ここはグランス城。シャドウナイトとジュリアスの2人が密談をしている。

シャドウナイト「デビアスは死んだか」
ジュリアス「はい。ただいまガルーダがマナのペンダントをこちらへ運んでいるところでございます」
シャドウナイト「よし!例のジェマの素質を持つ男とやらも始末したしこれで我が野望を――」
ジュリアス「そのことなのですが、あの男、信じがたい体力で完治しました。今回デビアスを倒したのも奴です」



ぬわあにいいいいいーーーーー!!!!!



シャドウナイト「ジュリアス貴様っ!今度こそ大丈夫だと言ったではないか!!」
ジュリアス「どうやら奴はジェマの素質を持ち――」
シャドウナイト「だいたい何だそのジェマの素質とやらはっ!高い所から落ちても死なないことなのか!!」
ジュリアス「そ、それは――」
シャドウナイト「ええい、もういいっ!どうせ奴はマナの少女とペンダントを取り戻しにここまでやってくるのだろう。いっそのこと、この手で自ら止めを刺してくれるわ!」

シャドウナイトはしばらく考え込んでいた。

シャドウナイト「よし!ジュリアス、グランス城内を改築するぞ!」
ジュリアス「どうなさるおつもりで?」
シャドウナイト「私はボスとして屋上で奴を待ち構える。それまでに様々なトラップを仕掛けるのだ。正面からは入れないようにし、地下から潜入させるのだ。そしてキマイラを待機させておけ。道具屋にはわざとアイテムを売るように言いつけておけ。宿では傷を癒せるようにな」
ジュリアス「…一種のゲームというわけですか」

シャドウナイト「そうだな。他にも様々なトラップを仕掛けておこう。一部の部屋には鍵をたくさんかけておいて出られなくなるようにしておこう」
ジュリアス「そしてマナの娘と最上階で待っているというわけですか?」
シャドウナイト「いや、あの娘は最初のステージ、キマイラを倒した後に合流させろ。そしてアイスパイ・ウィザード・ファンタズムには積極的に奴をモーグリ状態にさせるように命令しておけ。惚れた女の目の前で無様なモーグリになり、振られるがいい。そして死ぬがいい。ハッハッハッハッハ」
ジュリアス「……………」

シャドウナイト「さあ、来い、ジュリアス!グランス城改造計画を始めるぞ!」





シャドウナイトがジュリアスと共にグランス城内の設計図を描いている間、マリアは大人しく与えられた部屋にいた。
ロイはどうやら無事回復し、既にこちらへ向かっているとのことだ。毎日ひたすら祈り続けた甲斐があった。
愛しい人が無事でおり、しかもまたもや自分を助けにこちらへ向かってきていると考えただけで胸がときめく。
しかし、ロイの無事を確認してしばらく落ち着いた後、マリアは再び自分の使命を思い出した。

自分はマナの一族であり、マナの樹を邪悪に染まらないように守る使命を負っている。

再びマナの樹に危機が迫っているというのに自分は未だに何も出来ていない。敵に捕らわれたままである。
母はジェマの騎士の助けを借りてグランスの野望を阻止するように言った。
だがジェマの騎士であるボガードもまたロイと同じく飛空挺から落とされてしまった。おそらくもう死んでしまっているだろう。
あの時、ロイが窓の外に回っている間、ボガードは言った。ロイもまたジェマの素質を持つ者だと。

マリアは考えた。

私には一体何が出来るのだろう?

母は皆に勇気と希望を与え、ジェマの騎士を導き、勇敢に戦ったという。
今となっては……………

いずれロイが自分を助けにここへやってくる。ジェマの素質を持った彼が。
ロイと一緒に戦おう。
そしてグランスの野望を阻止しよう。

マリアは心の中でそう決心し、静かに、敢えてグランスには逆らわずに新たに与えられた部屋で過ごし、ロイの到着を待つのだった。
マナの一族としての使命を胸に刻んで。





一方ロイは奇岩山へ向かって進んでいた。途中に洞窟がある。どうやらここを抜けなければ奇岩山には行けないようだ。
洞窟の入り口ではチョコボが必死にロイにくっついて一緒に行きたがっている。しかしここから先は危険な場所である。チョコボを連れていくわけにはいかない。

