マクシムスの正体を突き止めたカタリナパーティーはピドナの神王教団の元へ向かった。

「神王教団に興味のある方はどうぞ奥へ」
「マクシムス様の有り難いお話を聞きましたか?あなたも全てをマクシムス様へ委ねなさい」
「マクシムス様は我々を神王様へ導いて下さる」

奥ではマクシムスの説教が始まっていた。

「神王様の出現は間近に迫っています。我々は神王様を迎える準備を整えねばなりません。その為にはあなた方の力も必要です。さあ、全てを教団に委ねなさい。本日はルートヴィッヒ軍団長がおいでになっておられます。ピドナでの神王教団の活動に大きな力を与えることでしょう。さて……」
「ちょっと待って!」

説教の最中にカタリナは乱入した。そしてブラックが前に出る。

「随分髪と髭が伸びたがその顔は忘れねえ。何がマクシムス様だ!貴様の名前はジャッカルだ!」
「な、何だって!?」

人々は騒然とした。

「ジャッカルってあの海賊の?」
「皆の者、落ち着け。おい、おまえ達はマクシムス殿が海賊ジャッカルだというのだな?ジャッカルといえば今まで数々の罪を犯してきた海賊だ。もしマクシムス殿がジャッカルだというのなら捕えて裁きにかけねばならん。しかし顔つきが似ているだけで捕まえることは出来んぞ」
「ジャッカル一味の証しは赤いピアス。そして本人の腕には決して消えないジャッカルの刺青がある!」
「腕を見せて!」
「マクシムス殿、失礼だが腕を見せて頂けないか。あなたの身の証しにもなる。さあ、マクシムス殿」

マクシムスは人々の注目を一気に浴びる。それまで穏やかで優しそうな表情を作っていたマクシムスは急に凶悪な顔に豹変した。

「くそっ、ブラックめ!」

マクシムスは奥へ逃げていった。腕を見せようとしないことと、今の凶悪な顔つきを見て、人々は海賊ジャッカルであることを確信した。

「あのマクシムス様が海賊ジャッカル!?」

その場は大騒ぎになり、ルードヴィッヒも慌てて逃げて行った。カタリナはマクシムスの後を追う。マスカレイドを奪った張本人だ。なんとしても追いつめてみせる。
襲い来るモンスターを蹴散らし、ひたすらマクシムスを追っていたカタリナはピドナの旧市街に出た。

「神王教団の連中がここから出てきて新市街の方へ行ったよ。ああー、びっくりした!」

カタリナはピドナ新市街へ向かう。神王教団の人間は港へ行ったと聞き、ピドナ港へ向かう。そして港の船乗り達に話を聞くと、マクシムスはリブロフへ行ったという情報を得た。だが、次のリブロフへの便まで間がある。カタリナはひとまずハリードパーティーとトーマスパーティーと合流した。カタリナはマスカレイドを取り戻す為、ハリードは聖王遺物を集める為、トーマスはアビスリーグを壊滅の一環として、リブロフ行きの船に乗った。
マクシムスの行方はリブロフで一旦途切れた。トーマスはトーマスカンパニーの情報網を使って調べる。会社の規模が大きくなればなるほど一般人では手に入れられない情報も入ってくる。マクシムスはどうやら教団の本拠地である神王の塔へ向かったようだ。

一行は『ホテルリブロフ』に宿を取り、パブ『シェヘラザーデ』に集まった。カタリナはマスカレイドを取り戻す、ノーラは親方の仇がとれるということでそれぞれ意気込んでいた。明日にはナジュ砂漠を超えて神王の塔へ向かう。そこでマクシムスと決着をつけるのだ。
トーマスは現在トレードでアビスリーグ壊滅に向けて奔走している。神王の塔の物件もアビスリーグに加盟していた。トーマスパーティーはカタリナパーティーと共にナジュ砂漠を超え、神王の塔へ向かうことにした。

そしてハリードパーティーである。サラと少年は神王教団について聞いて怯えていた。神王教団は、今度の宿命の子は魔王を越え、聖王を越えた神王になるのだと信じて疑わない宗教団体である。そして教団を弾圧しようとした国を逆に滅ぼしたり、教団の活動を禁止しようとした国の権力者を暗殺したりするような過激な団体であった。もしサラと少年が宿命の子だと知られたら一体どんなことになるか。

