ロイは奇岩山を抜け、とうとうグランス城に辿り着いた。以前シャドウナイトから突き落とされた滝が目に入る。城の中へ入ると、正面の扉は閉まっていた。仕方なく斧で木を切り倒しつつ地下から潜入する。道なりに進んでいくと、キマイラが待ち受けていた。
キマイラは炎を吐いたり急降下で体当たりを仕掛けてきたが、様々な戦いを経験してきたこの時点でのロイの敵ではなかった。モーニングスターをぶんぶん振り回し、見事治すことに成功した。


次の部屋に入るとマリアがいる。

ロイ「マリア!助けに来たよ!」
マリア「嬉しいわ!」
ロイ「ペンダントは奪われてしまった…既にシャドウナイトの手に渡っているかも」
マリア「取り返さなくちゃ」
ロイ「この先は危険だぞ」
マリア「私はマナの一族。マナの樹を守る責任があります。さあ行きましょう。王座の間は城の最上階です」
ロイ「よし!先へ進もう!」


しばらくすると城壁の上に出た。近くを探索していると、道具屋と宿屋を兼用している場所がある。

ロイ「君は…」
店主「欲しいものがあったら言って下さい。何でも売りますよ」
ロイ「敵である僕に何故?」
店主「シャドウナイト様からの伝言です。『見事最上階までこれば相手をしてやる』と。それまで私の店やベッドは自由に使って下さい」
ロイ「…鍵とマトックをくれ」
店主「はい、毎度。ここにはベッドもあるのでどうぞ休んでいって下さい」
ロイ「……………」


ロイ「マリア、シャドウナイトの行動について何か知っているかい?」
マリア「これは一種のゲームだと言っていました。私は敢えて大人しく彼らに従い、先程の部屋で待っていたのです」
ロイ「そうか……傷を癒してしばらく休んだらまた出発しよう」


城壁をつたって再び内部に潜入し、ひたすら道を進んでいくロイとマリア。敵は積極的にモーグリ状態にしてくる攻撃をしてきた。モーグリにされるたびに恥ずかしい思いをするロイ。そして最上階では――


シャドウナイト「フッフッフ、いいぞ、その無様な姿で戦い続けられるか?ここまで辿り着けるか?その前に惚れた女に振られてショックを受けるかもな。ハハハハハ」

シャドウナイトはジュリアスの魔法で作り出した映像でロイの状態を見ていた。


一体さっきから何回モーグリ状態にされただろう。ロイはもう気恥しさで一杯だった。マリアの方を見ることもできない。

マリア「ロイさん、さっきからどうしたんですか?」
ロイ「え?い、いや、その…だって…」
マリア「ロイさんのモーグリ姿、とっても可愛らしいですね」
ロイ「え?」

マリアは純粋に、にこっと笑って見せた。それを見たシャドウナイトは――


シャドウナイト「そ、そんな馬鹿なあーっ!あれでは絶対に振られると思ったのに!!」
ジュリアス「シャドウナイト様、奴等を甘く見ない方がいいですよ。もっともこれからが正念場ですがね。われわれが仕掛けたトラップを見事突破できるか」
シャドウナイト「そうだな。私も肩慣らしておいた方がよさそうだ。奴が最上階までこられたら、それでもうお遊びは終わりだからな」

シャドウナイトが軽く剣を振るって肩慣らしをしている最中、ジュリアスは魔法で作り出した映像を消し、こっそりとマナのペンダントをすり替えた。


自分達が今まで覗き見されていたことなど思いもよらず、ロイとマリアは先を急いでいった。途中でまたベッドがある。

ロイ「ここで少し休もうか」
マリア「ええ」

2人はベッドに腰掛けた。

マリア「お怪我は大丈夫ですか?」

マリアがいつものようにロイの傷を癒していると、ロイは真摯な眼差しでじっと見つめてきた。
マリアは急に真っ赤になってしまった。

ロイ「マリア…しばらく会わない間になんだか変ったね」
マリア「マナの一族としての使命を言い渡された後、すぐにグランスに捕らわれてしまいましたから…飛空挺でもほとんどお話しできなかったですね」
ロイ「君を守れず…すまなかった」
マリア「でもあなたはまた助けに来てくれました。これで3度目」