ロイ「ごめんな。ここから先はいくらなんでも危険過ぎてお前を連れていくことは出来ないよ。思えばほんの少しの間だけだったけど、お前と旅ができて楽しかったよ。ほら、ギサールの野菜は買えるだけ買った分をここに置いていくから、好きなだけ食べなよ。お前は野生のチョコボなんだから後は自分でなんとか生きていけるだろう?」
チョコボ「クゥ…」

チョコボはとても寂しそうな顔をしてロイをじっと見つめた。

ロイ「そんな顔をしても駄目なものは駄目だ!これからは自由に生きていけ!」

そう言うと、ロイは思い切って洞窟の中に入って行った。


滝の洞窟は特に迷うところもなく順調に進んでいった。途中で巨大な蟹のモンスターが襲いかかってくる。ロイは攻撃を避けつつ弱点の目を狙い、それほど苦労もせず倒した。


滝の洞窟を抜けてから奇岩山までもそれなりの距離が合った。ロイは途中にあった回復の泉などで休息をとりつつ、手ごわい敵を倒しつつ、なんとか奇岩山に到着した。
中に入ったはいいが、何度も何度も入口に戻ってしまう。

ロイ「どうなってるんだ、ここは?」
(一旦入口に戻って、そこから目印を付けながら進んだらどうですかい?)

今となっては相棒となるのはこの謎の守護霊だけになってしまったのかと思いながら、ロイは先へ進んだ。
北へ進んだ扉の先にはゴーレムがいたが、どの武器で攻撃しても効かない。

ロイ「くっ、こうなると魔法で戦うしかないのか?」
(あんまし魔法は効きそうに見えませんぜ。それより今まで行ってない、もっと他の所を探索してみやしょう。今までもそうやって新しい武器が手に入ったりしたじゃないすか)

ロイは一旦退却し、別の道を探った。また入口に戻されたりしながらも他の道の最深部へと辿り着く。そこにはサイクロプスが待ち受けていた。
サイクロプスはモーニングスターをぶんぶん振り回しながら突進してくる。あの鉄球に直撃したら一撃でやられてしまいそうだ。ロイは脇へとかわしながらうまく攻撃をし続ける。今までの戦いの経験でだいぶ敵の行動や弱点を見極められるようになったのだ。
無事サイクロプスを倒すとモーニングスターが手に入る。直撃は避けたものの、この重量で力一杯振り回せば壁をも破壊することが可能だろう。これなら先程のゴーレムにも通用するかもしれない。ロイは今まで来た道を引き返した。


再びゴーレム戦。モーニングスターを手に戦おうとするロイに謎の守護霊が話しかけた。
(旦那、さっきも見てて思ったんですけど…)
ロイ「何だ?」
(コイツって移動しながらひたすら突進してくるだけですが――)
ロイ「そうだな。さっきのサイクロプスと同様にうまく攻撃を避けて倒そう」
(そうじゃなくて――あの大きさなら狭いところまでは入って来れないんじゃないですかい?)


…………………………




――しばらく後、


ロイは入口の狭いところで待ち伏せして近づいてきたゴーレムをひたすらモーニングスターで攻撃し、かすり傷ひとつ受けることなくあっさりと倒してしまったのであった。

ロイ「なんか卑怯なやり方だった気もするけど…」
(これも戦略のうちですよ。ほら、やっこさん、サンダーの書を落としやしたぜ。これでまた使える魔法が1つ増えましたね)
ロイ「…そうだな……なんてことを気にしてる場合じゃない!早くグランスへ向かわないと!」


ロイは見事奇岩山の内部を通り抜け、頂上の橋を渡り終えた。その時――

ロイ「……?」

爆撃音が鳴り、橋が跡形もなく消し飛んでしまった。それがジュリアスの仕業だとはロイには知る由もない。

ロイ「もう後戻りはできないな…」

そう言うと、ロイは決意を新たにし、以前自分が脱走したグランス城に向かうのだった。今度は愛する人を救う為に。





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