ピドナでトーマスパーティーと別れたハリード達はバンガードへ戻った。ユリアンパーティーとカタリナパーティーも同行している。イルカ像を手に入れ、とうとうバンガードを動かすことになったのだ。

「市民は安全な場所に移動させました。バンガードを発進させて下さい」
「準備よ~し!」
「発進準備!!シンクロ開始!!」
「出力、50%!」
「出力100%」
「もう少しだ、大地の鎖を断ち切れ!」
「出力増大中!…20… …40…150% 最大出力です!!」
「バンガード発進!!」



バンガードは動いた。聖王伝説は本当だったのである。バンガードの人々は驚嘆していた。中には夢だと認めない者といた。バンガード市長――キャプテンはハリードにこの動く都市の操縦を任せた。ハリードはハーマンにフォルネウスと遭遇した場所を尋ねる。

「最果ての島へ!!世界の果てまで西へ走り続けるのだ!」
「最果ての島……」

やがて、西の海の果てに小さな島を見つけた。

「現在位置、Hプラス20Lマイナス40」
「ハーマン、おまえ船でこんなところまで来たのか?」
「ああ。昔フォルネウスと出くわしたのは確かにこの最果ての島の近くだった」

ハリードは最果ての島へ降りてみることにした。そこにいたのは――

ロブスターだった。

大きな二本足で立つロブスターが島の中を歩いている。この光景にハリード達は目を瞬いた。そのうちロブスターの一人がこっちへやってくる。

「やあ、最果ての島へようこそ」
「おまえらは一体…」
「我々はロブスター族。この島に住んでいます。私の名はボストン。どうぞよろしく」

ボストンと名乗ったロブスターは非常に礼儀正しい。しかしロブスターと会話することにハリードは戸惑っていた。

「ところで随分大きな船ですねえ。何という船ですか?」

ハリードはバンガードのことを話した。

「一つの都市が島として動くなんて!なんとすごいことですね!私も乗ってみたいものだ。ところであなた方はどうしてこんな西の果てまでやってきたのですか?」
「フォルネウスを倒す為だ。この辺りにいるらしいんだが」
「なんと!フォルネウスを倒す!我々はフォルネウスの居城、海底宮の場所を知っています。なので奴は口封じをするつもりなのです。この島の滝の洞窟に水龍を送り込んできました。島を破壊するつもりなのです」
「何?それでは海底宮の場所を教えてくれ」
「はい。ポイントHプラスマイナス0、Lマイナス100です。ところで皆さんにお願いがあります。滝の洞窟にいる水龍を倒して欲しいのです。我々のモードは玄武の水。水龍には通じないのです」
「いいだろう」

ハリードは滝の洞窟へ向かった。じめじめした洞窟内を進む。あちこちから水が流れ落ちている。滝の向こうに水龍がいた。水の攻撃を得意としている。ハリード達はさほど苦戦せずに勝ったものの、どうやらこの辺りでは魚鱗を装備していた方が良いと判断した。
島へ戻るとまたボストンがやってきた。

「水龍を倒してくれたのですね。どうもありがとうございます。これでもうしばらく我々も生きていられます」
「何だって?」
「滝に削られて、遅かれ早かれこの島は無くなってしまうのです。ところで私もバンガードに乗せてくれませんか?」

どうやらボストンはバンガードに興味があるらしい。

「別に構わんが、人々はおまえを見るとびっくりするぞ」

ボストンは構わずバンガードに乗り込んだ。案の定、人々は驚いたが、ボストンは礼儀正しく接したので、皆、ボストンに好意的になった。

海底宮に乗り込み、フォルネウスと戦うのはハリードパーティー。ハリード、エレン、サラ、少年、レオニードの五人。それとハーマンがついてくる。ハーマンは昔フォルネウスに片足を食いちぎられたらしい。なのでどうしても仕返しをしてやりたいのだそうだ。
ユリアンパーティーは動くバンガードを純粋に楽しんでいた。今回もハリード達がフォルネウスを倒して戻ってくるのを待つことになった。

「ユリアン、おまえはバンガードで待機していてくれ。なあに、これまでも四魔貴族は倒してきた。今度も勝てるさ」
「そうか。ハリード、健闘を祈るよ」

一方、カタリナは相変わらず浮かない顔だ。マスカレイドの手がかりも、仲間のノーラの聖王の槍の手がかりも得られない。ノーラは赤サンゴとジャッカルという言葉を手がかりに探しているのだが、赤サンゴの産地である温海のグレートアーチへ行ってもそれ以上の情報は得られなかった。カタリナはハリードに同行しているハーマンという男を見た。グレートアーチ現地の住人だということだが、何か知らないだろうか。ハリードがフォルネウスとの戦いを終えて戻ってきたらあのハーマンという男に聞いてみよう。