マリアは胸の鼓動が高まるのを感じた。しかし、今は恋心などを告白している場合ではない。慌ててマナの一族としての使命を思い出す。

マリア「………でもあなたにばかり頼っていてもいけません。私はマナの一族。ジェマの素質を持つ者と共にマナを悪用しようとする者達と戦わなければなりません」
ロイ「マリア…」
マリア「まず、戦いを終わらせましょう。私達のことはそれから」
ロイ「………そうだな………そろそろ行こうか」


途中、鍵がなくなりそうになりながらも、なんとかギリギリで間に合い、先に進むことができた。

ロイ「ふう…そろそろ最上階かな…ん?あれは…」

見ると魔方陣が2つある。そして敵が何体か徘徊している。

(旦那、もしかして例のアレじゃないですかい?砂漠の迷宮にもあった、敵を魔法で凍らせてスイッチの上に置くと先へ進めるってアレ)

ロイはまず目障りなウィザードを倒して、ブリザドの書を構えながらダークストーカーを狙って雪ダルマにし、魔方陣の上に置く。
1体目は無事うまくいった。だが2体目はなかなかこちらにきてくれない。ダークストーカーは剣士の姿をした魔物なのだ。他のモンスターと同じく自我がなく、好き勝手に動いて攻撃してくる。そして、2つ目の魔方陣まで運べるような場所にはなかなか来てくれないのだった。
ロイは少し距離を開けた状態から様子をうかがっているが、いつまで経っても残り1体のダークストーカーはこっちへ来てくれない。

ロイ「あ〜もうっ!お願いだからもっとこっちに来てくれよ〜〜〜!お前の剣の腕はよくわかったからさあ!」
マリア「……………」



――数十分後


ロイ「はあ、はあ、やっとうまく凍らせてスイッチの上に置いたぞ…」

なんだか妙なことでストレスが溜まった気がする。

マリア「ロイさん、しっかりして。そろそろ最上階よ」
ロイ「そうだな。気を引き締めて行こう」


玉座の間を過ぎて階段を上がると、そこは最上階。シャドウナイトが待ち構えていた。

シャドウナイト「ロイ、久しぶりだな。剣さばきが少しは上達したようだが果たしてこの私に通用するか」
ロイ「黙れ!ウィリーの仇、とらせてもらうぞ」
(ウィリーって誰っすか?)

ロイの頭の中で予想外のツッコミがきた。


ロイ「お前忘れたのかあああーーー!!!僕の親友の名前だあああーーーっ!!!!!」
(いやあ、守護霊になってから時間が経つと記憶も薄れていって…すみませんねえ)

ロイは頭の中の謎の守護霊と喧嘩していて、そしてハッと我に返る。シャドウナイトが非常に不審な目でこちらを見ていた。マリアは何も言わず佇んでいる。

シャドウナイト「…フッ、どうやら高いところから落ちて頭を打ったようだな。そのような状態で果たしてこの私に勝てるかな?」
ロイ「くっ…マリア、外に出ていてくれ。きっと苦しく…そして最も危険な闘いになるだろう」
マリア「わかったわ…」

マリアは本当はロイと共に戦いたかったが、敢えてロイの言葉に従った。


マリアが外に出ていくと、シャドウナイトの雰囲気が一気に豹変した。

シャドウナイト「なかなか良い心がけだな。…さて、お遊びはこれまでだ。ロイとやら、お前の剣術は奴隷時代から見ていたぞ。この城には様々なトラップを仕掛けておいたがここまでこれたということは、剣の腕も上がり、また賢くもなったようだな」

シャドウナイトは兜を脱いだ。緑の髪がさらりと腰までたなびく。

シャドウナイト「本番はこれからだ。さあ、かかってこい!」





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