ロイはやっとジャドの町の入口に辿り着いた。

ロイ「いくらなんでも町の中にチョコボを連れていくわけにはいかないな。ここで待ってろよ」

チョコボは大人しく町の入口周辺をうろちょろしていた。


ロイがジャドの町に入ると、そこは到底町とは思えない程の静寂に包まれていた。どこもかしこもしんとしている。

ロイ(一体どうしたんだろう?)

戸惑いながらも町人に話を聞いてみる。

男「ここはジャドの町。影のボスはデビアスだ。やつが来てからこの町も住みにくくなった」
ドワーフ「デビアスに嫌われたらおしまいさ。得意の魔術で獣に変えられてしまう…その犠牲者の多さは数知れず。あーオソロしや、オソロしや」
ロイ「デビアス…」


老人「町の北にある谷は黒い毒の霧がたちこめる…無理して入ろうものなら命はないぞよ」
少女「そう…霧で谷が覆われたのはちょうどこの町からハープのメロディが消えたころよ」
ロイ「僕が誤って入ろうとしたあそこの谷だな。で、アマンダの弟のレスターはここでハープを弾いているはずなんだよな。それが消えてしまったってことは…やっぱりレスターに何かあったんだ」


少年「町の外れにある大きな建物がデビアスの屋敷さ」
ロイ「デビアスか…アマンダやレスターについて何か知っているだろうか?」

町人と話していてもアマンダの情報が得られないロイは思い切ってデビアスの屋敷に入ってみることにした。


デビアス「小僧よそ者だな?この町であまり好き勝手なことさせんぞ。用が済んだらさっさと出て行くんだな。それが身の為だ。アマンダ?そういえばそんな女がおったのう。砂の迷宮に行くと言っておったな。何の用かは知らんがあそこは一度入ったら生きては出られんぞ」
ロイ(砂の迷宮?一度入ったら生きて出られない、そんなところへ行くなんて…レスターのことと何か関係あるのか?)


ロイはもう少し町で情報収集をすることにした。

女「デビアスの母親はメデューサなの。その醜さを嫌ったデビアスは実の母を洞窟に閉じ込めたわ。砂漠のオアシスに入口があるっていうけど…入るにはコツがいるそうよ」
男「呪いにかかった人を治すにはメデューサの血を飲むこと…いいね?」
ロイ(…なんか…これは僕の予想だけど…レスターはデビアスに呪いをかけられて獣の姿に変えられてしまったんじゃないだろうか?で、呪いにかかった人を治すにはメデューサの血が必要で、そのメデューサは洞窟に閉じ込められている。その洞窟が砂漠のオアシスのどこかに入口がある。入るにはコツがいるって…たぶんそれでアマンダは砂の迷宮に行ったんだろうけど…入り方は、誰か知っている人いないかなあ?)

ロイは砂漠のオアシスの洞窟について知っている人を尋ねてまわった。

少年「オアシスの洞窟の入り方?うーん…ほんとは内緒だけど…牙くれたら教えてもいいよ」
ロイ「牙?」
少年「君、知らないの?砂漠のモンスターが落とす牙はすっごく貴重なんだぜ!」
ロイ「へえ、それならここに来るまでの間に手に入れたけど。それならこれあげるから洞窟の入り方を教えてくれ」
少年「まいど…一度しか言わないよ。やしの木…8の字…この2つがキーワードだよ」
ロイ「ヤシの木と8の字?どういう意味だい?」
少年「一度しか言わないって言ったじゃないか。じゃあね」
ロイ「あ、ちょっと!」

ロイは慌てて呼び止めたが、少年はそのまま行ってしまった。

ロイ「う〜ん、何のことだろう?とにかく砂漠のやしの木が…ええと、オアシスに入口があるんだからまずオアシスを探せばいいんだな。それでやしの木に8の字でも書けばいいんだろうか???」
(旦那〜あそこに八百屋がありまっせ。これから砂漠のあちこちを彷徨うんでしょう?チョコボの餌にギサールの野菜を買ってあげた方がいいんじゃないですかい?)
ロイ「チョコボの餌はギサールという野菜なんだな………あの〜すみませ〜ん。ギサールの野菜を下さい」
店主「へい!まいど〜!」


