翌朝、ホークアイ達とリース達はローラント城の前で別れの挨拶をした。お互いまた旅に出るのだ。

リース「私は、再びエリオットを探す旅に出ます。ここで別れましょう。いろいろとありがとうございました…」
デュラン「ああ、早く見つかるといいな!」
ホークアイ「…リース、俺は…」
リース「!わっ私、もう行かなくちゃ!さよなら!みなさんも、お元気で…」
アンジェラ「ちょっと、リースったら、待ちなさいよ!」

駈け出して行くリースの後を、アンジェラとシャルロットは慌てて追いかけた。





ここは船の中。ホークアイは船室の中でテーブルに肘をつき、1人物思いにふけっていた。
リース。金糸のような美しい髪と曇りのないまっすぐな目をしたローラントの王女。初めて見た時からひどく惹きつけられた。
彼女のことが忘れられない。こんな気持ちになったのは初めてだ。
一緒に旅をしようと持ちかけたが断られてしまった。だが、リースの心の中は非常に揺れ動いていたのがはっきりとわかる。
やはり自分がナバール盗賊団の人間だからか。仇だからか。
そのわだかまりは完全には解けていないはずなのに一緒にいることを望んだのは性急すぎたであろうか。
ふと、周囲を見やる。

デュラン「うおお!紅蓮の魔道士め!今度会ったら必ずおまえを倒してやる!」
ケヴィン「うう…ごめんねカール。マナの剣、手に入れたら生き返らせてやるから…」

紅蓮の魔道士のことを考え、室内でも訓練を欠かさないデュランと、カールのことを思い出して泣いているケヴィン。2人を見てホークアイは盛大な溜息をついた。デュランもケヴィンもどう見ても恋愛とは無縁の人生を送ってきたタイプだ。到底女の話などできそうにもない。事実、2人ともホークアイの胸中など全く気付いてもいない。こんな時イーグルが生きていれば、とホークアイは考えた。
ホークアイは決して朴念仁ではない。むしろ相手の気持ちを察することにかけては常人より敏感な方だ。

リースもまたホークアイのことを想っている。

それは彼女から向けられる熱っぽい視線を感じることでもわかる。
ホークアイが見たところ、リースはまだ恋を知らぬ初心な少女であった。ホークアイと出会うまでは。
そんなリースを可愛く、愛しく思う一方、常に狙った獲物は逃さないホークアイは、なんとしてもリースの心を自分のものにしたかった。
そう、俺の名はホークアイ。『鷹の目』の名を持つ男。いかなる障害をもものともしない。必ずリースを手に入れて見せる。いつか、きっとこの手に。

考えに没頭していたホークアイは、まだ自分の乗っている船が幽霊船だとは気付いていなかった。





アンジェラ「リース、本当によかったの?彼――ホークアイと別れちゃって」
リース「いいのです。ホークアイは世界を救うという重責を負っているのです。そして私は王国の再建とエリオットを探す目的があります。私達が目指すところは別にあるのです」
アンジェラ「そうかしら?美獣を追っていることには変わりがないじゃない。また会うかもよ」
リース「そ、そんな…!」

せっかく惹かれる想いを無理して振り払って別れてきたのにもう一度会ったらまた決意が揺らぐ。王女としての責務とホークアイと一緒にいたいという想いがリースの胸中でせめぎ合う。

リース「ホ、ホークアイはナバール盗賊団の者です。私とは仇の関係にあります」
アンジェラ「だけどホークアイの方は特に気にしてないわよね。彼はローラント侵攻には加わってなかったのだし」
リース「と、とにかく私はエリオットを探すことを優先します!」
アンジェラ「もう、頑固ねえ。それで、今度はどこへ行くの?」
リース「あの…ナバール地方へ。盗賊団の本拠地を発見することは無理でも、敵の出身地に行けば何らかの手がかりは見つかると思います」

そして、しばらくの時を経て、ホークアイとリースは再び出会うことになるのだった。





ここはオアシスの村ディーン。リースはこの村を拠点としてエリオットの手がかりを探していた。そんな中、ホークアイ達がやってきたのである。彼らは火のマナストーンを探している途中でこの村に立ち寄ったのである。

ホークアイ「やあリース、また会ったね」
リース「は、はい…」
ホークアイ「弟君の手がかりは見つかったかい?」
リース「いいえ…今のところは商業都市バイゼルの奴隷商人が、赤い目の男に売り飛ばしたというところまでしかわかっていません。その赤い目の男と言うのもどこの誰なのか、まだ見つけられないでいます」
ホークアイ「そうだったのか…美獣の仲間にも赤い目の男がいたな」
リース「そうなのですか!?ではやはりエリオットの行方は美獣が知っているのですね!…それで、あなたの方はどうでしたか?」
ホークアイ「いやあ〜そりゃもう大変だったよ。噂の幽霊船には乗っちまうし、呪いを移されて幽霊にはなっちまうし――おっと、もう呪いは解けたから安心しな。それで火山島ブッカに流れ着いたと思ったら噴火間近でさ、間一髪で脱出してきたんだ」
リース「そ、それは大変でしたね。ご無事でなによりです」
ホークアイ「俺達は火のマナストーンのある火炎の谷へ向かう途中だ。今日はここで一泊していくよ」

その日は宿でつもる話をした。次の日、いつものように村人に話を聞いていたリースは、盗賊団と思われる人物達が火炎の谷に向かっていくのを見たとの情報を得た。

リース「ホークアイ!私も火炎の谷へ行きます!盗賊団の一員がいるのならエリオットの手がかりが得られるかもしれない!」
ホークアイ「わかった。一緒に行こう」

ホークアイとリースは、仲間のデュラン、ケヴィン、アンジェラ、シャルロットと共に火炎の谷へ向かった。





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