シャドウナイトは強かった。今までの敵とは比べ物にならない程の剣術を備えている。ロイは必死に剣を振るったが、斬っても突いても相手は軽くかわして攻撃してくる。シャドウナイトの緑の長髪が風になびく。まるで流れるような動きに呆然としてしまいそうになりながらも、必死に防御する。それは今までロイが戦いの経験を積んで培ってきた実力の自信を一気に奪うものであった。

ロイ(くっ…強い…強すぎる…さっきから僕はものすごいダメージを受けているのに奴にはかすり傷ひとつ負わせられない。どうすれば…)

ケアルを唱えながら必死に防御していると、ロイはボガードの言っていた言葉を思い出した。


ジェマの騎士は精神力で武器の能力を最大限に引き出すことが可能なのじゃ。パワーを最大までためてみい。きっと今までとは違う効果が見られるだろう


ロイは、かっと目を見開いた。シャドウナイトも一瞬引く。ロイは己の精神力を最大限に集中し、それから再びシャドウナイトへ向かっていった。今度目を見開いたのはシャドウナイトの方だった。ロイが急に猛攻を仕掛けてきたのである。途切れる暇もなく剣戟の音が延々と響く。そしてロイは一旦身を引いて距離をとったかと思うと驚くべき瞬発力で、全身でシャドウナイトに突き攻撃を仕掛けてきたのだ。しかも2回も。さすがにシャドウナイトもこれは本気で相手をしないと自らの命が危ないと思い始めた。

シャドウナイト(これが奴の本気か…)

お互い目にも止まらぬ速さで動きまわり、攻撃を仕掛けたりかわしたりする。ロイは今度は高速で自らの身体を回転させながら剣を振り回した。かすっただけでも鎧にひびが入り、徐々にシャドウナイトの身体にも傷が入ってくる。

シャドウナイト「くっ…」

シャドウナイトは押され気味になっていった。ロイはもう他のことは一切考えず、ひたすら精神を集中して、目の前の相手を倒すことだけを考えた。

戦いは続いた。2人はまるで永遠に戦い続けているような気すらしてくる。その空間に存在するのはロイとシャドウナイトの2人だけ。どちらも相手を倒すことだけを考えて必死になっていた。お互い傷だらけになりながら、それでもひたすら戦い続ける。2人の戦いは最早誰にも止めることはできない。戦いが終わるとしたら、それはどちらかが相手を倒すまでだ。

戦いが長引けば長引くほど、ロイは精神集中力が高まっていった。なんとかしてシャドウナイトとの間に決着をつけたかった。それはシャドウナイトの方も同じだった。このジェマの素質を持つ、自分の野望を阻む存在をなんとか消し去りたかった。この戦いだけで一体何度剣が交わったか。幾多の攻撃が繰り返されたか。しかしそれもそろそろ終焉を迎えそうだ。

シャドウナイトの傷はどんどん深手が多くなり、徐々に動きが鈍り始めた。行動も必要最小限の動きしかせず、どうやら一撃必殺のチャンスを伺っているようである。しかしロイはそんな相手の考えを充分に読み取っていた。ロイも一旦距離を置き、しばらく様子を伺い、精神を集中し、一気に力を溜め、一息にシャドウナイトの身体に斬りかかった。剣はシャドウナイトの鎧と身体の奥深くまで斬り込み、血がどうと溢れ出す。とうとう決着がついたのだ。ロイが勝利を収めたのだ。

ロイは見事シャドウナイトを倒し、マナのペンダントを手に入れたが…

ロイ「……ち、違う!偽物のペンダントだ。本物は一体?」

屋上から下に降りてもマリアの姿はない。

ロイ「マリアどこだ!シャドウナイトがいなくなった今、残る人間は…ジュリアス。そうだ滝つぼに違いない!」


城の外に出るとマリアがふらふらと歩いている。

ロイ「マリア!」

マリアはロイの方を見たが、そのまま歩いていく。その表情には、瞳には何も映されていないように見えた。

ロイ「マリア?」

マリアは黙ったまま滝つぼへと歩いていく。

ロイ「マリア、どうしてそんなとこに?」

するとどこからともなく声が聞こえた。

ジュリアス「もう手遅れだよ、ロイ君。マナの力は私のものだ」
ロイ「ジュリアス!」
ジュリアス「さあマリア、このペンダントをかざし、水を天に昇らせる呪文を唱えなさい」
ロイ「マリアやめろ!こっちへ来るんだ!」
マリア「………………」

ロイ「どうしたんだ?ジュリアス、お前マリアに何をしたんだ」
ジュリアス「私はかつてマナの力を手に入れたバンドールの子孫…小娘一匹を操る術など簡単なことよ。さあ、今こそバンドールの復活を祝う時!マリアよ…呪文を唱えよ!」
マリア「オエコマバ イリト ペモパボサ ムワラタ …」

マリアが呪文を唱えると、滝が逆流し、ジュリアスとマリアは滝を昇っていく。

ロイ「待て!」
ジュリアス「地獄へ落ちろ!」

シャドウナイトとの戦いで心身共に疲弊していた状態でジュリアスの魔法攻撃を直撃したロイは、再び滝から落ちていった。





ロイがかろうじて意識を取り戻した時、そこは砂漠だった。

ロイ「もうだめだ…身体が動かない…僕もここまでか……」
(しっかりして下せえ!旦那!)
ロイ「…僕は…まだ…独身だ…ガクッ…」
(旦那あああーーー!!!!!)

ロイはそのまま倒れてしまった。

(あああ、どうしよう。このままではジェマの唯一の希望である旦那が…!)

その時、どこからともなく鳥の鳴き声が聞こえた。

「クエッ」

ロイ「………あれは…?」

ロイはそのまま意識を失った。

(ああっ!お前は旦那が飼っていたチョコボ!滝の洞窟の入り口で置いてきたのに…主人を追ってきたのか!…ああ、そんなにボロボロになって、きっと本来通るのが無理な道なき道を通って来たんだろう。なんてこった…)

チョコボは見るも哀れな姿になっていた。

チョコボ「クゥ…」

チョコボはロイに近づくとそのボロボロの疲弊した姿で必死で主人を自分の背中に乗せた。そして今にも倒れそうになりながらもロイを近くの町までなんとか運んで行くのだった。


町の入口でロイとチョコボは町の子供に発見された。

子供「ねえサラおばちゃん、あそこに人が倒れてるよ」
サラ「まあ、ほんとだわ」
子供「鳥さんもこっちで寝てるよ」
サラ「ガラスの砂漠の熱にやられたのね…連れていきましょう」





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