そしてロイはチョコボを連れて砂漠のオアシスを探すことになった。





――しばらく後、

ロイ「ふう、これで見つけたオアシスは3つ目だ。だけど8の字の意味がわからない。いろいろ試してみたけど何もみつけられないし、しばらくここで休憩しよう」

ロイはあるオアシスで休みながらチョコボに餌を与える。

ロイ(…なあ、お前)
(あっしのことですかい?旦那の方から呼んでくれたのは初めてですね)
ロイ(これだけ砂漠のあちこちをまわって、オアシスを見つけて、8の字について思考錯誤してみても何も進展しないんだ。誰かに相談したくもなるよ。お前は何かわかるか?)
(残念ながらあっしはあくまでもあんたの守護霊ですからねえ。あんたを見守ることはできても知恵はあまりないんですよ。何せ元奴隷でしたからね)
ロイ「ああ〜もう、くそっ!」

ロイは立ちあがるとやしの木のまわりをぐるぐると回り始めた。そしてああでもない、こうでもないと考え事をしながら木の周りをまわっていた。
そしてロイは気づかなかった。いつのまにか2本のやしの木を8の字にまわっていたことに。

ロイ「…ん?なんだ??いつの間にか洞窟の入口が出てきてるぞ。一体何が起こったんだ???」
(…まあ、とにかく入口が見つかったんだからいいじゃないですか。さあ、さっそく中に入ってみやしょう。きっとアマンダさんもいますよ)


洞窟に入るとさっそくアマンダがいた。しかしロイを見た瞬間慌ててばつが悪そうに目をそむける。その様子を見てロイの頭の中にあった、ある疑惑が確信に変わった。

ロイ「アマンダ!ペンダントを盗んだな!」
アマンダ「ごめんよロイ。デビアスに弟を人質にとられて…仕方なくやったんだ」
ロイ「本当か?」
アマンダ「あたいが馬鹿だったんだ。ペンダントを渡すとレスターは魔法でオウムにされちまって…呪いを解くにはメデューサの血を飲むしか方法がないって…だからここに来たのさ」
ロイ「オウムって…まさかデビアスの近くにいたあの鳥がレスター!?」
アマンダ「そうだよ」

アマンダはがっくりとうなだれた。

ロイ「メデューサの生き血…よし!じゃあ僕も手伝おう」
アマンダ「ありがとう、ロイ!」
ロイ「…あ…しまった…」
アマンダ「何だい?」
ロイ「マトックと鍵の補充を忘れてた。悪いけど一度町へ戻って買い足してくるよ」
アマンダ「一緒に行ってくれないのかい?冷たいね。あたいひとりでも行くよ」
ロイ「そうじゃないよ!ちゃんと道具を買ったら必ず戻ってくるから!」

そう言ってロイは再びジャドの町まで戻った。





ロイ「ふう〜アマンダには悪いことしちゃったな。チョコボに乗ってなるべく早く戻ってきたんだけど」
(ところで旦那、肝心なことを忘れてやしないですかい?)
ロイ「何を言ってるんだ!ちゃんとマリアとマナのペンダントのことは覚えてるぞ!だけどアマンダは大切な仲間だし放っておくわけには――」
(そうじゃなくて洞窟の入り方ですよ)
ロイ「…あ…」


…………………………


ロイ「前はどうやって入ったっけ?確かやしの木の周りをぐるぐる回っていたらいつの間にか洞窟の入り口が開いていたんだよな」
(ああ…どうしてそんな肝心なことをアマンダさんに聞いておかないんですかい?全く旦那の頭の中はいつもマリアちゃんのことばっかりで…ぶつぶつ――)
ロイ「ああっ!!」
(どうしたんですかい旦那?やっと思い出しやしたかい?)
ロイ「こらっ!チョコボ!お前、こんな所で糞なんかするんじゃない!!」
(……旦那…動物ってのはそういうもんですよ…)
ロイ「全くもう!」

ロイはチョコボの糞の後始末をする為に2本のやしの木の周りを掃除した。そしていつの間にか8の字にまわっていたことには相変わらず気づいていなかった。

ロイ「あれっ?いつの間にか洞窟の入口が現れているぞ。う〜ん、結局8の字って何のことだったのかなあ?」


再び砂の迷宮に入ると入口でアマンダが待っていた。

アマンダ「やっぱり戻ってきてくれたんだねロイ」
ロイ「当たり前だろ。さあ、奥へ進もう」





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