ここはメノスの村。素朴な村人達が平和に暮らしている。そののどかな雰囲気を打ち破った者があった。急にある家から大きな音がしたのである。

「何じゃ何じゃ。天から人が降ってきよった…生きとるぞ!屋根がクッションになったんじゃ」

ある日突然、のどかな村に空から人が降ってくる。まさに青天の霹靂である。しかも信じがたいことに、いくら家の屋根がクッションになったとはいえ、まだ生きている!

「ロイ?ロイね!」
「何じゃお主の知り合いか?」
「ロイ、しっかりして。ロイ!」

一命こそとりとめたが、かなりの重傷を負ったロイは村人達の手厚い看護を受けた。





一方、グランス公国では――

シャドウナイト「この馬鹿者!いくらマナの一族の少女を捕らえても、封印を施したペンダントがなければマナの樹に近づけないではないかあー!!」
ジュリアス「申し訳ございません、シャドウナイト様。私としたことがとんだ手落ちをしてしまいました。しかしジェマの騎士の素質を持つ男は始末しました」
シャドウナイト「ちゃんと止めは刺したのだろうな?」
ジュリアス「私の術を受け、あの高さから落ちて生きているはずがありません」
シャドウナイト「それでは駄目だっ!以前もあれだけの高さから落ちて生きている奴だからな!」
ジュリアス「それはあの場所だったからですよ。あの滝の水はマナの樹の根元から湧き出たものだと言われています。おそらくそれでマナの加護を受けて助かったのでしょう」

シャドウナイト「う〜む、そうか。…ではマナのペンダントはどのように捜索する気だ?」
ジュリアス「あの男が落ちたのはメノスの村のようです。あの辺にはデビアスがいますから、奴にペンダントを持って来させましょう」





デビアスがメノスの村で手当てを受けている若者の情報を手に入れるのはさほど困難なことではなかった。何気なく探りを入れ、若者の元にマナのペンダントがあるをことを突き止める。若者はアマンダという女が懸命に看護しているようだ。手下を使い情報を集め、デビアスが住んでいるジャドの町でハープを奏でている詩人がアマンダの弟だということも知った。そしてデビアスはアマンダの弟レスターを人質にとり、アマンダにペンダントを持ってくるように脅した。


デビアスがこのようにロイとマナのペンダントに関する情報を探り、シャドウナイトに報告している間、マリアは――


マリアはあれからずっと悲嘆にくれていた。ロイが――この世で最も信頼する男性が――死んでしまったのだ。母の形見と共にマリアの元から去って行ってしまった。マリアは悲しみのあまり、この1週間ほとんどろくに食べていなかった。ずっと泣きながら寝込んでいたのだ。ロイが死んでしまったショックがマリアにとっては大き過ぎた。今グランスはマナのペンダントを探しているところだろう。そしていつかペンダントは発見され、自分は何もできず世界征服の為利用されてしまうのか…限りない絶望が少女を支配していた。

食事も喉を通らず、このまま死んでしまおうかとも思った頃、ジュリアスが部屋にやってきた、そしてロイが一命を取り留めたがまだ意識不明の重体が続いていること、グランスはマナのペンダントを改めて手に入れようとしていることを告げて出て行った。ジュリアスとしてはマナの一族であるマリアに死なれては困るのだろう。しかし、そんなことはどうでも良かった。

――あの人は――ロイは――生きている――

その想いだけで十分だった。それからマリアは毎日ロイが無事回復するように祈り続けた。ロイが生きているというだけで世界が明るくなったような気がする。ビンケットの館でも、飛空挺でも必死に自分を助けてくれた精悍な顔つきの若者。普通であったなら到底無理なほどの苦労をしてまで自分を助けてくれた優しく、強い、彼。逞しい体つきで、旅の道中もしっかりと自分を護ってくれた頼もしい背中。

マリア「…ロイ…」

マリアは自分の身体が熱くなるのを感じた。ロイのことを考えるだけで頭がいっぱいで何も手がつかなくなる。マリアは、自然と、自らの想いを悟った。



私は彼を愛しいと想っているのだ。



内心に仄かな恋心を秘めながらマリアは毎日ひたすら祈り続ける。この世で最も大切な――愛しい人の為に。





アマンダはこの数日間、頭を悩まされていた。弟のレスターを人質に取られてしまったのである。そしてロイが持っているペンダントを持ってこいと。
デビアスは残酷な人間である。自分の嫌いな者は皆、獣の姿に変えてしまうのである。このままでは弟が危ない。しかし交換条件のペンダントはロイが遥か上空から落下してきた時もしっかりと握りしめていたものである。余程ロイにとって大事なものに違いない。アマンダは数日間、逡巡した挙句、とうとう心を決めた。

