玄城へ行ったら捕まってしまい牢屋に入れられてしまったハリード達。しばらくするとバイメイニャンがやってきた。

「こんな所におったのか。さあ、行くぞ。ゼルナム族がどこからやってくるか突き止めたぞ。どうもこのところアビスの妖気が国を覆っておると思ったのじゃ。草原を北へ行き、ゼルナム族の巣を叩くのじゃ!」
「老師!勝手なことをなさらないで下さい。黄京の帝に報告を送ったばかりです。命令を待たねばなりません」
「あんな子供に何が分かる。どうせ側近のツァオガオが勝手に決めてしまうのじゃ。まったく黄京の連中ときたら、ピーーまがピーーた奴ばかりじゃ。だいたいお前も分かっておらん。アビスの力が間近にせまっておるのじゃぞ」
「老師、下品な言葉使いはやめて下さい。アビスは我ら東の宿敵、我々はいつの日かアビスの魔貴族共を討ち滅ぼす為に力を蓄えてきました。アビスの者共と戦うのに、私は何のためらいもありません。しかし、この西から来たとかいう連中を信じるかどうかは別です」
「西から人間が来たというのは、何かの前兆じゃ」
「わかりました。ここは老師の言葉を信じましょう」

バイメイニャンとヤンファンの話し合いの結果、ハリード達は牢屋から解放された。

「さあ次はゼルナム族の巣を叩くのじゃ。今度はあたしも一緒に行くとしよう。ファンファン、お前も来なさい」
「その呼び方はやめて下さい!」

ハリード達はバイメイニャンとヤンファンと共にゼルナム族の巣へ向かうことになった。ヤンファンはバイメイニャンの説得により、ハリード達への態度はだいぶ軟化していた。この異国情緒溢れる玄城も快く案内してくれた。

「どうだ。東もなかなかだろう?」

ゼルナム族の巣へ向かう為にまたムング族の村に戻る。ツィーリンは玄城での出来事を聞いて腹を立てていた。

「もう!ヤンファンったら!西の人達に手荒な真似をして!」
「そう怒るなツィーリン。将軍たる者、異国の者をそう簡単に信じるわけにはいかないのだ」
「これ、おまえ達、喧嘩しとらんでさっさと行くぞ。リンリン、ファンファン」
「その呼び方はやめて下さい!」

大草原を北へ進み、ゼルナム族の巣へ向かう。中は非常に入り組んだ作りになっており、モンスターとの戦いも避けづらかった。あちこち彷徨った結果、最奥部に魔王の鎧を発見した。禍々しい妖気を放ち、周りにはゼルナム族がたくさん集まっている。ハリード達は後方まで攻撃の届く技で攻撃する。バイメイニャンは蒼龍術のトルネードを使う。東方随一の術使いと言われるだけあって、その威力は絶大だった。ゼルナム族は倒しても倒しても次から次へと湧いてくる。魔王の鎧が元なのだろうか。魔王の鎧とゼルナム族を倒すと、鎧の妖気がおさまった。もうゼルナム族の姿は無い。レオニードはしばらく魔王の鎧を調べていた。

「この鎧がゼルナム族の根源だったようだ。今はもう大丈夫だ。この魔王の鎧を身に着けても問題無い」

ハリード達は魔王の遺物である魔王の鎧を入手した。バイメイニャンからも今回の働きを労われた。

「これで一安心と言ったところじゃ」
「西の戦士達の力、とくと見ました。今後も力を合わせてアビスの魔貴族と戦いましょう」
「老師、ヤンファン、ハリード達は西へ帰りたいのよ。残り一つのアビスゲートは西にあるんですって」
「ふむ、そうか。それでは西へ向かうルートを考えなければならんのう。わかった。ひとますはムング族の村へ戻るぞ」



ムング族の村へ戻ったハリード達は一晩休むことにした。しかし西へ戻れるのかどうかという不安がある。テントの中でムング族からもらった食事を摂る。

「とにかく俺達はこの土地に不慣れだ。あの婆さん達の協力を得ながらなんとか西へ向かうしかないな」
「そうね。早く戻って残りのアビスゲートを閉じて、世界を平和にしたいわ」

そう言うとエレンはムング族からもらった飲み物を一気に飲み干した。

「……あら……?」
「エレンどうした?」
「……これ……お酒みたい……それもかなり強い……」

その時、ムング族の者が飲み物を誤ってムング族のとびきり強い酒を入れてしまったと謝罪にきた。サラと少年は慌てて飲み物から手を離す。レオニードは超然としている。ハリードは強い酒が好きで飲んでも平気だった。しかしエレンは、その酒を飲んで酔っ払ってしまった。



