バンガードを動かし、海底宮の位置も突き止めたハリード達。とうとう魔海候フォルネウスの居城に乗り込む。

「現在位置、Hマイナス20Lマイナス180」
「海底宮近海へ行け」

最果ての島で得た海底宮の場所まで移動する。

「現在位置、Hプラスマイナス0Lマイナス100」
「よし、海底宮へ行くぞ!」
「バンガードサブマリンモード!」

バンガードは海中深くに潜り出した。辺りは暗くなり、水中を潜る音だけが響く。玄武術士達は海底宮を探す。

「海底宮は発見できません」
「もっと深く」

深く潜れば潜るほど辺りは暗くなる。スクリーンの外に深海魚も見え始めた。

「まだ発見できません」
「もっと深くだ」

なかなか海底宮を見つけられないが、ハリードは根気よく探すように命じる。

「まだ発見できません」
「もっと深く探せ」

まだ海底宮は見つからないのか。どこまで潜ればいいのだろう。そう思った矢先だった。

「海底宮発見!!」
「よし、乗り込むぞ!!」

海底宮は非常に美しい場所だった。上方から水が流れ落ち、下を見れば床が透き通っている。建物の壁も柱も神秘的な雰囲気すら漂わせる。ここがアビスの魔貴族の居城だとは考え難いほどだった。ハリード達は全員魚鱗を装備し、魚や水棲系モンスターを蹴散らしながら奥へ進んで行った。
最深部にはアビスゲートが。いつも通りハリードはゲートを閉じようとする。そこに魔海候フォルネウスが現れた。

「アビスの力を知れ!」

フォルネウスは巨大な魚の姿をしていた。玄武術や爪、ぶちかましなどで攻撃してくる。魚の姿をしているということで、エレンはナイアガラバスターを仕掛けた。アラケスと同じく、フォルネウスもサラと少年に気づいた。

「宿命の子よ。我らアビスの者に仇名すか……ならば力ずくで従わせるまで!メイルシュトローム!」

巨大な大渦巻きがハリード達を襲った。強力な全体攻撃を受けながらも体制を立て直し、攻撃を続ける。今までの戦いでハリード達も十分に強くなっている。フォルネウスを倒すまでにそう時間はかからなかった。最後に後ろに控えていたハーマンが前に乗り出した。

「俺に止めを刺させてくれ! フォルネウス!あの時の仕返しだ! 喰らえ!」

ハーマンは仕込み杖を抜いた。

「抜刀ツバメ返し!」

ハーマンは気合いを入れて居合い抜きを行った。フォルネウスの身体に大ダメージを与える。フォルネウスは絶叫を上げて倒れた。そして――

「ハーマン!?その姿は…」
「…あ?………足が元に戻ってる!?」

ハーマンの義足はいつの間にか無くなっていた。ハーマンは普通に二本足で立っている。それだけではなかった。ハーマンの髪は白髪だったのが黒髪になり、老人の姿をしていたのがすっかり若返っていた。ハーマンは水面に映った自分の姿を見る。

「……元の俺に戻ってる!」
「一体何が起きたんだ?」

その時、場が揺れた。アビスゲートを閉じなければならない。ハリードは慌ててゲートを閉じる。そして海底宮からバンガードへ戻った。



バンガードでは町の人々とユリアンやカタリナ達が戦勝を祝った。詩人もまた歌を歌う。

「君にも見えるバンガード 深く沈んで海底宮に 倒す使命はフォルネウス やったぞボクらの ハリード!!」

そして若返ったハーマン。

「俺は海賊ブラック。フォルネウスに片足を食いちぎられてからジジイの姿になっちまったんだ。おまえ達がフォルネウスと戦うと聞いて、奴に一太刀浴びせてやろうと思ってたんだが、元の姿に戻れるとは思わなかったな」
「じゃあおまえがイルカ像を盗んだ海賊ブラック本人だったのか。それで財宝のありかも知っていたんだな」
「ああ。ハリード、感謝するぜ。フォルネウスに仕返しをする機会をくれてありがとよ。おまえのおかげで俺は元に戻れた」