「おや、お嬢さん、浮かない顔ですね」

そう言って話しかけてきたのはロブスター族のボストンだった。人外のロブスターに話しかけられて戸惑うカタリナ。

「お嬢さんだなんて、私はもう大人よ。そんな風に呼ばれる歳じゃないわ」
「そうですか。ところであなたは随分元気が無いですね。一体どうしたんです?」

いくらなんでも最果ての島にいたボストンがマスカレイドの手がかりを知っているはずもなかったが、カタリナは旅をしている理由を話すことにした。マスカレイドを奪われ、取り戻す為に世界中を旅していること。マスカレイドを取り戻すまで祖国のロアーヌへ帰れないこと。未だ何の手がかりも得られないことを話した。

「なるほど、そうだったんですか。私はあなたを元気づけるつもりだったんですが、それではマスカレイドという剣を見つけるまであなたは元気にならないのですね。どうでしょう?私もあなたと一緒に旅をするというのは?」
「な、何ですって!?」

ボストンはカタリナと、同行しているノーラとウンディーネを見た。

「見たところあなた方は、か弱い人間の女性ばかりじゃないですか。それでは旅の道中も危険が付きまとうでしょう。ロブスター族の私が一緒にいれば大丈夫です。どんな悪い奴が襲いかかってきても私のハサミで真っ二つにしてしまいますよ」
「ま、まあ、か弱い女性だなんて、私達は別に…」
「最果ての島から出て人間達の大陸を旅するのも悪くない」

ボストンはハサミを高々と掲げてポーズをとった。好奇心旺盛なボストンは人間に興味があるらしい。バンガードの向こう側では雪だるまが走り回っている。

「バンガードー!すごいのだー!大きな海ー!あお~い海ー!ひろ~い海ー!大海原を~駆け巡るー!」

雪の町から外に出て以来、雪だるまは至るところで人々の注目を浴びていた。本人はそんなことお構いなしに町中を走り回り、旅を楽しんでいた。

「あの雪だるまだって他の人間達と一緒に旅をしているじゃないですか。お嬢さん方、私も連れて行って下さい」

こうして、カタリナパーティーにボストンが加わった。


海底宮の位置も判明し、後はフォルネウスを倒すだけだ。次は海底宮へ――



一方、こちらはロアーヌ。ミカエルは施政を行っていた。今回は外交政策としてスタンレーと交渉していた。スタンレー周辺は最近モンスターが増えているらしい。かつて野盗のアジトだった場所もモンスターに乗っ取られてしまったそうだ。ミカエルは仲間のウォードと偽ロビンことトラックスを連れてスタンレーへ向かった。モンスターに乗っ取られたという場所を聞き、討伐に向かう。ボスモンスターはなかなか手強かったが、ミカエル達はなんとか倒すのに成功した。そしてスタンレーとの外交政策も成功させた。今までマスコンバットにも全て勝利し、外交も成功させ、ロアーヌの国威は順調に上がってきている。そんな中、最近、神王教団に不穏な動きがあるとの報告を受けた。

「神王教団か。あまり関わりたくないが、かといって無視できぬほどの勢力を持っている。我がロアーヌに何もなければ良いが」

そう思った矢先に、リブロフの出城に神王教団の兵が押し寄せたとの知らせを受けた。ミカエルは第一次遠征でリブロフの出城を奪っている。その際、攻め落とした出城の守りを配下の将軍に任せていた。突撃のパットンと呼ばれる将軍である。ミカエルは久しぶりにマスコンバットを再開し、第二次遠征の準備を始めた。





ボストンをカタリナパーティーに入れることに決めたのはいいんですが、仲間になる理由に頭を悩ませました。ゲーム中ではバンガードに乗ってみたいというだけですからね。ボストンから見るとカタリナもノーラもウンディーネもか弱い女性に見えるでしょう。

ミカエルも時々登場させます。施政イベントの外交、今回はスタンレー。というわけでさりげなく野盗のアジトがモンスターに乗っ取られたイベントはミカエルにやってもらうことにしました。



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