その後、酔っぱらったエレンの介抱に悩まされるハリード。

「いーい?ハリード!絶対に四魔貴族を全部倒して世界を平和にするのよ!」
「わかったわかった」
「そして平和になったらサラをしっかりした信頼できる男の人と結婚させて幸せにするの!それが私の夢よ!」
「お、お姉ちゃん……」
「サラには体格のいい、強くて優しい男の人が合うと思うわ!だってサラは小柄でほっそりしてて、性格も引っ込み思案だもの。ひょろひょろっとして気が弱そうな情けない男じゃ、安心して結婚させられるわけないじゃない!」

酔っぱらっているが、エレンの言っていることは一応的を得ている。サラはトーマスは果たしてエレンの言う体格のいい強くて優しい男に当てはまっているのだろうかと思った。そしてサラに思いを寄せる少年は自分のことを考えてみた。少年の体格は細身である。力には自信があるが、見た目はひょろっとしている。おまけに気が弱い性格であることは自覚している。

「いーい?サラ!あんたの結婚相手は私が試してあげるから!この私と格闘して勝てるくらいの強い男じゃないと、あんたを嫁にやれないわ!」
「お、お姉ちゃん……」
「落ち着け、サラ。エレンは酔ってるんだ」
「あたしは酔ってなんかいないわよ!どんな強い酒を飲んだって平気なんだから!」

サラは不安になった。トーマスは確かに文武両道だが、エレンと格闘して勝てるくらいの強い男かどうかはわからない。かつてシノンの村で腕相撲大会が行われた時、優勝したのはエレンである。一方、少年も青ざめていた。

(サラと結婚したければエレンさんと格闘して勝たなきゃいけないのか……)

その後、酔っぱらったエレンの相手をし、介抱するハメになったハリードであった。何かとハリードに絡み、サラと少年の不安を煽る。レオニードは絡まれても紳士的にスルーする。その晩はエレンの酔っ払い事件で一夜が過ぎた。



翌日。

「……頭いたーい」
「エレンさん、大丈夫?昨日、間違って強いお酒飲んじゃったって聞いたわ」
「大丈夫よ。ありがと、ツィーリン」
「今朝、ムング族で行方不明になってた人が帰ってきてね、不思議なことを言うのよ。草原で迷って西へ西へと行ってしまったら、そこに象の町があったんですって。あまりにも信じられないからきっと夢だって言ってるの」

ハリードパーティーとツィーリン、バイメイニャン、ヤンファンは今後のことについて話し合った。ここから西へ向かう方法である。乾いた大河や死の砂漠を超えるのは得策ではない。別のルートを探そうということになった。

「この土地は600年前の魔王の侵略によって多大なダメージを受けた。その後の600年の間にようやく復興してきたがな」

バイメイニャンが東方地方について語るとレオニードが口を出した。

「西の人間の歴史では東方は600年前、魔王との戦いで滅亡した不毛の土地と言われてきた。聖王時代になり、西の諸国が大会議を結成し、魔王時代の傷を癒しつつある時でも、東の大地が回復することはなく、聖王でさえあきらめた。それ以降、東の土地は見捨てられた土地と呼ばれてきた」
「フン!西の人間共が勝手なことを言いおって!わしらは昔からちゃんと生きて生活しておる。国としても時間はかかったが徐々に復興してきておるのじゃぞ」
「そして問題はここから西へ戻る方法だ。この見捨てられた土地の北部は、命ある者をその地に寄せつけない、極寒の地。魔王はその地にあった全ての物を凍らせた。南部は不毛な乾燥地帯。既に我々が超えてきた死の砂漠だ。残るは中央部。草原を西へ向かい、西の国に戻る道が見つかるか」
「この草原から西は人の進入を拒むが如く枝を張り、蔦を絡ませる大森林が広がっている。ねじれた森とも呼ばれ、未知の者が住むとも言われている」

話し合った結果、ハリード達は草原を西へ向かい、ねじれた森とも呼ばれる大森林へ向かうことにした。何が待ち受けているかわからないが、死の砂漠よりは危険は少ないのではないかとの判断である。

「で、あんた達、東の人間も一緒についてくるのか?」
「ええ、もちろんよ!私、一度西へ行ってみたかったの!」とツィーリン。
「西の術を研究してみたいからのう」とバイメイニャン。
「力を合わせてアビスの魔貴族と戦おうではないか」とヤンファン。

こうしてハリード達と東方の三人組は共に旅立った。大草原を西へ西へ。元の西の国々へ戻る為にひたすら西を目指す。その先に待ち受けていたのは――


象の町だった。





エレンが酔っぱらうのは私の独自のエピソード。サラと結婚するにはエレンと格闘して勝たなきゃいけない!?だとしたら男の方は大変ですね(笑)。
東方から西へ戻るには、実際のゲームではマップ移動であっさり戻れるのですが、ちょっと考えがあって独自の設定で書いています。東方の見捨てられた地については初期設定資料集「プロローグ」を参考にしました。

次回はラシュクータです。



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