夜明けが近づく頃、アマンダは今まで通りロイの看病をしていた。ロイの意識はまだ戻らない。そして呟くようにロイに話しかけた。

アマンダ「ロイ、久しぶりだね。無事逃げのびてたんだね…嬉しいよ。グランスの奴隷だった頃を思い出すよ…でもね、あたい…ごめんよ」





ロイが目を覚ましたのはある民家の一室だった。

ロイ「…ん?ここは?……あっ!!ペ、ペンダントがない!………アマンダの記憶がかすかにあるが…あれは…夢か?」

とりあえずロイは外に出てみることにした。

老人「目が覚めたか、天から来た若者。ここはのどかな村、メノスじゃ。アマンダの知り合いだそうじゃな」
ロイ「やっぱりアマンダがいたんですね!彼女は今どこに?」
老人「アマンダは朝慌てて村を出ていったぞい」

女「アマンダには レスターっていう音楽好きの弟がいたんだ。今は隣町のジャドでハープを弾いているはずだよ」
ロイ「そういえばアマンダには弟がいるって言っていたな…」

少女「アマンダは最近元気がないみたい…レスターに何かあったのかな?」
老人「砂漠の北にあるジャド町から以前は美しいハープのメロディが流れていたが、最近は聞かんのう」
ロイ(アマンダ…弟のレスターに何かあったんだな。よし!ジャドへ行ってみよう!ここから北に行けばいいんだな)


ロイは確かにメノスの村から北へ進んだ。だが同じ北でも北西のジャドとは反対の方向、北東へ行ってしまった。
ある森に入ると大きな卵がある。

ロイ「ん?卵が動き出したぞ!」

なんと卵はロイの目の前で孵った!中からは大きな鳥が出てくる。

ロイ「な、何だ!こいつは」

その鳥――チョコボはロイについてこようとする。

ロイ「こら!ついてくるな。しっしっ」

それでも尚、人懐こくチョコボはロイについてきた。

ロイ「僕を親とでも思ってるのか?…しょうがないなァ。ついてこいよ」
チョコボ「クエッ」


再び元の道へ引き返して、そこから北西へ向かう。そしてひたすら北をめざした。すると…

ロイ「うわっ!!毒の霧だ!」

毒に侵され大ダメージを受けたロイは慌ててチョコボに乗った。

ロイ「すまない。しばらく乗せてくれ。そして僕をジャドの町まで運んでくれ」

チョコボは人間の言うことがわかるのか、素直にロイの言葉に従った。

(ちゃ〜ちゃ〜ちゃちゃ〜ちゃちゃちゃ〜ちゃちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜ちゃちゃ〜ちゃちゃっちゃちゃちゃっちゃっちゃ♪)
ロイ「うわあ〜何だ、お前、まだいたのか」
(まだいたのかはひどいでしょう。あっしはあんたの守護霊ですぜ)
ロイ「だからっていきなり出てくるなよ」
(ちょっと歌ってみたかったんですよ。チャッチャチャチャチャチャチャチャッチャッチャチャチャチャチャッチャ チャッチャチャチャッチャッチャ〜チャチャッチャチャチャッチャッチャチャチャチャチャ♪)
ロイ「人の頭の中でうるさいぞ!静かにしてくれ!」
(せっかく気分を和らげようとして歌ったのに…マリアちゃんを救出出来なかったこと、悔んでいるんでしょう?)
ロイ「…マリアはおそらくグランスに連れて行かれただろう…でもその前にあのペンダントを取り返さなくちゃ」
(ところで旦那、チョコボは特別な生き物なんですよ。一度チョコボから降りてみて下さい。もう毒は消えているはずですよ)
ロイ「えっ?」

ロイは試しにチョコボから降りてみた。すると謎の守護霊が言った通り毒が体内から消えている。

(他にも盲目や石化、モーグリなどのステータス異常もチョコボに一旦乗って降りれば治りますよ)
ロイ「どういう原理でそうなるんだ?」
(だから、つまり、チョコボは特別な生き物なんですよ。さあ、ジャドへ行ってアマンダさんを見つけやしょう。そしてペンダントについて聞くんです!)





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