ホークアイは目を覚ました。すると、以前船の上で会った少女が傍の椅子に座って自分を見つめているのに気づいた。

ホークアイ「君は…」
リース「目が覚めましたか?」

起きてみると横のベッドにデュランとケヴィンが寝ていた。

ホークアイ「ここはどこだい?確か眠りの花畑があって、そこで俺達は…」
リース「ここはローラントの秘密のアジト。ナバール盗賊団に占領された城を奪い返す為、準備を進めているところです。このアジトは眠りの花畑の近くにあるんです。でも大丈夫。最初に一度だけ深い眠りについてしまうけど、後は効かなくなるから、もうあなた達は表に出ても平気なはずです」
ホークアイ「また会ったね、お嬢さん。ここにいるということは君はローラントの人間なんだね」
リース「私はローラントの王女、リースと申します。国をナバールに滅ぼされ、生き残ったのは私だけだと思い、さらわれた弟のエリオットを探して、旅をしていたんですが、このアジトの事を知って戻ってきました」
ホークアイ「!!」

ホークアイは驚きを隠せなかった。なんと目の前の少女はローラントの王女だったのだ。

ホークアイ「…あ、あの…風のマナストーンって知ってるかい?」
リース「風のマナストーン…それなら、山の西側にある風の回廊と呼ばれる洞窟のどこかにあると思います。でも、風神像が邪魔をして進めないかも知れません。ローラント城内からなら、風を操る事ができるのですが、城は敵の手に…」
ホークアイ「俺にも手伝わせてくれ。やらなきゃならない事があるんだ」
リース「これは私達の戦い…あなた方には迷惑をかけられません。回復したら、早めにおひきとりください」

そう言ってリースは部屋から出ようとした。

ホークアイ「待った」
リース「な、何ですか?」
ホークアイ「ここは秘密のアジトなんだろう?その存在を知った俺達をあっさり返してしまっていいのかい?」
リース「え…」
ホークアイ「秘密が漏れるのを防ぐ為、殺す――とまではいかなくても監禁するとか、監視の下に軍に加えて一緒に戦わせるとか、なんらかの拘束を受けると思ってたんだけどな」
リース「そ、それは…」
ホークアイ「そんなことは考えてなかった、かい?案外甘いんだな。そんなことで1度滅ぼされた国を取り戻せるのかい?」
リース「…それでは、あなたは自ら拘束されることを望むというのですか?」
ホークアイ「君になら喜んで」

ホークアイはリースにウィンクをした。リースが取り乱すのを可愛らしいと思いながらも言葉を続ける。

ホークアイ「というのは半分冗談で、俺にも手伝わせてくれよ。この戦いは俺自身の戦いでもあるんだ」
リース「それはどういう意味なのですか?そういえば何故あなたは風のマナストーンを探して…」
ホークアイ「うん、まずはそこから話そう。フェアリー、出てきてくれ」
リース「フェアリー?」

ホークアイから美しい羽をぱたつかせた可愛らしい妖精が出てきた。リースは驚いて目をむく。

ホークアイ「こちらはマナの聖域からやって来たフェアリー。いろいろあって、マナストーンを探しているのさ。マナストーンの近くには精霊達がいて、早いとこ集めないと世界が滅んでしまうんだよ」
リース「フェアリーに選ばれし者…」
ホークアイ「ん?」
リース「ではあなたがフェアリーに選ばれし者なのですね!? ウェンデルの光の司祭様に会ってあなたの事や、マナの剣の事を教えてもらったんです。私はずっとあなたを探していました。ちょっと待っていて下さい!今、仲間を呼んできますから!」
ホークアイ「お、おいおい…」

リースは慌てて駈け出して行った。





6人は部屋の中でそれぞれが旅立った理由を話していた。ホークアイと後で目が覚めたデュランとケヴィン、リースとその仲間であるアンジェラとシャルロット。皆それぞれ訳ありで旅に出たようだ。

アンジェラ「あんたが噂のフェアリーに選ばれし者なのね。本当にもう、どこほっつき歩いてたのよ。探したんだからね!」
ホークアイ「こんな可憐なお嬢さん3人で旅だなんて、危ない目には遭わなかったのかい?」
シャルロット「そんな時は3人でばーん!とやっつけてしまいましたでち!」
リース「あの…それで、ホークアイさんのお話だけまだ聞いていませんが、あなたはどうして旅に出たのですか?」

途端にホークアイは真剣な顔になった。デュランとケヴィンも黙り込む。

ホークアイ「リース、落ち着いて俺の話を聞いて欲しいんだ。俺は、実はナバール盗賊団のシーフだったんだ」
リース「…え?」
ホークアイ「だが今は逆にナバールから追われている身だ」
リース「…嘘…」
ホークアイ「いや、本当だ。今回のローラント占領は全てイザベラって女が盗賊団を乗っ取りやったことなんだ。ナバールのニンジャ達は皆イザベラに操られているだけなんだ」
アンジェラ「そういえば捕虜になったナバール兵達ってなんだか様子がおかしかったわよね」

リースの頭の中は混乱していた。フェアリーに選ばれし者を見つけたと思ったらその者はナバールの者でもあったというのである。そんなことは信じたくなかった。仮にも祖国を滅ぼした盗賊団の一員が聖剣の勇者など。

ホークアイ「イザベラって女が何者なのか俺も詳しいことはわからない。だがこれだけは言える。本当のナバール盗賊団は決して人を殺したりはしないと!俺の親友のイーグルもイザベラに殺された。それだけじゃない、イザベラはイーグルの妹のジェシカに目に見えない『死の首輪』をつけた。イザベラが死ぬとジェシカも死んでしまうような呪いだ。それでイザベラは俺がヤツに手出しも秘密をバラすこともできないようにしているんだ。それで俺はナバールを脱走した」
リース「…その話は本当なんですか?」
ホークアイ「ああ、もちろんだ。信じてくれ!」

ホークアイは真摯な眼差しでリースを見つめた。リースはしばらくその視線と対峙していた。ホークアイの真摯な眼差しとリースの睨むような険しい視線が交差する。他の4人は息をのんでじっと待っている。やがて、リースは言った。

リース「わかりました。あなたを信用しましょう」

ホークアイを始めとする残りの5人はふーっと息を抜いた。

ホークアイ「リース…」
リース「…あなたの話で、悪いのはそのイザベラという人だということがよくわかりました…」
ホークアイ「俺もローラントの戦いに参加させてくれるかい?」
リース「はい。後ほど作戦会議があります。その時にまたお会いしましょう」

そう言うと険しい面持ちのまま、リースは部屋を出て行った。





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