魔海候フォルネウスを倒した。アビスゲートはあと一つ。



フォルネウスを倒したハリードはバンガードを動かし、元の大陸へ戻ることにした。以前ランスで得た情報によると、残る四魔貴族、魔炎長アウナスのゲートは南方のジャングルにあるそうだ。グレートアーチからアケへ船が出ている。そこからジャングルを探索するしかないだろう。ハリードはひとますピドナに戻ることにした。

バンガードで帰還している最中、カタリナはハーマン――ブラックにマスカレイドと聖王の槍の手がかりについて尋ねていた。聖王の槍の手がかりは赤サンゴのピアスとジャッカルという言葉。それを聞いてブラックは顔色を変える。

「赤サンゴのピアス!それは、海賊ジャッカル一味のしるしだ。だが、ジャッカルの奴はオレ様が喉をかっ切ってやった。生きちゃあいまいよ」
「何だって!それじゃあ………海賊ジャッカルが親方の仇なんだね!」

やっとノーラの親方の仇が判明した。しかし…

「ジャッカルはもう死んでるのかい。赤サンゴのピアスが海賊ジャッカル一味のしるしなら、部下達がいる可能性もあるけど…」

そこでノーラは神王教団のマクシムスという男を思い出した。以前ミューズが夢魔の秘薬を飲んでしまった時、薬を持ってきた子供達はマクシムスを赤いピアスをした教団の偉い人だと言った。赤いピアスというだけで赤サンゴのピアスかどうかはわからないが、マクシムスは聖王遺物にとても興味を持っている。聖王の槍も、あの時手にいれた銀の手も聖王遺物の一つである。ノーラはマクシムスを疑っていた。

「その神王教団のマクシムスとかいう男がジャッカルじゃないかって?教団で高い地位にいる奴なら、下手に手を出すと厄介なことになるぞ」
「海賊ジャッカルの顔はわかる?」
「忘れるはずもねえさ!」

カタリナ達は情報を整理してみた。

マクシムスに関する情報は聖王遺物にとても興味を持っていること。そして赤いピアスをしていること。
海賊ジャッカルに関する情報は赤サンゴのピアスをしていること。そして聖王遺物の一つである聖王の槍を奪ったと思われること。

「つまりそのマクシムスとかいう奴の顔を見て、ジャッカルの野郎かどうか、そしてそいつのしてる赤いピアスが、ジャッカル一味のしるしである赤サンゴのピアスかどうか確かめればいいんだろ。わかった。おまえ達について行ってやるよ」

こうしてカタリナパーティーにブラックが加わった。



「ハリード、ノーラの仇が見つかったわ。ブラックが知っていたの」
「何?そうだったのか」

カタリナは先程のことを話した。神王教団と聞いてハリードの様子が少し変わった。

「そうか。だが神王教団に下手に手を出すと厄介だぞ。もしそのマクシムスが海賊ジャッカルだとしても証拠も無しに告発はできない」
「ブラックがいれば大丈夫よ」
「それでも機会をうかがうんだな。確かトーマスはピドナにいたはずだ。あいつはトーマスカンパニーの社長で会社の規模もどんどん拡大しているという。いろんな情報も手に入れることができるはずだ。よし、ピドナへ戻ったらトーマスの元へ行こう」



(神王教団か…)

ハリードはゲッシア朝ナジュ王国の王族の生き残りである。かつてゲッシア朝は神王教団を弾圧したが、逆に教団に滅ぼされてしまった。ハリードは神王教団に一矢報いる為、いつも情報を集めて機会を狙っていた。祖国を滅ぼした神王教団に対してハリードは憎しみと復讐心を抱いていた。いつか、生き別れの姫、ファティーマと再会し、王国を再建させたい。それがハリードの夢だった。





ハーマンがブラックになるところ、ゲーム中では何もセリフが無いので私なりに考えました。
その後、やっとマスカレイドの手がかり入手。というわけで次はマクシムスや神王教団のイベントになります。



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