンパーティーは苦戦していた。皆、善戦するが、傷を負い、疲弊していった。そんな中、カタリナパーティーが助太刀に入る。

「ユリアン!モニカ様の恋人だというのなら、モニカ様をしっかり守ってみせなさい!」
「カ、カタリナさん……はい!」

気丈にいい放ち、剣を振るうカタリナを見て、ユリアンも気合いを入れ直した。仲間達は全員傷を負っている。ユリアンは一人でモンスターの群れに向かって行った。仲間を守る為に――



「ユリアン、ユリアン!」

ユリアンが気づいた時にはモニカに介抱されていた。周りには仲間達が集まっている。

「ユリアン、しっかりするのだ。生命の水!」

玄武術を取得している雪だるまが回復術を唱える。

「ユリアン、カタリナに言われたからってこんな無茶をするなんて…」
「ごめんよ、モニカ。俺にとってみんなは大切な仲間達だから」
「ユリアン…」

モニカはユリアンをしっかりと抱きしめた。



ハリードはモンスターの群れを蹴散らし、どんどん船首へ追いつめて行った。曲刀カムシーンを使った勇猛な戦いぶりは、まさにトルネードという呼名に相応しかった。リーダー格と思われるモンスターを見つけたハリードはターゲットを絞った。リーダーさえ倒せばこのモンスターの群れも引き上げるだろう。リーダー格のモンスターは何かを探しているようだった。

「宿命の子…宿命の子…」
「!!こいつら、少年が目的か!」

少年はずっと後方でサラと共に戦っている。ハリードはリーダー格のモンスターの元へ一気に距離を詰め、一刀のもとに斬り捨てた。モンスター軍団のリーダーは気味の悪い絶叫を上げて倒れる。

「くっ…宿命の子…片方だけでも捕らえなければ…」
「片方?」

モンスター軍のリーダーはそれっきり絶命した。リーダーを失ったモンスターの群れは一挙に引き上げていく。船上では船乗り達が乗客の無事を確認している。エレンも仲間の無事を確かめると、ハリードのところへ駆け寄ってきた。

「ハリード、どうしたの?」
「……いや……何でもない」

このモンスター襲来はどうやら宿命の子である少年を狙ったものだったらしい。それだけ言うと、ハリードは黙り込んでしまった。





海賊ブラックの財宝探し、現在せっかくハリードパーティー、ユリアンパーティー、カタリナパーティー、トーマスパーティーと集結しているのなら、手分けして探すということにしてみました。
ミューズが月術を使うシーンがありますが、ゲームシステム上、ミューズは月術の成長が一番早いです。なので、この小説でもちょこっと使わせてみることに。
ハーマンを仲間にする時の会話は別の主人公だとそれぞれ違ったものになりそうですね。

それにしても…
練磨の書によるとカタリナはぬるぬるした生き物が嫌いなのだそうです。大切なものは武人の誇り。ユリアンの大切なものは仲間達。これらを使ったエピソードを何か書こうと思ったらストーリー展開がなんだかすごいことになってしまいました(汗)。結果、ハリードはこの時点で宿命の子が一人ではないことに感づきます。



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