「なんだか怖いね…」
「うん…」
「神王だなんて…僕は…そんな立派なものじゃないのに…」

不安そうな二人の元にレオニードがやってきた。

「聞くところによればアビスの魔物は宿命の子を一目見ればわかるそうだな。しかし普通の人間にはわからない。少年、おまえも神王の塔へ行っても平然としていればいい」
「レオニードさん…ありがとうございます」

今のところ宿命の子は少年一人で、サラのことはまだ秘密にしてある。宿命の子が二人いるなどとわかったら更に厄介なことになりかねない。レオニードはサラも宿命の子であることに気づいていたが、黙っていた。



ハリードは一人リブロフの町を歩いていた。ここには以前神王教団に滅ぼされたナジュ王国の生き残りが大勢移り住んでいる。ハリードはかつての家来の一人を訪ねていた。

「ハリード様!」
「おお、久しぶりだな。元気にしているか?」
「はい。それよりハリード様、ファティーマ様が生きているという噂をご存じですか?」
「姫が……生きている……」
「噂ではファティーマ様が諸王の都にいるというのです。ハリード様は諸王の都の場所をご存じのはず。もしも、噂が本当なら!」
「あそこは生きている者の行く所ではない。ただの噂だ」
「ぜひ、諸王の都へ!」

国が滅びて以来、離れ離れになってしまった生き別れの姫、愛しのファティーマ姫。ハリードは今まで旅を続けながら姫の行方を追っていた。姫を探し出し、神王教団に復讐し、祖国を再建する。それがハリードの夢だった。ファティーマ姫が諸王の都にいるという。ただの噂だと言ったものの、ハリードは心のどこかで引っかかっていた。



神王の塔。神王教団の本拠地であるその塔は信者のみ入れる。侵入するには神王教徒のローブを買うか、教団に一万オーラム寄付しなければならない。そこで一行は神王教徒のローブを買うことにしたのだが、ハリード一人は嫌がった。

「神王教徒のローブだと!誰が買うか!」
「塔へ侵入する為よ」
「そうだとしても俺は嫌だ!神王教徒は大嫌いだ。ローブを着た信者を見るのもな!」

ハリードが元ゲッシア朝ナジュ王国の王族だということを知っているエレン達は困った。ハリードが神王教団を嫌うのはもっともなことである。しかし信者のローブを買わないとなると教団に一万オーラム寄付するしかない。金にがめついハリードが憎い教団の為に一万オーラムも寄付するとは思えない。

「みんな、どうする?」
「ハリードにとって神王教団は自分の国を滅ぼした相手だからな。しかもハリードは王族なんだろう?平民より恨みは深いんじゃないかな」
「神王の塔は教団の本拠地だ。ハリードを連れて行ったら、何かとんでもない行動を起こすかもしれない」

一行は神王の塔へ侵入するに当たって、ハリード一人の存在が障害になっているように感じた。

一行が悩んでいると、パブのマスターがやってくる。

「仲間から外したい人がいるんじゃないですか?言いにくければ私が言ってあげますよ」

一行はマスターを見て考えた。

「マスター、実は……」



――その後。

「何だおまえ達!別れたければ俺に直接言えばいいだろうが!」

ハリードはいきり立っていた。パブのマスターを通して仲間から外したいと言われたのだ。怒るハリードにエレン達は申し訳なさそうな顔をする。

「ごめんね、ハリード。私達みんなで神王の塔へ行ってマクシムスを倒してくるから。聖王遺物を全て手に入れたらまたこのリブロフへ戻って来るから。それまでここで待っていてちょうだい。ね?」
「俺はおまえ達のリーダーだぞ!」
「心配しないで。トムやカタリナさん達も、他の仲間達も一緒だから」
「ちょっと待ておまえ達!」

こうしてハリードはパーティーメンバーから外されることになったのだった。





カタリナはマスカレイドを取り戻す為にマクシムスを追います。
神王教団のイベントではハリードや宿命の子であるサラと少年について、完全なオリジナルの設定で話を考えてあります。


で、

タイトルの通り、ハリード、リストラされることになりました(笑)。え?これハリード主人公の物語なんじゃないの?主人公なのに神王の塔攻略の都合でパーティーから外されるハリードでありました。しかし主役の座を外されたわけではありません。次回以降をお楽しみに。



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